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2020.9.14 08:35/ Jun

インフルエンザ流行時期に高まるかもしれない「教育中断のリスク」と「学びの事業継続計画」のこと:楽観的な楽観主義者になってはいけない! 

 立教大学 中原淳研究室では、今年、研究スタッフの田中智輝さん、高崎美佐さん、村松灯さんらが中心になって、
  
 新型コロナウィルスの感染拡大の臨時休校時に、子どもや保護者には何が起こったのか?
 ウィズコロナ時代の教育現場を立て直していくために必要なリーダーシップとは何か?
  
 などについて研究をしています。
  
 わたしたちは定量調査・定性調査などを繰り返し、今後、最悪の場合、来るであろう第二波・第三波に備え、「学びを再びとめないために組織にできることを探究しています。
  
 その速報的研究成果は、下記にもまとめられておりますので、ご笑覧ください。今、この調査研究を、東洋館さんから研究書としてまとめるべく、最終の作業に入っております(編集者・河合さんにお世話になっております)。
  
【調査結果プレゼン・無償大公開】ウィズコロナ時代の「学び」をどうする?:第二波・第三波に備え「学びを再びとめない」ための「作戦会議」をしませんか?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11803
  

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 危機とリーダーシップは、いつだって背中あわせです。
  
 経営者育成、リーダー育成で著名なラムチャラン(Ram Charan)は、危機を乗り越えるためにリーダーに必要な資質として、下記の6つのポイントをあげました。
 
1.誠実であり信頼できること
  
2.メンバーを鼓舞し、勇気づけられること
  
3.現実とリアルな情報でつながっていること
  
4.楽観的な現実主義者であること
  
5.徹底的に細部まで踏み込むこと
  
6.未来に打って出る勇気をもつこと
  
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 今回のコロナウィルスの感染拡大、それにともなう休講措置、その期間に学校内に起こったことを振り返ってみると、このうち、

 3の「現実とリアルな情報でつながっていること」
 4の「楽観的な現実主義者であること」
 6の「未来に打って出る勇気をもつこと」

 に課題があったところが多いように感じます。
  
「学びがとまる」という戦後はじめての、前代未聞の事態において、有効な手立てを何一つ打てなかった組織では、
    
 3.現場のリアルの情報が、なかなか伝わらず、判断が常に後手後手にまわり
  
 4.楽観的な楽観主義に陥り、今できることを考えることを放棄しつつ
  
 6.未来に打って出る勇気も、発揮しない(上の判断を待ち続ける、よこを気にして自分だけが出ないようにする)
    
 という状態であったように思うのですが、いかがでしょうか?
  
 そして、その根幹にあるのは、「教育現場では、リスクという考え方が、あまり普及していない」ことのように、個人的には思います。このことが「組織のなかのリーダーシップ機能不全」を生み出しました。結果として、組織は、事業をとめてしまったということです。
        
 これはメンバーと先日議論したのですが、
  
 ベックやルーマンを持ちだすまでもなく、「リスク」とは「将来の確率」であり、ただちに生命が脅かされる「危機」とは異なります。
  
 そしてリスクは「確率」であるがゆえに、「見積もり」こそが極めて重要です。
  
 ここで課題になるのは、「リスクに対する感受性と見積もりは、個々人によって異なる」という事実です。
  
 そして、「リスクへの感受性と見積もり」が個々人で異なるがゆえに、組織でリスクに立ち向かうときには、リスクへの「意識のすり合わせ」と対応策の「対話」が不可欠になるのです。まずはリーダーこそが、リスクの見積もりを正確に行い、それをメンバーになげかけることです。
  
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 一般に、不確実な将来に「ゼロリスク」は存在しません。
(ゼロリスクというものが存在する、と考えてしまうひともいます。それこそ、リスクに対する感受性と見積もりがひとそれぞれであることの証左です)
  
 短期的なリスクをとることで、中長期のリスクを予防する、という観点もありえます。
  
 こうしたことに対して、メンバーの意識があっていないと、組織としては機能不全に陥ります。このことに苦しんだ組織も少なくなかったのではないでしょうか。
  
 つまり、コロナ禍で課題になったのは、「組織の内部のリスクコミュニケーション」と「組織におけるリーダーシップの機能不全」であったということです。
  
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 わたしたちが、この調査研究を「危機感」をもってすすめているのは、秋・冬以降のインフルエンザ拡大時期に、万が一、コロナウィルスの感染拡大が再びはじまったときのことを見据えて、です。今、世の中の状況は、
どちらかというと、「小康状態がつづき、ひとびとの関心が緩んできています」。
  
 そうした時期に、あまり不幸なことを考えたくないのですが、わたしたちは「この秋冬、教育中断に陥りかけない状態においこまれかねない学校や地域」は少なくない、と感じています。前回のように、全国一斉に、ということはないかもしれない。しかしながら、地域、学校によっては、その余波が長引くことがありえるかもしれません。これが、わたしたちの「リスクの見積もり」です。
  
 だからこそ、今の段階で、万が一、教育中断のリスクが高まったときに、
  
 学校・教育委員会では、
 どういう手順で、
 何を優先して
 どのような対策をとっていくのか?
  
 いかにして、子どもとのつながりを早期に確保するのか?
 いかにして、学びを再びとめない事態を回避するのか?
  
 を今から考えておかなければ、ならないということです。
  
 企業経営の言葉でいえば、
   
 教育の「事業継続計画(Business Continuity Planning)を今から行っておく
  
 ということですね。 
  
 もちろん、そういうリスクが高まらないことを、わたしたち自身が願っていることは言うまでもありません。
 しかし、事が起こってからでは遅いのです。
   
 それは、ここ半年間でわたしたちが学んだことのなかで、もっとも重要な教訓だったのではないかと思っています。
  
 あなたの事業、あなたの組織は、リスクを見積もれていますか?
 あなたの事業、あなたの組織は、「事業継続計画」をすすめていますか?
  
 そして人生はつづく
  
※こちらの資料も、よろしければご覧下さいませ! 中原研究室では社会貢献の一環として、さまざまな研究資料を無償公開しています。
  
【講演資料・無償配布します】コロナ禍における「有事のリーダーシップ」:学びを保障し、学びをアップデートせよ!リーダーシップ格差を子どもの格差につなげるな!
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12079
    
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HRアワード2020(投票)
https://jinjibu.jp/gfrm/eventEnquete/award-20-0001/form/
    

   
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