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2019.9.26 06:44/ Jun

転職のときには「従事」がオンパレードする「プチ盛り職務経歴書」にご注意を!

「転職学」という共同研究プロジェクトをパーソル総合研究所、パーソルキャリアの皆さまと協力して進めています。
  
 転職学は、
  
1.ひとはどういうときに離職するのか?(離職研究)
  
2.どのような転職活動を行えば、転職に成功するのか?(転職活動研究)
  
3.ひとが中途採用で新たな組織に定着するためには何が必要か?(中途採用研究)
  
 を一気通貫する共同研究プロジェクトです。これまで分断されていた、様々な領域を越境し、来る転職社会に備える科学的知見を生み出すことが、この研究の目的です。
  
 万単位の大規模調査を通じて、これらのリサーチクエスチョンに迫ります。プロジェクトチームで、わいわい議論しながら、この謎に迫っています。
  
 転職距離
 転職の方程式
 転職学習論
 転職とセルフアウェアネス
  
  ・
  ・
  ・
  
 プロジェクトでは、ここ最近、様々な「謎な概念」が多々生まれてきました。知見は角川書店さんから書籍として刊行されますが、皆さんにはやく、それをお届けできることが、今からとても楽しみです。
   
  ▼ 
  
 ところで、ちょっと前のプロジェクトミーティングで、メンバーで話題になったのが、
  
ひとは転職活動のときに、自己プロフィールや職務経歴書をどのくらい「盛る」のか?
  
 という謎の問いです(笑)。
 ガチな真面目な議論に疲れると、こういう「箸休め的な問い」を考えたくなるのは、人情です。 
  
 一般に、転職活動の面接では、以下の5つの質問が展開されるといいます。
  
【質問1】自己紹介・自己PR
 「自己紹介をしてください」
  
【質問2】転職理由についての質問
 「今の会社を選んだ理由は?」
 「なぜ辞めようと思われたのですか?」
  
【質問3】志望動機についての質問 
 「あなたが転職先を選ぶ基準は?」
 「あなたは、なぜ当社を選ばれたのですか?」
  
【質問4】活かせる経験・実績・スキルについての質問
 「これまでどんな経験や実績をつみましたか?」
 「当社で活かせる経験は?」
  
【質問5】逆質問(面接官への質問)
 「何か質問はありますか?」
  
面接の流れと質問 
https://doda.jp/guide/mensetsu/interview/
  
 このうち、やはり重要なのは、質問4なのかな、とも思います。
 なぜなら、転職の面接で、面接官が働かせている認知活動は、いわゆる「推論」だからです。
  
 つまり、転職といっても、求職者に実際に仕事をしてもらって、そのできばえをみて転職の成否を決めるわけにはいきません。
 要するに、「過去の経験や実績のストーリー」から、「今の会社」に入って「発揮されそうなスキルや能力」を「推し量ること=推論」しかできないのです。
  
 この「推論」のもっとも重要なことは、求職者が、面接官が利用する「推論の資源」である「過去の経験や実績」をどの程度拡大解釈したり、広めに伝えるのか、ということです。
  
 それが広くて、大きく伝えられるほど、場合によっては、面接官は「こいつは仕事ができるかもしれない」と過剰評価をしてしまいます。逆に、あまりにも過剰に伝えてしまうと、「こいつは嘘を言っているかもしれない」と怪しまれます。
  
 ここで冒頭の問いに接続します。

 ひとは、転職活動のとき、どのくらい、職務経歴を「盛る」のでしょうか(笑)。
  
 一般に、転職面接では、求職者は転職を成功させるために「過去の経験や実績」を「プチ盛り気味」に話す傾向がでてきます。もちろん、そんなことはわかっているので、面接官は、それを「見極め」ようとします。
  
 転職面接とは「プチ盛り」と「見極め」の攻防です。
  
 あなたの場合はどうですか?
  
  ▼
  
 とりわけ、この研究をはじめるようになってから、様々な履歴書、職務経歴書の話を伺いましたが、チームメンバーとの議論で盛り上がったのは、
  
 「従事」という言葉は、怪しいね(笑)
  
 ということです。
  
 たとえば、
  
 大手SIerによる大規模システム統合プロジェクトに「従事」
  
 と書いてあったら、何をもって「従事」したといえるのかは、かなり明確に、その内容を聞いていかなければならない(笑)。
  
 極端な話、もしかしたら、
  
 大規模システム統合プロジェクトの会議室を予約しただけかもしれない(笑)
  
「そんな馬鹿な」とおもいますが、実際の現場では、「そんな馬鹿なこと」が起こりうるのだから、社会というものは、まことに面白いものですね。
  
 従事に注意!
 従事注意報!(笑)
  
 ちなみに、研究者やアーティストの場合だと、プロフィールにある「師事」というのも、ちょっと疑ってかかる言葉ですね。
  
 たとえば、
  
 カラヤンに「師事」
  
 とか書いてあるプロフィールは、「何をもって師事」なのか、よくわからないことがある。
  
 極端な話・・・
  
 カラヤンに「お茶」を運びにいっただけかもしれない
 
 あるいは
 
 カラヤンに便所で話しかけて、頑張れよ、と言われただけかもしれない 
 
 そういうプロフィール、ものすごくたくさんありませんか?
  
 師事に注意!
 どんな風に、師事したの?
   
  ▼
  
 今日は、転職研究の研究のこぼれ話を書きました。
  
「ほんちゃんの研究」は、こういうしょーもないことを考えているわけではなく、ガチで「離職ー転職ー定着」を一気通貫しようとしているので、ご安心を。
  
 ただ、わたくし、「調子こき太郎」なので、ひとつ、朝っぱらから「ワルノリ」して、簡単なアンケートをさせていただこうかと思います。
(学術的に1ミリも意味もないアンケートなので、あしからず!)
  
 問いは1問のみ。
  


  
 みんなどのくらい、盛るんだろう?
 それとも・・・盛らない?
  
 最後になりますが、中原がこの研究でコラボさせていただいているのは、パーソル総合研究所の小林さん、櫻井副社長、渋谷社長。そして、パーソルキャリアの吉村さん、平田さん、影山さん、藤田さん、そしてdoda編集長の大浦さん、執行役員の勝野さんらです。
  
 最終成果をまとめるべく、さらに皆さんと邁進します。
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
先だっての講演がレポートになりました。リーダーシップの発揮にとって、ひとりひとりのチームメンバーが「自己とは何かを知ること」は重要な要素です。それは「セルフアウェアネス」です。どうぞご笑覧くださいませ!
  
一人ひとりの自己認識がチームを動かす
EIシリーズ「セルフ・アウェアネス」刊行記念イベント<講演録>
https://www.dhbr.net/articles/-/6153
  
  ーーー
  
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