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2017.12.11 06:06/ Jun

あなたの会社には「フィードバック不感症」に罹患しているマネジャー・リーダーはいませんか?

 あなたの会社には「フィードバック不感症」に罹患しているマネジャー・リーダーはいませんか?
  
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 360度フィードバック(360度評価:多面評価)は、リーダーシップ開発研究でもっとも研究が進んでおり、また、その効果が検証されている、リーダーシップ開発手法のひとつです。
 ここで「360度フィードバック」とは、リーダーやマネジャーが、自分の上司、部下、同僚などの、さまざまな階層から、自らの行動や仕事のあり方について「評価」を受けることをいいます。
  
 研究知見は、たくさんありすぎるので、ここでは、その一端だけご紹介しますが、たとえば、
  
 ・リーダーの能力開発手法としての効果は高い
  (Conger et al 2003)
  
 ・マネジャーの行動能力・対人関係能力を統計的有意に向上させる
  対人関係能力(p<.001)>行動能力(p<.001)   (Luthans et al 2004)           ・1回だけフィードバックするのではなく、複数回のフィードバックが必要   (Seifert and Yukl 2010)     ・やりっぱなしではなく、リフレクションや目標設定と組み合わせるとよい   (Luthans et al 2004)        これだけ効果の高い360度フィードバックですが、実際に、これまで全く実施していなかった組織が、これを導入するためには、なかなかハードルが高いものです。
  
 まず、人事が現場に、これを導入する目的、必然性、効果を示し、現場のメンバー、管理職を説得しなければなりません。
 その後に、回答を誰にしてもらい、どのように集計するかも、ロジスティクスを決めなくてはなりません。
 また集計データをだしたあとには、本人にしっかりとフィードバックを行い、リフレクションをうながし、さらにはフォローアップも行わなくてはなりません。
  
 特に、最後のリフレクションの促進、フォローアップの実施は、360度フィードバックの眼目です。
    
 個人的には、
    
 360度フィードバックは、通知2割、リフレクション8割
  
 だと思っているくらいです。
  
 現状を通知するよりも、その後にリフレクションをしっかりと行い、新たに目標設定を行い、フォローアップをしていくことの方が工数がかかるのですが、この部分がもっとも大切なのです
  
 これらをすべて行うということになると、なかなかハードルが高く、導入に二の足を踏んでしまうところもでてきそうです。
   
 現場からの抵抗も、かなりは予想されます。
「360度から評価する方」はいいかもしれませんが、「360度からよってたかって評価される方」ーすなわち、リーダーやマネジャーの抵抗はかなりのものです。
 とりわけ、これまで全く実施していなかった組織が、これを導入するときには、リーダーやマネジャーからの「フィードバックへの抵抗」に対して、丁寧な説明を行い、解除していく必要があります。
  
 しかしながら、360度フィードバックにとって、さらにさらに、もっと注意しなければならないポイントとは何か、というと、現場のリーダーやマネジャーが「フィードバック不感症」になってしまうことを避けることかなと思います。
   
「フィードバック不感症」とは、1ミリも学術用語ではありません(笑) 「フィードバック不感症」とは、
  
「定期的に360度フィードバックを受け続けたリーダーやマネジャーが、その後にしっかりとしたリフレクションやフォローアップの機会に恵まれず、だんだんと慣れっこになってしまい、フィードバックが刺さらなくなってしまった状態」
  
 をいいます。ま、要するに「いくらフィードバックしても、ハナクソほじってて、刺さらない状態ね」(笑)
    
 あー、360度評価の結果ね、あとで読んどく、読んどく、そこおいといて(あとで、ゴミ箱へ)
  
 360度評価の結果、去年より今年の方が悪かったね、ま、誤差だよね(あとで、ゴミ箱へ)
  
 360度評価の結果、悪かったんだけどさ、ま、メンバーがどうしようもないから、しゃーないよ(あとで、ゴミ箱へ)
  
 このような状況に陥ったリーダーやマネジャーは、どんなにフィードバックをしても、刺さりません。
 もうすっかり「フィードバック慣れ」してしまっていて、自分を変えるつもりはない。これが「フィードバック不感症」というものです。おざなりな360度フィードバックは、組織内に「フィードバック不感症のリーダー」を増やしていくので注意が必要です。
  
 くわばら、くわばら。
   
 ▼
  
 今日はフィードバックを受け続けた人が、その後のリフレクションやフォローアップが不十分であるがゆえに、フィードバックに「慣れっこ」になってしまい、「フィードバック不感症」に陥ってしまうことのリスクを書きました。
  
 皆さんの周囲には、「フィードバック不感症」に罹患しているリーダやマネジャーはいませんか?
 あなたは「フィードバック不感症」に罹患していませんか?
  
 いったん罹患してしまうと、かなりの「荒治療」が必要になってしまうようですよ。どうぞご注意あれ!
  
 今週も、頑張りましょう!
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
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