NAKAHARA-LAB.net

2019.12.3 06:38/ Jun

この10年で「日本の人事・人材開発」は何が変わったのだろうか?

「この10年で、日本の人事・人材開発は、どのように変わってきたのだろうか?」
   
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  ・
  
 せんだって、慶応丸の内シティキャンパスでの僕の授業「ラーニングイノベーション論」、2019年の最終成果報告セッションが終わりました。
  
 おかげさまで、今年もラーニングイノベーション論は「満員御礼」。
 今年も、多くのラーニングイノベーターの方々が、半年14回にわたる授業を受講なさり、ご卒業をなさいました(お疲れ様でした!:来年度の募集は2020年春にはじまる予定です。詳細は慶応MCCの保谷さんにお問い合わせくださいませ!)
  
ラーニングイノベーション論
https://www.keiomcc.com/program/lin19a/
    
 ラーニングイノベーション論の最終成果セッションは、30余名の卒業生の方々が、自社の人材課題をひとつ取り上げ、それを分析し、解決策を練り上げ、ポスターセッションをするという活動をいたします。
  
 その年その年の、企業の人材課題が、30数個寄せられ、ポスターとして張り出されるのは、毎年毎年、壮観です。そして、このスタイルは、ラーニングイノベーション論がはじまった11年前の2008年から、全く変わることはありません。
  
 今年のポスターセッションも、さすがはラーニングイノベータのみなさま。
 詳細な分析と練りに練った解決策が提案されており、思わず見入ってしまうようなものが多かったように思います(お疲れ様でした)。
  
 ▼
  
 教室に張り出された30余名の皆さんのポスターをひとつひとつ見つめながら、今年の企業の人材課題をひとつひとつ読み解いていきます。
  
 そのとき、ふと脳裏に思い浮かんだのが「冒頭の問い」です。
  
「この10年で、日本の人事・人材開発は、どのように変わってきたのだろうか?」
  
  ・
  ・
  ・
  
「日本の人事・人材開発」は、といいつつも、10年(正確には11年)で「N=300」の事例。しかも、僕が担当する授業内のことなので、偏りは存在することは百も承知です。
  
 しかしながら、下記にかかげられる3点くらいは、この10年の変化として認められるのではないか、と僕は思いました。
  
1.経営課題と紐付いた人事課題が増えてきた
   
2.データによる説明や、データによる検証が増えてきた
  
3.HRD(人材開発)、OD(組織開発)、CD(キャリア開発)、HRM(人的資源管理:精度)が「融合」した課題が増えてきた
  
 これらを順に論じていきましょう。
    
 ▼
  
 まず「1.経営課題と紐付いた人事課題が増えてきた」とは、課題解決が「人事に閉じない発表」が増えてきている、ということです。
 むしろ「企業の戦略の変化」「企業合併の方向性」などの経営課題に「紐付いた」り、それと「連動」するかたちで「いかにひと・組織を変えていくのか」が論じられることが多くなってきた印象があります。
  
 ワンセンテンスで述べるのならば、多くのひとびとの主要な関心は、
  
 ひと・組織の観点から、経営にインパクトをいかに与えるか?
  
 ということでしょうか。
  
 もちろん、かつても、そのような趣旨のご発表は多々ございました。
 が、ここ数年の課題は、それに拍車がかかっているような気がします。
  
「この課題解決は人事部内の議論ではすまないだろうな」
「経営会議にかかる事項だな」
「経営企画といっしょに解決することが必要になるだろうな」
  
 という案件が増えてきたような気がします。この方向性を「人事の戦略人事化」といってしまえば、そのものなのでしょうけれども。
  
 ▼
    
 つぎに「2.データによる説明や、データによる検証が増えてきた」です。これは本当にそう思います。
  
 組織内調査、エンゲージメントサーベイ、ストレス調査の集団分析、離職率の変化や予測など、様々な組織内のデータを用いて、施策の分析にあたったり、施策の立案を行うケースが増えてきました。
  
