NAKAHARA-LAB.net

2019.6.4 06:50/ Jun

将来、人材開発・組織開発の仕事をしていきたい学生は、いったい、どういうキャリアを積めばいいのか?

※6月5日は所用の為、ブログをお休みさせていただきます! また明日お逢いしましょう!※
  
「就活の早期化」の影響が、大学教育に少しずつ影響がでてきました。現場では「今さらジロー感」が漂っていることですが、それらをまとめますと、要するに、下記となります。
     
1.就活の主戦場が早期化し、「3年生の夏インターン」からはじまっている
 (=ということは、春学期には、動きだす学生もでてくる)
 (=インターンをやらなければ就職できないわけではないが、選択肢が狭まる)
  
2.インターン各種の早期接触手段により、早い学生で3年生の冬、一般的には4年生の春・初夏あたりには1個以上の「内定」をもらっているケースが多い
 (=おそらく来年はさらにその傾向が強まる)
   
3.4年生の6月1日の就活解禁日には、解禁ほぼ直後に一斉に「大手の内定」がでる
 (=就職協定がほぼ無効化している)
  
4.3を逃すと、かなり痛い
   
 という感じかな、と思います。以下のお話は、わたしの身近で起こっていることですので、実態はよく知りませんし、理系のことも知りません。一般論ではございませんので、その限りでお読み下さい。
  
 さて、そうした就活の早期化が起こるなかで、昨年生まれたばかりの「中原ゼミ」では、初代3年生が就活に巻き込まれ始めています。
  

    
 彼らは、先輩がいないなか、(先生は、やりたいことやれ、と言うだけで、たいしたアテにもならないし)様々な就活を行わなくてはならないのは、大変だとは思うのですが、ぜひ、何とか、これをサバイブして欲しいものだと思っています。
  
 最近は、(先生はアテにならないといっても)、ゼミ生の就活の相談にのることも増えてきました。
 たいていのことは「おまえはどうしたいの?」「やりたいことやれ」くらいしか言わないのですが、昨日、学生から相談を受けて、グッときた質問は下記です。
  
 わたしは、企業で人材開発・組織開発の仕事をしていきたいのだが、どういう風にキャリアを積めばいいですか?
   
 非常に熱心に学んでいる学生でしたので、どう答えようか、小一時間ほど考えてしまいました(自分の考えたことに自信が持てなくて、助教の田中聡さんに相談にものってもらいました・・・感謝)。
   
 言うまでもなく、一般的な日本企業は、職能給+ジョブローテーション型+長期雇用の、いわゆる日本型雇用です。
 そうすると、「人材開発・組織開発の仕事がしたい」といっても(これは人材開発・組織開発に限らず、仕事を選べません)、なかなかそれを新卒のときから行うことは困難です。しかし、学生の思いには、直接は答えられなくても、何とか回答はしてあげたい。
   
 先ほどの問いに対する可能性は、以下の4つくらいかなと思ったのですが、皆さんの身近では、いかがでしょうか?
    
1.職務型(ジョブ型)の採用を行っている外資系企業にHRの人員として就職する
  
2.コンサルティング業界に入社し、組織人事コンサルをめざす。スキルをつけたら、一般的な事業会社に転職する(ないしは起業)。
  
3.人材紹介業の会社に入社し、HRの経験をつむ。採用が入口になってしまう可能性も高いが、その後、一般的な事業会社に転職し、HRとして働く(ないしは起業)
  
 このくらいかなぁ、と思ったのですが、いかがでしょうか。
 もちろん、最近のHRは事業会社の事業経験者から、移籍してくる方も多いように思います。そうだとすると、
  
4.一般企業に就職し、事業(ビジネス)を経験してから、HRに移籍する
  
 という選択肢もありえるのかな、と思います。
 僕としては、どんな事業でも、最後の最後には「ひとをどう動かすか」「どのようにチームをつくり、組織を動かすか」ということで悩むことになると思いますので、事業・ラインでも、ビジネスを牽引していただきたいという思いもございます。
  
 もちろん、第5の選択肢として
  
5.中原ゼミの学生ならば、我が社に職務型採用したい
  
 という方がいらしたら、それも、まことにありがたい、かつ、有望な選択肢なのかもしれませんが(笑・・・ご縁ですので、うまくいっても、いかなかったとしても、もしそういう方がいらしたら、ありがたいことです)。
  
  ▼
  
 立教大学経営学部に移籍して2年。
 いよいよ、初代ゼミ生が就職活動にチャレンジする段になってきました。
 さっきまでヨチヨチ2年生をしていた彼らが、急に社会に対面していく姿を見ていると、心の底から応援したい気持ちです。
  
 僕個人としては、「人材開発・組織開発のことを学ぶと、将来的に、役に立つ」と心の底から信じて疑いません。たとえ、ビジネスをやっていたとしても、どの事業部で働いていたとしても、「最後の最後には、人のこと、組織のことで悩むことになる」。だから、将来的には、役に立つ、と僕は思っています。
   
 しかし、職能型の日本型採用という局面になると、また異なったリアルもあります。
  
 この国は、これは人材開発・組織開発に限らずなのですが・・・
      
 マーケティングがやりたいといっても、マーケティングの仕事ができるかどうかは「運」
 人事の仕事がしたいといっても、人事の仕事ができるかどうかは「運」
   
 いわゆる「配属ガチャ(=新卒での配属部署が「ガチャガチャ」で「ガチャ玉」を出すように決まること)」の雇用慣行が存在する国なのです。

 今後、わたしの周囲には、学部も大学院もふくめて、「成果を出すために人づくり・組織づくりをいかに行うか」ということに専門性をもった学生が増えていくのではないかと思います。その彼らのキャリアをいかに支援していけばいいのか。
   
 たとえば、彼らが2年生・3年生のときに、人事・人材開発・組織開発のことでインターンを行わせていただくためには、どうすればいいのか。
 (=すでに何社からお声がけをいただいております。ありがとうございます)

 また、そうした彼らが、将来的に人事・人材開発・組織開発のことで就職するためにはどうすればいいのか。
  
 彼らのキャリアをいかに支援したらいいのか?
 そのために、僕にできることはなにか?
  
 我が人生で最も忙しい日々が続きますが、
 そんなことを考えているところです。
   
 そして人生はつづく
   
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