NAKAHARA-LAB.net

2018.9.4 07:10/ Jun

学部ゼミとは「小さな社会」である!? : ゼミを運営しながら採用・人材開発・組織開発を学ぶ!?

 立教大学で働くようになって来月で半年です。現在、大学は長い夏休みの最中ですが、教員としては、そろそろ秋学期の準備やら、次年度の準備やら(ビジネスリーダーシッププログラムの場合、次年度の準備が秋学期からはじまります)がはじまってきました。忙しい日々が、徐々に戻りつつあります。
  
 もうひとつ本格化してきたのは、学部の中原ゼミナールの活動です。中原ゼミには、現在、2年生23人が活動をしていますが、今週は「初の合宿」を行っています。
 


立教大学経営学部・中原ゼミナール2018(2年生)
http://www.nakahara-lab.net/zemi
  
 秋学期からは、現在の1年生を新たに新規ゼミメンバーに向かえる「採用活動」が本格化します。中原ゼミは「ひとと組織系のゼミ」でございますので、採用研究の知見に目を通しつつ、採用の企画を練っています。採用が終われば、新入生の「育成」ですね。こちらはすでに学んだはずの「人材開発研究」の知見を活かすことができるかどうかです。
 現在、採用は山川由斗さん、佐藤智文さん、瀧本真優さんらが中心になって取り組んでおり、ゼミ生オールで行っていきます。お疲れさんです!
   

   
 さらには、秋学期からは、いよいよゼミでの「探究活動」も本格化します。各人がテーマにわかれて企業分析や、ケース分析をやったり、調査をやったり、企業訪問をしたりしながら、何らかのアウトプットを社会にしていく活動がはじまります。
  
 こだわっているのは、社会に「学んだ成果」を「お届けすること」です。これは昨日、ゼミ生にもお話をしました。
 大人の学びは、自分たちが「学ぶだけ」でなく「おすそわけ」をしなくてはならない。社会に、何かのメッセージやアウトプットを「お届け」することができなければ、「大人の学び」とは言えない。
  
 探究したいテーマ、社会に知見をお届けしたいテーマは「若者 × 働く」なのだそうです。
 19歳・20歳の学生たちが、圧倒的当事者性をもって語る「若者 × 働く」の探究知見とは、どのようなものなのでしょうか。どんなアウトプットが出てきますことやら。指導教員として、とても楽しみです。
  
 冬にはゼミでイベントを開催することになりそうです。
  
 中原ゼミナール・冬のフェス?
  
 人事などなど、ひとと組織に興味をお持ちのビジネスパーソンの皆様をお招きさせていただきますので、どうぞお越しくださいませ。
 中原ゼミの学生は、全員が名刺をもって皆様をお出迎えいたします。どうぞ名刺交換のやり方からご指導くださいませ(笑)。まだまだ、ぎこちないからなぁ・・・。すみません教育不行き届きで。
    
  ▼
  
 この夏の合宿は、これら本格化してくる活動のための「基盤を整えること」を目的に、「自分たちのゼミを組織開発すること」に取り組んでいます。
  
 1.後期の活動に向け、組織の価値とゴールを再定義
 2.多様性を活かしながら成果の出せる集団を作る
  
 をつくりたいのだそうです。昨日は合宿の目的を、初代ゼミ長の秋山琳香さんが、高らかに宣言をなさっておられました。
  
 彼らが選んだのは、「AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)による組織開発」でした。
   
 端的に述べてしまえば「AIによる組織開発」とは「組織の強みに焦点をあてて、組織をさらにWORKさせることをめざした働きかけ」です。
  
 1.組織メンバーが、改めて「お互いの強み」を認識し
 2.お互いの強みを持ち寄った上で「組織の強み」を同定します
 3.その上で、組織が「現在の状況」から「どうなりたいか」を関係者一同で決めていきます
  
 昨日は、我妻美佳さん、柴井伶太さんらが、これに取り組んでくれました。
 この合宿を通して、お互いを理解し、お互いの関係性をいかに高めあげることができるかが、勝負です。よい方向に向かっていると思います。みなさま、お疲れ様でした。
  
