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2020.4.5 10:12/ Jun

祝!オンラインでの授業、無事スタートできました!:経験学習でつかんだ「オンライン授業10か条」!?

 春学期キックオフ!、オンラインでの大学院授業、いよいよ開始!
   
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 昨日4月4日土曜日は、「ひとづくり・組織づくりの大学院」:立教大学大学院 経営学研究科 リーダーシップ開発コースの初回授業日でした。
  
 数ヶ月前から本格化した新型コロナウィルスの感染拡大。
 それにともない対面での授業が難しくなり、立教大学経営学部では、しばらくのあいだ、大学院リーダーシップ開発コースの授業は、ZOOM、Kintone、LINEなどを併用したオンライン授業として展開することになりました。
  
 で、迎えた、春学期授業のキックオフ!
 昨日は、大学院授業の初回授業日でした。
  
 結論から申し上げますと、反省点や課題は多々あるものの、無事、2時間のキックオフ、3時間の授業を無事終了することができました。本当にうれしいことです。
  
 わたしどもにとって、最高によかったのは、志ある大学院生の皆さんに恵まれたことです。
 19名の受講生の皆さんから、多大なるご協力、ご尽力をいただき、何とか初回授業を乗り越えることができたことを心より嬉しく思います。本当にありがとうございます。
  
 また、大学の教員・職員・スタッフの皆さんも、この数ヶ月、本当に準備に準備を重ねてきました。
  
 経営学部の山口学部長、石川先生、藤澤先生、加藤さん、井上さん、学務4課の伊藤さん、福田さん、そして外部から広報関係の支援をいただいている井上佐保子さんの協力を得て、ともに何とか乗り切りました。本当にお疲れ様でした。
  
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 この新学期、「オンラインですべてを学べる大学院」に舵をきっているところは、そう多くはありません。
  
 わたしたちは、山口学部長の理念である「考えることをやめない、学びをとめない」に沿い、この難局を乗り越えるひとつの手段として「オンライン」のあり方を追求してきました。
  

  
リーダーシップ開発コース新入生の皆様へ
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/2020/0401/
    
 こうなったら、個人的には
  
「世界でトップクラスの、人材開発・組織開発・リーダーシップ開発を学べるオンライン大学院コース」
  
 も目指せるのではないか、と、すぐに調子にのっています。「お調子こき太郎」ですみません。
    
 妄想はそれくらいにして(笑・・・本気かも)、なんとか大学院生の皆さんと、ともに素敵な学びの場をつくりだしていけたとしたら、幸いです。
    
 なお、大学院生の皆様にも、ZOOMやKintoneなどのオンラインで自由に学び、自由にワークショップなどができる環境を用意しております。
 こうしたデジタルツールを駆使して、自分たちで勉強会をしたり、グループワークなどを行っていただければと思います。
  
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 なお、昨日の授業は、大学院版の「BLP:ビジネスリーダーシッププログラム」ともいえるプログラムです。4名程度の大学院生がチームを組み、3ヶ月かけて、チームで課題解決を行います。
  
 2020年、大学院生の皆さんがとりくむ課題とは・・・
  
「リーダーシップを発揮して、いわゆる”変革の抵抗”を乗り越え組織変革を成し遂げた事例」を情報収集し、その要諦を学ぶことのできる60分のオンラインミニワークショップをチームでつくり、実践しなさい」
   
 です。
  
 なかなかスパイシーな課題です(笑)。
 この課題を実行するためには、
  
1)組織変革・リーダーシップの概念を理解し、
2)特定の組織をチームで決めて、情報収集を行ったうえで
3)60分のミニワークショップを設計し
4)ZOOMなどを操作しながら、オンラインワークショップを実践しなければなりません
  
 数ヶ月の講義のあいだでは、1)各回の授業、2中間発表、3)最終発表において、受講生同士、講師よりフィードバックをもらう機会がもうけられています。各教員からのフィードバックを糧にして、最終発表のコンペティションに向かうことが求められます。
  
 中間発表時と最終発表時には、経験学習型のリーダーシップ開発モデルにもとづき、チームリフレクションと相互フィードバックを行います。それぞれの受講生が、個として、自らのリーダーシップ行動の補正を行う機会をもつことが求められます。
  
 次回のオンライン講義は、4月18日、2週間後のグループでの課題解決の結果・クオリティがとても楽しみです。
  
 大学院生のみなさま、どうか、学び多き旅を!
     
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 さて・・・初回授業を終えて、自らリフレクションをした結果、オンライン授業では、いくつかのポイントがあることがわかりました。下記は、僕が気のついたところです。10か条にまとめてみましたので、どうぞお笑覧くださいませ。
  
 オンライン教育を実践なさってきた方には「今さら、ジロー感」のある内容だと思います。「ドヤ顔で、きづくんじゃねー」とお叱りをうけるかもしれません。
  
 しかし、わたしとしては、経験学習を重ねて、この10か条にたどり着きました。おそらく、これからさらに条文が積み重なるものと思います。
  
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1.15分で、ひと区切り!
  
