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2019.4.17 06:48/ Jun

「いいねいいね病」に罹患し、心優しく「割り算」かまして、「犬の道ドボン」にご用心!:課題解決で陥りやすい3つの思考の罠

「また、いいねいいね病がはじまったか・・・このままいくと、割り算して、犬の道に入っていくな」
   
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 仕事柄、「学生のグループワーク」の様子を見つめている時間が長いです。
  
 立教大学経営学部では、ビジネスリーダーシッププログラムと称して、初年次1年生のうちから、必修科目で学生400名弱に、企業の経営課題を素材としたプロジェクト学習(グループワーク)を課しているためです。僕自身は、このプログラムの統括責任者を仰せつかっています。また2年生の授業の教材開発責任者をつとめており、学生のアシスタント(Student Assistant / Corse Assistant)とともに、教材をつくっています。
  
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 冒頭申し上げたとおり、経験上、学生のグループワークで、もっとも頻繁に起こり、しかも、成果にとてつもなく甚大な影響を与えてしまうのは、
  
 1.グループ全員で「いいねいいね病」に罹患し
  
 2.さらには「割り算病」で症状を「こじらせ」
  
 3.最終的には、グループ全員で「犬の道」に堕ちてしまう
  
 という状態です。
  
 この状態、いったん罹患してしまうと、なかなか後戻りするのに時間がかかります。しかも、行き着く先には「解決しても、誰も喜ばない解決策」だけが生み出されてしまう、という、とてつもなく恐ろしい病です。
  
 具体的に、これはいったい、どんな病なのでしょうか。
  
  ▼
  
 まず「いいねいいね病」とは、文字通り、フェイスブックの「いいね」です。過剰な相互承認を旨として、グループ全員で批判的に物事を考えることから逃げてしまうことをいいます。具体的には、グループワークのなかで、メンバーから、どんなアイデアがだされても「いいね」で答える(笑)。
  
 Aさん「ちょめちょめをやったら、いいと思うんだ」
 みんな「いいね!」
  
 Bさん「ほげほげをやると、すごいんじゃない」
 みんな「いいね!」
  
 Cさん「へろへろだと、ヤバクない?」
 みんな「いいね!」
  
 どんな意見がでても「いいね!」でかえして、すべて受け入れる。「違うかな」と思っても、グループの協調を重んじ、なかなか自分の意見が言い出せない。アイデア同士の違いやズレを比較したり、吟味したり、対話したりすることができない。そうすると、行き着く先は、どうなるか。
   
 やがて、よせばいいのに、心優しい誰かが、こういいはじめるのです(笑)。
  
 Dさん「あのさー、思ったんだけど、ちょめちょめと、ほげほげと、へろへろを、足して3で割るといいんじゃない」
 みんな「いいね!」(笑)
  
 これを「割り算病」と僕は呼んでいます。
 そして、この時点で、課題解決の9割9分は「負け確定」です(笑)。
 本質的な議論を避けているので、どんどんと、本質からズレていく。
  
 
  
 世の中に、足し算のあとに割り算をやって、イノベーションを生み出したひとはいない
   
 のです。
   
 だって、
     
 平均をだすということは、アイデアをトンガリ度を丸めていくことでしょう

 だって、それが「平均」という言葉の意味なのだから。 
   
 さらに怖いのは、その先には、何が待っているか。
 それは「犬の道」というものです。
     
 「犬の道」とは、課題解決の入門書「イシューからはじめよ」の著者安宅和人さんが、同書において警鐘をならした「課題解決で陥りがちな罠」のことをいいます。
  

  
 手元に本がないので、うろ覚えで要約いたしますと(恐縮です)、課題解決には「イシュー度」というものと「解の質」というもの、すなわち2つのベクトルが存在する。
  

  
 ここで「イシュー度」とは「世の中(社会)でケリのついていない、解くべき課題のこと」です。一方「解の質」とは「解決策の洗練度」と考えればいい。
  
 著者曰く、本質的に芯を食った課題解決とは
  
 イシュー度が高いものに対して、解の質をあげていかなければならない
(=まずはイシューであるかどうかを見極め、何を解くかをしっかり批判的に思考したうえで、解の洗練度をあげていかなければなならない)
  
 しかし、一方、シャバの多くの課題解決は、
  
 イシュー度がさして高くない(誰も解決してもさして喜ばないもの)を、課題ととらえて、解の質をあげようとする
  
 これが、著者のいう「犬の道」です。
 その結果、生まれてしまうのは「解決しても、あまり誰にも喜ばれない、芯を食っていない、洗練された解決策」ということになってしまうのです。
  
 さきほどの「いいねいいね病」、さらには「割り算病」の果てには、犬の道に入ってしまう危険が、相当に高い。意見の対立などを「いいね、いいね」で避け、さらには「割り算病」でアイデアを薄めているので、本質からどんどんとズレていきます。

 そして、グループ全員で、トボトボと「犬の道」を歩くことになるのです。
  
  ▼
  
 僕にとって、一年で、忙しい季節がはじまりました。
  
 1年生授業に加え、自身が担当するBL2(2年生向け授業)もスタートし、ダブルで忙しくなります。
 2年生向け授業のクライアント企業様は、パーソルホールディングス様です。昨日は、佐藤裕さま、横舘紗智さまに立教におこしいただき、課題のご紹介をいただいたり、講義をいただきました。心より感謝をいたします。

 2年生の今年のテーマは「20代の働くにまつわる社会課題を解決するためにパーソルホールディングスにできることを提案せよ」です。SA,CA、兼任講師の先生方と協力しながら、何とか、よき課題解決につなげていきたいと考えていきます。
  
 リアル社会で「いいねいいね」するな!
 割り算をしたくなったら要注意!
 犬の道をトボトボ歩くな
  
 心ゆくまで(知的に)暴れてほしいものです
 そして人生はつづく
  
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