 かつてラーニングイノベーション論は、「理論にもとづく」ということをかなり標榜していました。
 ここ数年のラーニングイノベーション論は、これに加えて「データにもとづく」という観点が加わりつつあるな、と思っています。ここにどのようにカリキュラムを連動させるかが、わたしどもの課題です。
  
 ▼
  
 最後に、「3.HRD(人材開発)、OD(組織開発)、CD(キャリア開発)、HRM(人的資源管理:精度)が「融合」した課題が増えてきた」です。
  
 これは、そのままです。
  
 かつてのラーニングイノベーション論の成果発表会では、やはり「HRD課題」がとりあげられることが多かったように思います。今でも、それはそうなのですが、課題解決のなかに、様々な要素を取り入れるご発表が増えてきた印象があります。
  
 近年では、
  
 HRD(人材開発:Human Resource Development)
 OD(組織開発 : Organization Development)
 CD(キャリア開発 : Career Development)
  
 などの「D系施策(Development系)」はもちろんのこと
  
 「HRD(制度:Human Resource Management)」
  
 などの「M系施策」を組み合わせた提案が増えています。
  
 たとえば、若者の早期離職の問題でも、中高年のモティベーションに関する課題でも、これらを、単発の研修(HRD)だけで解決するのは不可能です。そのためには、組織を見直し、キャリアの設計を見直し、場合によっては、給与や評価のあり方を見直さなくてはならなくなる。こうしたかたちで「D系施策」の境界がなくなり、さらには「M系施策」と融合していきます。
  
 そこには、「採用は採用」「育成は育成」「制度は制度」といったような機能別人事、セクショナリズム人事の発想が、かつてよりも薄まりつつあります。機能の境界、セクションの境界など、どうでもいいことです。課題がそこにあり、それを解決すればいい。
  
 僕は、かつてから、「21世紀の人事は、さいごは、人材開発も組織開発も人材マネジメントも境界が溶けて融合し、人事の実践だけが残る」と思っております。まさに、それが今、企業経営の現場で起こりつつあるような気がしています。
  
「人材開発」も「組織開発」も溶けてなくなる「21世紀の人事」とは!?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/10494
  
 このように
  
 これからのひと・組織の課題解決は、人事施策「総出」で、行われるようになる
  
 のではないか、と思っています。
  
  ▼
  
 今日は慶応での授業の成果報告セッションの様子をもとに、「この10年で、日本の人事・人材開発は、どのように変わってきたのだろうか?」という問いについて考えてきました。みなさまは、いかが思われたでしょうか。
  
 最後になりますが、今年のラーニングイノベーションの受講生のみなさま、そして、ご登壇いただきましたすべての講師のみなさま、そして慶応丸の内シティキャンパスの事務局・ロジスティクスをご担当いただきました、保谷さん、山田さん、佐々木さん、本当にありがとうございました。おかげさまで11年目のラーニングイノベーション論を無事終えることができました。
  
 来年のラーニングイノベーション論は、干支一回りの12期。
 なにやら卒業生のみなさんは、12年目を記念して、特別企画?などもいろいろお考えのようです。
  
 あなたの会社の人事は、この10年で何が変わりましたか?
  
 この10年、スマホが生まれ、ソーシャルメディアが普及し、
 わたしたちの生活は、大きく変わりました。
  
 あなたの会社の人事は、この10年で何が変わりましたか?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
追伸.
名古屋・中部地方のみなさま、12月18日 中部産業連盟「人材育成フォーラム」に登壇します。入場無料、限定600名だそうです。どうぞお越しくださいませ!テーマは「残業学ー長時間労働はなぜ生まれるのか? 組織開発でいかに解決するのか?」です。会場でお会いしましょう!
  
参加申し込みページ
https://www.chusanren.or.jp/whatsnew/jinzaiforum2020/index.html
  
  ーーー
     

   
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
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