 今回授業をつくるにあたっては、15分をひとつのモジュールとして考えました。15分をひとつの「目安」に、細切れにレクチャーを行い、その合間合間には、必ず、何らかのグループワークを入れたり、発問をしたつもりです。集中力をもたせ、注意資源を集めるためです。
  
「メリハリのないオンライン教育」は
  
「昼ご飯を食べたあとに感じる眠気」
  
 をただちに誘発します。
  
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2.相手にはとにかく「反応」を求める
  
 1)挙手ボタンをもとめる、2)ビデオ映像でのジェスチャーをしてもらう、3)マイクを使っての発話をふる、4)投票ボタンを使う、5)チャットを用いる、などなど、相手に反応を求める方法は多々あります。授業では、とにかく、学習者に「反応」を求めることを実践してみました
  
 意外に使えるのは、チャットでした。何か思いついたことがあれば、どんどん書いてね、というと、チャットに意見が流れる。授業では、これを拾いながらお話しすると、インタラクティブになります。これはヤフーアカデミア学長の伊藤羊一さんから教えてもらったノウハウです。素晴らしい!
  
「おっ、高崎さんが・・・とおっしゃってますね。高崎さん、これ、どういう意味のご質問ですか」
  
 という感じです。
   
 なぜ、これがうまくいくかも考えてみました。
 なぜ、チャットに流れている文章を「ひろう」とうまくいくのか。
    
 でも、よく考えてみれば、そりゃ、そうなんです。
   
 チャットに書いているひとは、自分の「考え」を敢えて外にだしてくれている、のですから。つまり、「考えてないひと」に指名する、ということがなくなるのです。これは、オンラインでの学びに非常に得意な点です。
    
 通常の授業では、「頭に浮かんだ疑問でも、外にだすことは希」です。なぜなら、そうすると、授業が中断してしまうからです。よほどのことがないと、挙手しない。しかし、チャットは「頭に浮かんでいたことではあるけれど、授業を中断させるまでのことではないこと」を「見える化」します。当然、ここに指名を行えば「考えているひと」に指名することになるので、うまくいきます。
   
 「反応」に関しては、下記にブログがございます。こちらもあわせてお読みください。
    
オンライン授業を楽しくするための「たったひとつの工夫」!? : アクティブティーチングのすすめ!?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11405
  
オンラインゼミ・チームビルディングの企画・運営マニュアルができました!:どなたでも無料でダウンロードいただけます!
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11415
  
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3.メインディッシュは7割、バッファは「多め」に!
  
 これは対面での講義でも同じことなのですが、教える方は、どうしても、詰め込みすぎてしまう傾向があります。
  
 オンラインの方は、対面講義よりも、さらに詰め込みすぎないように注意する必要があるな、と思います。なぜなら「2.相手にはとにかく反応を求めます」ので、思ったよりも、そのためのやりとりに、時間がかかってしまうのです。
  
 授業の伝達内容はおそらく全体時間の7割程度でよいのかなと思います。
  
 目的の打ち込み、質疑などに加え、バッファ時間を多めにとすると、メインディッシュは7割くらいにおさえ、質疑などの時間を多めにとるとよいのかな、と思います。
(時間が足りなくなり、石川先生には、とてもご迷惑をおかけいたしました。本当に申しわけございません!)
  
 下記は1と2と3をあわせて、たとえば100分の授業をどのように設計するかを書いてみました。
 
 授業をどの程度モジュール化できるかは、教育内容にもよりますので、一概にはいえません。それぞれの科目の先生が、それぞれの科目の特性に応じて決めていけばよろしいのかなと思います。下記はその一例です。
  

  
 これに関しては、せんだってのブログでも書きましたので、ご覧ください!
  
「授業のオンライン化」とは、オンライン用に「もうひとつ別の授業」をつくることである!?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11444
 
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4.ティームティーチングは「めちゃ安心」!
 
 今回、授業が安心してできたのは、ZOOMでの操作を代行してくれる藤澤先生、加藤さんらのスタッフがいてくれたからだと思います。できるのであれば、授業には「TA」などをつけたり、ティームティーチングを行えたりすると、ものすごく安心だと思います。
 
 実際、実は、当日、僕は自宅のルータが落ちてしまい、10分程度、接続ができなかった時間がありました。
 たまたま、僕が落ちていた時間は、僕が話す時間ではなかったので、よかったのですが、これが僕の講義中だと思うと、「ガクブル」です。
  
 こんなときもティームティーチングを行っていたら、僕が落ちているあいだ、他の先生やTAがそこを進めていてくれます。
  
 日本の大学では、大学によっては、TA制度がうまく機能しているとはいえないのですが、これをきっかけに海外の大学並みにTAの制度をととのえ、メディアの操作などを任せられると、ものすごく授業者は安心です。
   
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5.コミュニケーションチャネルを「複数」をもつ
  
 ZOOMでやりとりをしていると、たまにトラブルが発生します。そうしたときに受講生に連絡をとれるコミュニケーションチャネルをLINEやKintoneなどでもっていると、安心です。
  
 またスタッフ間は、LINEで裏で連絡をとりあっていました。
  
 またメインのZOOMが落ちてしまったときに、どのように授業を続行するかも決めておくといいと思います。
 わたしたちは、加藤さん提案で、最低最悪の場合は「LINEの音声通話」で授業を続行することになっていました。
  
 ひとつのメディアに頼りすぎてしまうことは、非常に危険だと思います。
  
 オンライン教育は
  
 持続可能性を高めること
  
 が重要です
  
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6.備えあれば憂いなし!
  
