NAKAHARA-LAB.net

2020.4.15 08:50/ Jun

アフターコロナの「学びの世界」!?:何事もなかったかのように「元通りの世界」に戻ることはない!?

「もう、元の世界には、戻らないんだろうな。何事もなかったかのように、ビフォーコロナの世界には、もう、戻らないし、きっと戻れない。
  
ならば、わたしたちは、アフターコロナの世界を、どのように描くのだろうか?」
 
  ・
  ・
  ・
  
 緊急事態宣言がでて、はや1週間。
 僕のまわりでは、この2ヶ月で、とてつもない変化が起こりました。
  
 まず大学。
 学び方が変わり、教え方が変わりはじめています。
  
 僕のつとめる立教大学経営学部・大学院経営学研究科では、山口和範学部長の「考えることをとめない、学びはとめない」の方針のもと、教職員が必死で、「必修授業のオンライン化」に踏み切りました。
  
オンライン授業で学びを止めるな 立ち入り禁止でも授業は止めない 立教大経営学部の覚悟とは
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200409-00010001-edua-life
  
経営学部の新入生のみなさまへ
http://cob.rikkyo.ac.jp/news/3643.html
  
 僕の教える大学院コースは4月4日から、ゼミは4月9日からフルオンラインに移行して、現在、必修授業を中心に多くの科目が、フルオンラインで教えられています。
  
 もちろん、乗り越えなければならない課題は多々あります。また、学生サポートもさまざまに行っていかなければならないのですが、「大きな山場」は乗り越えられつつあるのかな、と個人的には思います。
  
 しかし、今度は、フルオンラインが成し遂げられつつある今だからこそ、思うのです。
  
 もし万が一、事態が今後好転し、オンキャンパスで授業ができるようになったとき、「以前と、そのまんま、同じ」、すなわち「元の世界の授業に、そのまま逆戻りするのかな」と。
  
 個人的な意見ですが、それは、おそらく「ない」だろうな、と思います。
  
 つまり「アフターコロナの世界」は、「ビフォーコロナの世界」とは、おそらく違う。
 そして、わたしたちが生きる「ウィズコロナの世界」は、その「壮大な移行期間」なのではないか、と。
  
 おそらく、艱難が乗り越えられたあとの世界、わたしたちは、「集うこと」や「共通体験をもつこと」の素晴らしさを、もう一度確認するでしょう。だから、それ以降の世界において「フルオンライン」ということは、おそらくない。
  
 しかし、だからといって、「何事もなかった」かのように「元の世界」、「あの教室」に戻るのか、といえば、かなりわたしは懐疑的に思います。
  
 敢えてコストをかけてまで、ただ単にオンキャンパスで学ぶことにも、懐疑的な人も生まれてくるだろうと思います。
  
 なぜ、ひとびとがリアルに集まらなければならないのか?  
  
 なぜ、ひとびとが、対面して、共通体験をしなければならないのか?
  
 なぜオンラインではなく、オンキャンパスなのか?
  
 逆に
  
 オンキャンパスで実行できていたものが、オンライン化はできないのか? より高度な価値を追求できないのか?
    
 そういうことが改めて問い直される世界が、「アフターコロナの世界」なのかな、と妄想したりします。そして、おそらく、そこには「希望」がある。
    
  ▼
   
 同じことは、専門である人材開発・組織開発の現場にもいえます。
   
 現在、多くの企業研修や人材育成の機会が、オンラインに移行して、実行されています。今年の新人研修は、オンラインで行われた、最初の年になるのではないでしょうか。
  
 わたしの関わる研修などでも、事態は同様です。
  
 乗り越えなければならない課題は多々ございますし、学習者への配慮やサポートが必要であることは重々承知していつつも、思っていたよりもスムーズに、多くの物事がオンラインに移行しています。
  
 そして、だからこそ、思うのです。
   
 万が一、事態が好転して、もう一度、人々が出会えるようになった日に、わたしたちは、あの「研修室の世界」、あの「元通りの世界」に戻るのだろうか、と。
  
 こちらも、おそらく、フルオンラインということはないでしょう。しかし、個人的には、何事もなかったかのようにビフォーコロナの「研修室の世界」に戻るとは、わたしには思えないのです。
  
 なぜ、ひとびとがリアルに集まらなければならないのか?  
  
 なぜ、ひとびとが、対面して、共通体験をしなければならないのか?
  
 なぜオンラインではなく、研修室なのか? より高度なものをめざすべきではないのか?
   
 そうしたことが、改めて問い直されることになるのではないかと妄想します。そして、そこに希望を見いだしていきたいと願います。
 
 ▼
  
 わたしたちは、今、ウィズ・コロナの世界を生きています。100年に1度の悲劇、100年に1度の経済危機を前に、まだまだ翻弄される日々は続くでしょう。
   
 しかし、日々、翻弄されつつも、アフターコロナの世界を描き、妄想しながら、そこに希望を見いだしつつ、生きていたいものです。
  
 大丈夫。
 明けぬ夜は、ない。
  
 そして人生はつづく
  
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