 合宿2日目は、リーダーシップをテーマにした「ケースメソッド授業」やら、何やらを行う予定のようです。こちらは、大沼ひかりさん、佐藤都美さんが中心になって行うようです。
  
 さぁ、はじめての経験、どうなりますことやら。
 何がでてくるか、わからんぞ(笑)。
  
  ▼
  
 中原ゼミは「先輩がいないゼミ」です。
 はっきり言って、日々の活動が「試行錯誤」の連続。22名の合意をつくりながら、少しずつ少しずつ、活動を進めています。「僕らは、ベンチャーなんだから、ゼロからつくるしかない!」を連呼しています。
  
 中原ゼミには、「伝統」も「歴史」も「先輩」もないかもしれません。しかし、だからこその「可能性」があるはずです。試行錯誤を重ね、のたうちまわり、自分たちのゼミのあり方を見直していけば、そこから学べるものは多いはずです。
  
 ゼミ活動がうまくいかなければ、自分たちで「組織開発」を自ら行えばいい。
 ゼミ活動に新しい風を入れるためには「採用活動」を科学的に企画すればいい。
 すべてをゼロから、企画すればいいだけなのです。
 企画をするためには、学べばいいだけなのです。
    
 ゼミは、将来、彼らが活躍する企業組織のいわば「縮小版」であり「小さな社会」です。
 ゼミを「小さな組織体=企業体」に見立てて、その中で活動したことを振り返れば学べるものが多いはずです。失敗が許される、この「小さな社会」で「経営活動」を体験し、振り返りつつ学べばいいのではないかと思います。
   
 ゼミ生には、「君らは、ゼミでの試行錯誤を通して、生きた経営学を学んでいるんだよ」とお伝えしていますが、その意味が通じていますか、どうか(笑)。
 教員としては、「ひとつの組織体の構成員たち」を自らマネジメント(やりくり)することを通して、「生きたマネジメント」を学んで欲しいと願います。それは「効率的に知識を伝達する方法なのか」と問われると、答えは「否」です。でも、僕には確信がある。この方向だ、と。
  
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 ゼミのほとんどの時間、僕は、後ろで黙ってみているだけです。ゼミは、自分たちで企画し、自分たちで登壇し、自分たちでファシリテーションを行う。
 サボッているわけではありません。目を離しませんので。僕が口を挟むのは、方向性があさってに向いたときと、ラップアップのときくらいでしょうか。
 それにしても黙っているのはなかなか「超絶的な忍耐力」がいるものですね。本当に口をだしたくなる。
 でも、これが僕の仕事です。それでいいのだとも思います。
   
 さぁ、今日も、どこに出口があるかわからないゼミに出かけようと思います。
  
 どこに行くかわからない?
 だから面白いんだよ(笑)
    
 そして人生はつづく
  
 ーーー
  
中村和彦先生(南山大学)との新刊共著「組織開発の探究ー理論を学び、実践に活かす」が最終段階に入りました。書籍カバー案として、こちらの2つが有力2案です。「A1案(左の赤いもの)」と「A2案(右の青いもの)」、どちらが皆さんはお好みでしょうか?
  
書籍は10月3日刊行予定です。組織開発の理論、思想、歴史からはじまり、実践事例をふんだんに論じた400ページの書籍です。
  
カバー案に関しまして、どうかご意見をお聞かせくださいませ。「A1案(左の赤いもの)」と「A2案(右の青いもの)」のどちらがよろしいでしょう?
  
最終的には、中村先生をはじめ編集者間杉さん、井上さんらがご判断をいただけるのかなと思いますが、どうぞよろしくご意見お聞かせくださいませ!
  

  
 ーーー
  
新刊「女性の視点で見直す人材育成」(中原淳・トーマツイノベーション著)が、ついに刊行になりました。AMAZONカテゴリー1位「企業革新」「女性と仕事」。女性のキャリアや働くことを主題にしつつ、究極的には「誰もが働きやすい職場をつくること」を論じている書籍です。7000名を超える大規模調査からわかった、長くいきいきと働きやすい職場とは何でしょうか? 平易な表現をめざした一般書で、どなたでもお読みいただけます。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
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