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2020.3.4 08:37/ Jun

シャバのリーダーシップは「二刀流」!?

 シャバのリーダーシップは「二刀流」?
   
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 リーダーシップ研究では、この100年間、さまざまな種類のリーダーシップが提唱されてきました。
  
 ざっとあげてみても
  
 カリスマ型リーダーシップ
 変革型リーダーシップ
 サーバントリーダーシップ
 オーセンティックリーダーシップ
  
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 などなど。
  
 おそらく、「目標にむかって人を動かすリーダーシップのあり方」は、時代の変化とともに、これまでも、これからも、変化し続けるのでしょう。
  
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 そのようなリーダーシップのなかでも、昨今注目されている考え方に、シェアードリーダーシップ(shared leadership)という考え方があります。
  
 それより以前の、カリスマ型リーダーシップや変革型リーダーシップというものが、優れたリーダー(カリスマ)が、グイグイとチームを牽引するリーダーシップ行動を想定していたとは「対照的」にシェアードのリーダーシップでは、メンバー相互の「影響力」や「貢献」といったイメージが喚起されます。
  
 シェアードリーダーシップには、さまざまな定義がありますが、僕がざざっと要約すると、それは
  
1.リーダーもメンバーもクソもない、要するにチームメンバー全員が発揮するものであり、
  
2.相互に関与・貢献しあいながら、目標に向かおうとする社会的現象
  
 のことをいうのかな、と思います。
  
 端的にいってしまえば、
  
 全員参加・全員貢献で生み出すリーダーシップ(社会現象)
  
 別の言葉でいえば、
  
 リーダーシップは、どこぞのカリスマが発揮する「他人事」ではなく
 リーダーシップは、メンバーみんなにとって「自分事」
  
 ということになると思います。
  
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 シェアードリーダーシップは、主に、テクノロジーや価値観の進展のスピードがはやく、多くの人々が、それぞれの持ち味や多様性を活かしながら、物事をつくりあげていくといった文脈で注目されている概念だと僕は思います。
  
 そうした状況下においては、ひとりのリーダー(カリスマ)がすべてを判断し、すべてをコントロールするよりも、全員が強みや専門生を発揮し、現場で、そのつどリーダーシップを生み出した方が、効果性が高い。
  
 てなわけで、
  
 ひとりの有能なリーダーに依存しちゃうリーダーシップ
 ひとりひとりのメンバーの貢献によるリーダーシップ
  
 をめざした概念なのかなと思います。
  
 まことに興味深いことです。
  
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 シェアードリーダーシップの概念には、強く首肯し、それに魅力を感じつつも、しかし、一方で、僕は、「もうひとつの考え」をどうしても脳裏に浮かべてしまいます。
  
 その考えとは、
  
 シェアードリーダーシップの概念は、「カリスマ、ひとりの有能なリーダー」の対照概念として創造されたものではあるけれど、「メンバーのなかにカリスマという存在がいること」自体を否定しているわけではないのではないか
  
 という妄想的仮説です。
  
 いや、むしろ、シェアードリーダーシップの発揮される社会的状況においても、時と場合によっては、カリスマ型のリーダーシップは「併存」可能なのではないか・・・それらが相互作用(シナジー)をおこしつつ、効果性を発揮できるときがあるのではないか
 
 ということをついつい妄想してしまうのです。
  
 つまり、端的にいってしまえば、
  
 シェアードリーダーシップが発揮されている場だからといって、カリスマ型のリーダーはいてもいいし、そうしたものが時と場合によっては、求められるケースもある
 
 もっというと
  
 シェアードリーダーシップとカリスマ型リーダーシップは「併存」しなければならないときがある
  
 ということなのかな、と思うのです。
  
 ま、妄想なので気にしないでください。
 皆さんはどう思われますか?
  
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 こうした妄想の妥当性を強く実感するのが、それぞれが創造的であろうとするチームが、万が一、「緊急事態」に陥ったときには、どのようなリーダーシップが必要か、ということです。
  
 緊急事態は「平場」ではありません。
 このままほおっておけば、血が流れる。
 このまま指をくわえてみていれば、チームの状態に危機が生じる。
  
 そうしたときには、シェアードで発揮される「強み」の範疇をこえ、誰かが、率先垂範し、陣頭指揮をとらなければ、被害はより広まっていってしまうのではないでしょうか。
  
 おそらく、そうしたときに必要なのは、カリスマ型のリーダーシップのもとで、シェアードリーダーシップ的な状況をいかに生み出すのか、ということではないかと思います。
  
 ということは、シェアードリーダーシップとカリスマ型のリーダーシップは「併存」可能ではないか、という妄想が生まれるのですが、どうでしょうか。
  
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 一般に、シェアードリーダーシップはカリスマ型のリーダーシップを「否定」して、それを「乗り越えるもの」として生まれた、と語られます。つまり、シェアードリーダーシップはカリスマ型リーダーシップの「置換概念」として語られるということです。
  
 世の中のほとんどの言説は、あえて「二極化」して語った方がわかりやすいので、それもやむなきところなのですが、シャバの実感知からすると、なんとなく、それらは「二刀流」であってもよいのかなと思ってしまうのです。
     
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 もし上記の仮説を「是」とするならば、わたしが探究したいと思う問いは、
  
 シェアードリーダーシップとカリスマ型リーダーシップのシナジーが、いかに生まれうるか
  
 ということであり
  
 ひとびとが、いかにシェアードリーダーシップとカリスマ型リーダーシップというふたつの武器やモードを組み替えたり、組み合わせたりするのか
  
 という問いです。
  
 要するに
  
 武器を持ちかえたり、二刀流で迫ったりして、成果を達成する現象
   
 がいかにして可能なのか、ということが、僕の知りたいことです。
  
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 一般に、この世の中において、たいていの「真実」は、二項対立を超えたところにあるというのは、45年、シャバワールドを生きてきた実感です。
  
 かつて、小説家のスコット・フィッツジェラルドはこういいました。
  
The test of a first-rate intelligence is the ability to hold two opposed ideas in the mind at the same time, and still retain the ability to function.
  
「優れた知性とは二つの対立する概念を同時に抱きながら、その機能を充分に発揮していくことができる、そういうものだ。」
  
小説家 スコット・フィッツジェラルド(村上春樹訳)
  
 これにゆるく関連し、せんだって、NHKのテレビドラマを見ていましたら、ある医師のこんな言葉が引用されていて、感銘を受けました。
  
「おじけづいて踏み出せない人」ではなく
「リスクを顧みず闇雲に動き回る人」でもなく
「勇気と冷静さを併せ持つ探検者」であれ!
   
 医師 イラン・ティモール
  
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 シェアードリーダーシップとカリスマ型のリーダーシップ
  
 あなたは、いくつのリーダーシップの武器をもっていますか?
  
 そして人生はつづく
  
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【泣くな!新米管理職!】
    
おかげさまで10刷重版出来。「駆け出しマネジャーの成長論」は、「実務担当者」から「新任管理職」への役割移行をいかに進めるかを論じた本です。「脱線」をふせぎ、成果をだすためには「7つの課題」への挑戦が必要であることを解説しています!全国の管理職研修で用いられています。どうぞご笑覧くださいませ!
  

    
パーソル総合研究所と中原は、このテキストをもとにした「マネジャーになる研修」を開発しました。種部吉泰さんとディスカッションは、非常に楽しいものでした。このコースについても、どうぞご覧くださいませ!
  
「マネジャーになる」 研修:プレイヤーからマネジャーへの移行期支援プログラム
https://rc.persol-group.co.jp/seminar/become-a-manager.html

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