NAKAHARA-LAB.net

2018.1.31 06:07/ Jun

やらない方がマシな「残念なリーダー研修」はありませんか?:リーダー研修は「ピンキリ」な話!?

 「リーダー研修」という言葉は「怪しいところ」があります。
     
 いや、別に「リーダー研修」という学習機会そのものが「ダメ」とか、そういう意味ではありません(笑)。
 僕の持論は、新入社員期に集中しがちな日本の人材育成投資を、リーダー期や管理職期に少しだけ割り振った方がいい、というものですので(下記の記事参照)、むしろ、主張は「逆」です。リーダー研修は、さらにあったほうがいい。
  
日本の人材開発は「ドカーン」と「チョロン」?:「手厚い新人教育」と「手薄な管理職支援」の謎!?https://news.yahoo.co.jp/byline/nakaharajun/20170824-00074876/
   
 リーダー期の学習は、さらに充実させるにこしたことはありません。
 リーダー研修の目的が、「共通の目的にむかって、チームを動かすこと」にあるのだったら、さらにさらにそうしたスキルを磨く経験を、前もってもったほうがいいように思います。
    
 問題は
  
「リーダー研修」という同一のラヴェルで、括られている学習内容が、あまりに「多様」すぎること
   
 にあります。
   
 端的に申し上げるならば、
   
 リーダー研修は「玉石混淆である」
   
 ということです。「玉」にあたりゃいいけど、「単なる石」にあたることもあるということなので、「目利き」が必要になるということですね。
       
 たいてい、世に流通する「リーダー研修」は、だいたい5つのパターンにわかれます。
    
1.リーダーになったら必要に「なりそう」なアカデミックな科目を羅列した「羅列型リーダー研修」
2.リーダーになる前に読んでおいたらいい本を「ひたすら読ませて」感想文を書かせる「読書型リーダー研修」
3.優秀なリーダーの経験、経営者からの薫陶をひたすら注入される「わたしの経験談型リーダー研修」
4.リーダーが生まれそうな「地獄の特訓経験」を経験させる「ミニタリー系リーダー研修」
5.リーダーに注入しておかなければ会社が社会非難されかねない内容を扱う「コンプラ型リーダー研修」
  
 たいていこの5つのパターンです。もちろん、これらが組み合わさって、ひとつのリーダー研修を構成していることもあります。
  
 問題は、もしリーダー研修の目的が、
  
 リーダーに「リーダーシップ現象(共通の目的にむかって、人を動かしていく現象)」を生み出すこと
  
 にあるのだとしたら、問題は、先ほどの5つのパターンのリーダー研修の受講経験を通して、リーダーたちに、そうした現象を生み出すことが可能になるか、ということです。
 「羅列型の知識」「読書」「経験談」「ミニタリー」「コンプラ」・・・これらが「リーダーシップ現象」を生み出すことに、どの程度、寄与するでしょうか。
  
 研修の効果性研究の知見によると、
  
 リーダー研修、管理職研修は、研修の効果性が「ある」
  
 とされています。
  
 ただし、問題は
  
 リーダー研修は、効果が「超マイナス」ものから「超プラス」のものまで「分散が激しすぎる」
  
 ということです。
  
 ひと言でいえば、

 リーダー研修は玉石混淆!ピンキリ
  
 もしかすると、世の中には
  
 やらない方がましだった「むごいリーダー研修」が溢れているのかもしれませんね
 だって、効果はマイナスなんだから。
  
  ーーー
  
 今日は、リーダー研修というラヴェルの曖昧さと、その効果性について書きました。
 じゃあ、どのような要素がリーダー研修には必要なのか、ということについては、ごめん、時間切れです(TAKUZOやKENZOが起きてきます!)。かなり長くなりそうなので、また、別の機会にブログでご紹介したいと思います。

 現段階では、「リーダー研修」とうラベルを目にしたら、人材開発の基礎知識である「リーダーシップ開発の要素」「リーダーシップ開発の理論」が存在するかを確認することが重要だと思います。
「経験」「リフレクション」「フィードバック」などなどの要素が含まれていないリーダーシップ開発は、まず、グローバルなレベルではありえないのではないかと思います。これは、また別の機会に。
 
 皆さんのまわりには、どんなリーダー研修がありますか?
 そのなかには、効果の疑わしそうなものはないですか?
    
 そして人生はつづく
 
  ーーー
   
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