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2020.8.7 08:43/ Jun

あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?

【夏休みのお知らせ】8月10日から20日までは「休業期間」です。この間のブログの更新は、お休みさせていただきます。Facebook、Twitterの方は、おりにふれて更新させていただきます。みなさま、よき夏休みを!
    
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あなたの会社のリーダー・管理職は、「部下の強み」を観察できますか?
    
それとも
    
あなたの会社のリーダ・管理職は、「部下の弱み」だけをあげつらっていませんか?
    
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 今年から、不肖・中原は、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
  
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。
  
 わたしたちの共同研究は、
  
(1)職場の従業員同士が送り合う称賛カードの膨大なデータを用いて、
(2)働く人の企業貢献・成長を促進するしくみを実用化し、社会にお届けすること
    
 を目的としています。
  
 わたしたちは、「個人の強み」とは「他者という鏡」を用いて、発見されるものだと信じています。他者という鏡を通じて、リーダーにとって大切な「セルフアウェアネス」を高める手段を探究しています。
  
 
 
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 せんだって、この共同研究のキックオフになるようなデータが出てきたので、一般社団法人ピアトラストさんがプレスリリースを発行しました。下記のページからダウンロードいただけますので、ぜひご覧くださいませ!

相互称賛データを用いた「強みの観察力」の分析(一般社団法人ピアトラスト:PDFダウンロード可能)
https://bit.ly/2DtB55B
   
 今回のプレスリリースは、端的にいってしまえば「相互賞賛の習慣とリーダーシップの関係」に関するものです。
  
 具体的には、
  
(1)ある会社で、ピアトラストを導入・実践したときに、
(2)職場のメンバーが称賛を行った度合いを高い方、低い方、それぞれ「高称賛群」「低称賛群」にわけると
(3)半期たったあとの昇進率は「高称賛群」が「低称賛群」の1.9倍(約2倍)であることがわかりました。
  
 
   
 ここから導き出されるひとつの示唆(妄想)は、日常から、職場メンバーの「他者の強みを観察する習慣」が、リーダー・管理職への昇進につながっている可能性です。「他者の強みを観察する習慣」こそが「ひとを巻き込むこと・活かすこと」につながり、好業績につながっている可能性があります。
  
 もちろん、この結論を、このシンプルなデータだけで検証できたわけではないのですが、今後、より膨大なデータを用いて「職場の相互賞賛」と「個人・企業の業績・ウェルビーイング」の関係について分析していきたいと考えています。
    
 昨今はリモートワークが広がり、お互いに顔をあわせない仕事場が増えています。そのようなときだからこそ、職場に必要なものは、相互に仕事をカバーし合い、必要に応じて、ありがとう!のメッセージを伝えることではないか、と素朴に僕は思います。
    
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 ちなみに、個人的には、このデータを前に、僕は、こんなことを考えました。
  
 それは
   
「ピアトラスト」は「相互賞賛アプリ」であるのと同時に、リーダーシップのトレーニングにもなる

 のではないか、ということです。
  
 より具体的には、リーダー・管理職教育のうち「メンバーの観察」という「最も教えにくいリーダーの素質」を日常的にトレーニングする機会としても用いられる可能性があるのではないか、ということです。
   
 よく知られているように、リーダー・管理職にとって「メンバーの観察」はもっとも基本となる素養のひとつですが「教えにくい領域」のひとつです。

 だってそうでしょう・・・
    
 リーダー・管理職候補の方に、
  
 部下を観察してください!
  
 と、いくら言ったところで、
  
 そんなの、あんたに言われんでも、やってますよ!
 これまでだって、観察してますよ!
  
 と言われて終わりです。
  
「ピアトラスト」の利用は、この「最も教えにくい習慣」を、日常的に日々の業務に埋め込み、習慣化することができるのではないでしょうか。
  
 ひいては、リーダー・管理職への登用のアセスメントのひとつとして、「ピアトラスト」が利用できる可能性もあるかもしれません。
 リーダー・管理職登用は、これまで勘と経験で行われてきたところもあります。今回、これらがすべて「データ化」されることで、データに基づく科学的な「管理職登用」「リーダーの登用」が可能になると思います。
  
 今後が楽しみです。
  
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 この共同研究は、今後、フェイズ2に入っていきます。
  
 フェイズ2では、外部から協力企業を募らせていただき、いくつかの会社での実証実験をスタートさせていく予定です。もしご興味があるかたは、ぜひお問い合わせくださいませ。
 
 また、無料スタートキャンペーンも行っているようです。こちらの詳細も、プレスリリースからお問い合わせをいただきたいのですが、2020年8月末までに、相互称賛アプリ『Peer-Trust』にお申し込みいただいた先着50社に限り、利用開始から6カ月間の月額料金を「無料」で提供するそうです。
  
(キャンペーン終了後は、利用人数20名まで「無料」、利用人数21名より「有料」となります)
(本サービスは、企業向けサービスです。個人の方のご契約は承っておりません)
   
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 ピアトラスト上に集まった大規模データをもとにしながら、組織を強くすることとは何か、を考えていきたいと考えていきたいです。プロジェクトメンバーの渡辺圭さん、千葉純平さん、壷内悠伊さん、甘エイさん、川原梨奈さんらとともに、さらに力強く、このプロジェクトを推進していきたいと考えています。
    
 皆さんも、この試みに(お試しからでも)ぜひご参加くださいませ!
 そして人生はつづく
   
相互称賛データを用いた「強みの観察力」の分析(一般社団法人ピアトラスト:PDFダウンロード可能)
https://bit.ly/2DtB55B

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