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2021.4.12 07:33/ Jun

転職に「煽り」と「ロマンス」はいらない!? : 新刊「働くみんなの必修講義 転職学」執筆にかけた思い!?

 無駄な転職は避ける!
 転職迷子をこの世からなくす!
  
 そのためには
  
 転職を地に足をつけて「データ」に基づき語ることだ!
  
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  ・
   
 このたび、新刊「働くみんなの必修講義 転職学」をしたためるにあたり、わたしをふくめ、共著者が、この本にかけた思いは、このようなものです。
    

  
 人生100年時代、仕事人生が長期化するなかで、転職は、いわば多くの人々にとって、一度くらいは、経験する「人生の一大事」になりつつあります。
    
 この動向に応じて、書店にいけば、転職コーナーにはたくさんの書籍が並んでいます。
  
 もちろん、既存の言説、貴重なものも多く、多々参考になるところがあります。
 しかし、わたしは、既存の言説を拝読させていただいたうえで、下記の3つの伸びしろがあると感じていました。転職学をしたためるにあたっては、この3つをいかに乗り越えるかを考えてきました。
  
 1.転職強者の「個人の経験談」が中心になっている
 2.転職を煽っていることが多い
 3.転職とはマッチングだと考られている
   
 今日は、朝っぱらから、そうした思いを暑苦しく論じてみましょう。
   

   
  ▼
   
 1の「転職強者の「個人の経験談」が中心になっている」とは、そのものズバリです。

 転職本を執筆している著者の方々のなかには、転職によって、自らのし上がってきたか、ないしは、転職によって多くのメリットを享受してきた方が、どうしても多くなる傾向があります。もちろん、個人の経験談にも、参考になるところはあります。それは素晴らしいことです。
  
 しかし、転職の現場を見つめてみれば、ただちに1秒でわかるように、「転職強者」というものは、ほんとうに一部です。なかには、転職において、不利な立場に置かれている方もいらっしゃいます。転職を語るときには、そうした「圧倒的多数への目配り」が必要です。
    
 つまり、転職を語るときには、転職強者や、転職強者の経験談だけに頼るのはかなり、リスクがあります。
 全体に目配りをして、地に足をつけて、データや事実に基づいて転職を語る必要があります。
 また、地に足をつけるときも注意が必要です。雇用慣行も、採用慣行も異なる国のデータを無批判に転用することは、難しいことも事実です。独自の採用慣行をもつ、我が国にあった知見が、どうしても必要なのです。

   
 新刊「転職学」は、この国で得られたデータで、この国のひとびとが、どう振る舞い、どう行動して、どのような結果を得たのか、を考察しました。地に足をつけた議論が、わたしたちのめざしたことです。
       

   
  ▼
  
 2の「転職を煽っていることが多い」は、1の「転職強者の語り」と共振することかもしれません。
  
 既存の言説は、転職を「するべきもの」と考えているものが多いものです
    
 対して、わたしたちは
    
 無駄な転職は避ける
 転職しないでいることも、「立派な選択」
   
 というスタンスを保ちます。
   
 むしろ
  
 転職に「ロマンス」を感じてはいけません
 むしろ、転職に際して、ひとは「リアリスティック」に行動すること
   
 が必要なのです。
     
 転職は「自分探し」ではありません。転職に「ロマンティシズム」をもってはいけないのです。冷静な頭で、自分を見つめ、企業を見つめるリアリスティックな視点が必要です。
        
 たとえば・・・・転職理由でもっとも多いのは「職場の人間関係」や「上司とウマがあわない」です。もちろん、シビアすぎる職場や上司からは逃走したほうがいいことは言うまでもありません。
    
 しかし、この世のどこかに「パラダイス」がある、とは思わない方がよいのです。決して、転職に「ロマンティシズム」を感じてはいけません。
    
 なぜなら、実証データによると、逃走した退職者が「新たな職場」で悩むことも、また「職場の人間関係」や「上司とウマがあわない」というものだからです。ひとびとが抱える課題のなかには、転職では、なかなか解決できないものも多々あるのです(詳細は本書をお読みくださいませ)。それなら、転職では、何をめざすのでしょうか。
    
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 ともかく、私個人の考えでいえば、転職を煽られて、無駄な転職をしてしまうことだけは避けた方がいい、と思っています。煽られて行う、無駄な転職は、もれなく「転職迷子さん」を生み出してしまいますので。
         
 転職迷子を出さない
    
 というものが、わたしたちのスタンスです。皆さんも新刊「転職学」をお読みになり、転職をリアルに見つめませんか?
  

