NAKAHARA-LAB.net

2007.9.19 07:00/ Jun

ワークプレイスラーニング (Workplace Learning):質問編

 このところ3回にわたって、ワークプレイスラーニングについての話をしています。
ワークプレイスラーニングとは:定義編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/post_1005.html
ワークプレイスラーニングとは:現場の学び編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/workplace_learning.html
ワークプレイスラーニングとは:学習環境のデザイン編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/workplace_learning_1.html
 
 これに関して、いくつか質問をお寄せいただきました。ありがとうございました。今日は、これに答えていくことにします。
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Q1.ワークプレイスラーニングとブレンディッドラーニング(blended learning)の違いは何ですか?
 ブレンディッドラーニングとは、企業教育の場合、「eラーニング」と「研修」の組み合わせをさす傾向があります。mもともとは、「eラーニング」の弱点を補うために、対面教育で「補完」することをさして、この言葉が作られました。
 これに対して、ワークプレイスラーニングは、もっと広いです。それは「学習」を「研修」だけの話に限定するのではなく、「現場の学び」をすべて含みこむものとして捉えます。
 —
Q2.ワークプレイスラーニングを実践している企業には、どのような企業がありますか?
「ワークプレイスラーニング」という言葉を使うか、使わないかは別として、多くの企業が「研修の限界」と「現場の学びの活性化」に興味をお持ちになっている、と思います。
 ワークプレイスラーニングは非常にひろい概念ですので、様々な実践がありえます。先日のワークプレイスラーニング2007では、「研修」と「職場におけるフォロー教育」を組み合わせた東京電力さんの事例や、「現場でのOJT」と「メンタリング」を組み合わせたHOYAさんの事例をご紹介いたしました。
ワークプレイスラーニング2007
http://www.educetech.org/test2/
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Q3.ワークプレイスラーニングは「経営学」の専門用語でしょうか?
 いいえ。
 ワークプレイスラーニングは学際的な研究領域ですので、単一の研究領域の知見に還元されるものではありません(Rothwell et al 2000)。
「経営学」「心理学」「社会学」「教育学」など、関連諸科学の専門的な知見があわさって、この学際領域を研究していくべきだと考えています。
 ワークプレイスラーニングは「研修と現場の学びの融合」というハイブリッド(異種混交)な主張を行っていますが、それを裏打ちする学問もハイブリッドなのです。
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Q4.ワークプレイスラーニングは、要するに「OJT」と「OFF-JT」の組み合わせですよね。
 ある一面では、Yes。ある一面ではNoです。
 確かにいわゆる「OJT」と「OFF-JT」を組み合わせたものは、ワークプレイスラーニングです。ただし、その組み合わせ「だけ」がワークプレイスラーニングではありません。
 ワークプレイスラーニングは、もっともっと広く「学習」を捉えます。他者とコミュニケーションをしながら、情報を交換したりすることも「学習」です。
 様々な「学びのタネ(=リソースといいます)」の無限の可能性こそが、ワークプレイスラーニングの可能性でもあります。
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Q5.インストラクショナルデザインでワークプレイスラーニングをデザインすることはできますか?
 できません。
 インストラクショナルデザインは、「教育のカリキュラム」のデザイン手法です。それは、学習環境を構成する「教材」「研修」といった要素に適用可能な手法です。
 一部に「インストラクショナルデザインの理論系」と「学習環境のデザインの理論系」をゴタマゼにしている主張が存在しますが、それは個人的には非常にマズイと思います。
 もちろん、だからといって、インストラクショナルデザインの有用性が少なくなるわけではありません。教材、研修に関して、ノイズの少ないものをデザインすることが可能だと思います。
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 今日のところはこんなところで。
ワークプレイスラーニングとは:定義編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/post_1005.html
ワークプレイスラーニングとは:現場の学び編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/workplace_learning.html
ワークプレイスラーニングとは:学習環境のデザイン編
http://www.nakahara-lab.net/blog/2007/09/workplace_learning_1.html

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