 当日、僕は、無線のイヤホンをつかっていましたが、これがなんと充電切れで途中で切れてしまいました。
 もちろんフル充電でのぞんでいたのですが、講義は長いので、複数やっていると落ちてしまうのです。有線のイヤホンを1本もつことをおすすめします。
  
 オンライン教育が
  
 何が起こるかわかりません
  
 備えあれば、憂いなしです。
  
  ▼
  
7.自宅の情報環境をセットアップ:「無線」よりも有線接続!
 これはきちんと検証できていないのですが、自宅からのアクセスも不安定になるときがあるようです。
  
 といいますのは、我が家は、外出自粛の影響で、家族全員が自宅におり、上の部屋ではカミサンがパソコンで仕事をし、子どもたちはNetflixを見ていたり、Youtubeを見ていたりします。要するに、無線の容量をどうも超えているような気がするのです。
  
 これを機会に自宅の情報環境をもう一度見直そうと思います。また久しぶりにイーサーネットを探してきて、無線ではなく、有線で接続してみようかなと思っています。
  
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8.グループワークは「手続き」を明瞭に!
 ブレークアウトセッションを行い、グループワークを行うときには、とにかく指示を明確にすることにしました。
  
 1.チームとしては何分間、個人としては何分間で
 2.誰が司会者になって
 3.誰がタイムキーパーをして
 4.何を話し合い
 5.どのようなアウトプットを出すのか
  
 をきっちりとわかっていただいてからグループワークをいたします。この指示を「ゆるめ」にしてしまうと、グループワークにお見合いが生じるので注意です。
  
オンラインでのグループワークを活性化させる「問い」と「手続き」と「アウトプット」!? : 「ファシリテーション」よりも「めっこりした事前の打ち込み」で「沈黙お見合い」を避ける方法!?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11429
  
 自分の事例で恐縮ですが、どの程度、しつこくインストラクションを行っているか、そのスライドをだささせていただきます。あくまで一例です。
 
  
 
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9.講義では、いつもの「1.5倍」テンションを盛れ!
  
 とにかく講義の最中は、いつもよりもニコニコして、テンションを1.5倍くらいもって授業をすることに心がけました。多少やりすぎかな、とも思っていましたが、しかしながら、経験上、メディアにうつるときには「やりすぎくらい」がちょうどいいのだと思います。
  
 1.5倍くらいテンションを盛ったとしても、メディアを通して見ると、おそらく、それでも、ふつうくらいにしか見えないのではないか、と思います。
  
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10.自分が学ぶことを楽しむ
 自分が講義のやり方をかえ、新たに講義を刷新し、学ぶこと、変わることを楽しむことが、一番大切なことのように思います。
  
 なんか、最近、オンライン教育のことばかりをブログで書いておりますので、わたしは「オンライン好き」「ZOOMフリーク」と間違われているのですが、まったくそんなことはございません。
   
 僕はアナログ大好き、いつもの授業は「オール板書」です。
 ZOOMだって、2ヶ月前までは、ほぼ初心者。オンラインで完全に講義をするなど、一度もやったことがありません。
    
 しかしながら、新型コロナウィルス感染拡大につき、これはやむをえないのだと思って、自分に言い聞かせて、これまで実践してきました。
  
 京都大学の山中教授がおっしゃるように、この闘いは「短距離走」ではなく「マラソン」になると思います。
  
 数週間後、1ヶ月後・・・事態が好転し、何事もなかったように対面授業が行えると思いたい気持ちもわかるのですが、わたしには、残念ながら、そうは思えないのです。
   
 学びをもとめるひとびとに、学びを届けられないのは、教師として心苦しい事態です。
 よって、自ら経験学習しながら、オンライン教育を学び取ることに「腹をくくり」ました。
  
 最初のうちは、わかんないことだらけで、厳しかったですけれども、多くのスタッフとともに学べたことで、なんとか経験学習を続けることができています。
  
 そして、やってみると、
  
 オンライン授業にチャレンジするのは、意外に「楽しい」
  
 ということに気づきました。
   
 もちろん、やるかやらないかは、それぞれの大学、ご自身の決断です。でも「やってみたら、意外に楽しい」という事例もあるようですよ。
  
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 今日は、春学期、無事オンライン授業がはじまったよ、と言う話と、経験学習でつかんだ「僕のオンライン授業の10か条」について書きました。
  
 志ある学生の皆さん、立教経営の先生方、スタッフの皆さん、職員の皆さんと、ともによい学びの場をつくっていきたいと願っております。
  
 多くの知恵を集め、共有していきながら、この「国難」を乗り切りましょう。
 僕も頑張ります。
  
 そして人生はつづく
 
(※この数週間、本当に走りきりました。疲労困憊です。明日のブログ記事はおやすみさせていただきます!みなさま、よき週末を!)
  
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