     
  ▼ 
    
 3の「転職とはマッチングであるという常識を疑う」は、転職学の最大の特徴かもしれません。
 
 既存の多くの言説において
   
 転職は、求職者と企業の「マッチング」である
  
 と語られます。もちろん、条件面で折り合うことは非常に重要なのですが、「条件だけのマッチング=転職」という風に考えられると、転職は、あまりうまくいきません。
  
 既存の言説では、
   
 転職がうまくいくとは、企業から内定をもらうこと
  
 と考えているところが多いものです。
 めざす目的が「内定獲得」なのです。
  
 しかし、わたしたちは
  
 転職がうまくいくとは、納得できる離職プロセスを踏み、かつ、新たに企業に参入し、適応・活躍できるまで
  
 と考えています。
  
 転職とは、自らを見つめ、自らを変えながら、こうした一連のプロセスを乗り越えること
  
 なのです。
  
 新刊「転職学」では、このことをワンワードで「ラーニング思考」と考えました。
    
 転職に必要なのは「マッチング思考」ではなく「ラーニング思考」
  
 なのです。転職者にとって「内定獲得」は嬉しい出来事です。しかし、もう一歩、視点を先に進めて、将来新たな組織において、どのように振る舞うことまでを考えていませんか?
  

  
  ▼
  
 今日は新刊「転職学」について暑苦しい思い(!?)を書かせていただきました。転職に興味のある方はいうにおよばず、長期化する仕事人生を「完走」なさりたい方に、ぜひ手にとっていただけれと思います。
  
 また「自らが転職」というわけではなく、従業員の離職問題や中途採用をお考えの企業人事・経営企画・経営者の方々にとっても、役立つ内容です。どうぞご高覧いただけますよう、よろしくお願いいたします。
   
 なお、最後になりますが、このプロジェクトは、パーソル総合研究所とパーソルキャリアさんと中原の共同研究で遂行されました(このような機会をいただきまして、両社の関係者の皆様には、心より感謝いたします!)。
      
 本書の著者名は、私とパーソル総合研究所の小林祐児さんとなっていますが、しかし、じつは本書には隠れた著者がたくさんいらっしゃいます。共同研究をともに遂行してきたパーソルキャリア株式会社の吉村優美子さん、平田沙織さん、藤田悠さん、影山大輔さんも、本書の共著者の一人です。
  
 本書は私や小林さんと、吉村さん、平田さん、藤田さん、影山さんとの数十回にわたる議論の先に生まれました。この場を借りて御礼を申し上げるとともに、彼らもまた共著者であることを、ここに刻ませていただきます。
     
また、パーソル総合研究所の渋谷和久さん、フェローの櫻井功さん、パーソルキャリア株式会社の大浦征也さん、勝野大さんにもプロジェクトの立ち上げに際し、多大なご支援をいただきました。心より感謝いたします。
    
 また書籍化に関しましては、KADOKAWAの藤岡岳哉さん、編集協力をいただいた秋山基さんにも、たいへんお世話になりました。さらには、質問紙調査にお答えくださった多くのみなさんにも、深く感謝いたします。
    
 多くの方々とのご縁とご協力によって、「働くみんなの必修講義 転職学」が2年かけて完成いたしました。心より感謝をいたしますとともに、この本が、社会の多くの方々にお届けできることを願っております。
    
 転職・・・この「学びに満ちた世界」へようこそ!
 ご高覧くださいますよう、よろしくお願いいたします!
   
 そして人生はつづく
  
 
「働くみんなの必修講義 転職学」
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