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2020.2.3 08:03/ Jun

あなたの会社では「中間管理職の育成」を一日こっきりの「神隠し研修」に委ねていませんか?

※本日(2月4日)は所用にて、ブログの更新を中止します。明日からまたどうぞよろしくお願いいたします。
  
「うちの管理職がイケてない」
「中堅の育成が、課題です」
   
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 仕事柄、こうしたご相談を受けることがあります。お仕事お疲れ様です。
 中間管理職の育成に課題感をもつ組織は、少なくなく・・・というよりも、ほとんどの組織の課題であり(笑)、個別の状況を伺いながら、お話を聞かせていただきます。
   
 人材開発の立場から、管理職の育成に関してわかっていることといえば、やはり、「挑戦的な仕事」と「フィードバック」だと思います。
   
「他者をリードする人材」を育成したければ、「他者をリードする経験」をもつことである
  
 かくして、リードすることを含む「挑戦的な仕事」を、なるべく早期からもつことが重要になります。
 もちろん、あまりにもシビアな仕事からはじめてしまうと、無理も生じます。挑戦的な経験のレベルがあまりにも高ければ、うまくいかないのです(DeRue & Wellman 2009)。
  
 管理職育成を高める、もうひとつのドライバーは、言うまでもなく「フィードバック(あるいはコーチング)」です。
 挑戦的な仕事に対して、きっちりフィードバック(あるいはコーチング)をしていくことが、より高いレベルの育成を可能にします。ま、そうだよね、という感じですね。
  
 以上が、人材開発の立場からの管理職育成のポイントですが、これらは強力に作用する一方、これでは片手落ちでしょう。管理職育成に影響を与える、もうひとつのポイントは、給与制度・評価制度の改善でしょう。
  
 まず給与。
 高いレベルの仕事をするのだから、給与・待遇面をふくめて管理職の待遇を改善していくことは、非重要に重要です。日本の組織は、アジアパシフィックの企業とくらべて、管理職の待遇が決して高いわけではありません。経験的には、おそらく、アジアパシフィックの8割くらいでしょうか(物価上昇が激しいアジアパシフィックの状況と単純に比較することは難しいのです)。いずれにしても、管理職の仕事を魅力化することも、重要なことです。
  
 もう一方は評価制度です。
 成果に対してしっかり評価を行い、給与と連動させることも重要でしょう。
  
 もちろん、ネガティブな行動に対する厳密な評価も必要です。
 言うまでもないことですが、ハラスメントなどに関しては、厳密に対処することも必要です。
  
 先日、ある組織の方が、こんなことをつぶやいておられ、思わず、椅子から転げ落ちてしまいそうになりました。
  
「うちの会社では、ハラスメントが減らないんです。ハラスメントをしても、しなくても、管理職は偉くなっていきますので・・・」
  
 この話を聴きながら、「ハラスメントが減らないこと」という不条理は、「合理的」に起こっていると思いました。なぜなら、ハラスメントがあろうが、なかろうが、偉くなっていくので、泣。起きている出来事は、いつだって「合理的」です。
  
 ▼
  
 このように管理職育成は、あらゆる機会をみて「あの手この手」で行っていく他はありません。
 1日の研修にでたら、「イケてない管理職」の「目」キラキラとしたものと変わり、「よい管理職になること」は、まずないのです。そんな「神隠し研修」はありません。
  
 あなたの会社では、中間管理職をどのように育成していますか?
  
 あなたの会社では、中間管理職の育成を「1日こっきりの神隠し研修」に頼っていませんか?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー

追伸.  
せんだって金井壽宏先生(神戸大学)の退職記念式に、外部の講演者として守島基博先生(学習院大学)とともにお招きいただきました。昨今の研究・実践につきまして、神戸大学にて、拙い「プチ講演」をさせていただきました。
服部先生、金壽会のみなさま、そしてMBAの同門の皆様には、大変お世話になりました。心より御礼を申し上げます。平野先生や、鈴木先生、同門の先生方にもお会いでき、大変嬉しく思いました。暑く御礼を申し上げます。ありがとうございました。
  
25歳から65歳に至るまで、40年間にわたって、ひとつの大学で、リーダーシップ、モティベーション、キャリアの三領域を架橋・往還しながら、その最前線を走り抜けられた金井先生。その、ご業績は、経営研究史に永久に刻まれることになるものと思われます。他の追従を許さないご業績です。
  
金井先生の最後のレクチャーのなかで、やはり印象的だったのは「よい理論は実践的だ」「すぐれた実践家は、自分のリーダーシップの持論をもつべきだ」というお言葉です。そしてなによりも、「わたしは、経営学やってて、よかった」というお言葉が、心を打ちました。
  
金井先生には、今から13年くらい前、慶応MCCなどの金井先生主催のセミナー等にお招きいただき、登壇させていただく機会をいただきました。また、著書「リフレクティブマネジャー」などで、どこの馬の骨ともわからない僕にチャンスをくださり、共著の機会をいただきました。
  
当時、30歳をまわったばかりの僕にとっては、金井先生にお声がけをいただいたことは、そのすべてが「身に余る機会」です。しかしながら、先生の知識、見識の差に、毎回、胃が痛くなる思いで登壇・参加したことを、今でも覚えています。心より感謝をしております。
  
金井先生の、このたびの節目に際しまして、心よりの祝意を抱き、また、その学恩に御礼を申し上げます。本当にお疲れ様でございました&ありがとうございました!
  

    
 ーーー
  
「フィードバック入門」10刷、「実践!フィードバック」が重版5刷です。ハラスメント時代に必要な部下育成の技術がフィードバック。耳の痛いことをいかに部下に通知し、そこから立て直しをはかることができるか。全国各所の管理職研修で用いられています。はじめてリーダーになる方、管理職になる方におすすめの2冊です。どうぞご笑覧くださいませ! この書籍をベースにした映像教材、通信教育教材、研修などもございます。
       
 
    
DVD『フィードバック入門』、通信教育、研修はこちら
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/
   
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