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2017.1.20 06:41/ Jun

起業家は「あり合わせ料理をつくる」みたいに考える!?

 先だっての東京大学大学院・授業「経営組織論」では、「起業家の非線形的な熟達」研究として、サラスバシーの「エフェクチュエーション」を読みました。
  

  
「エフェクチュエーション」は、分厚い辞書のような本ですが(泣)、前回授業では、研究室OBの関根さんがゲストで参加なさり研究報告をしてくださいました。この場を借りて、関根さんには心より感謝いたします。
  
  ▼
  
 サラスバシーの「エフェクチュエーション」は、「起業家」と、「一般のビジネスパーソン」の思考形式や意志決定は「違う」という仮説にたっておこなわれた研究をまとめた書籍です。
    
 その基礎的知見は、起業家数十人を集め、「ある起業に関するストーリー課題」を彼らに与え、そこで考えたことをシンクアラウド法(Think Aloud法)という方法で言語化してもらうという質的研究法で生み出されています。
   
 これらのプロセスから、詳細は省きますが、サラスバシーが見出した、起業家の思考形式、行動様式の特徴は下記のようなものです。
  
1.「目的」ではなく「手段」からスタートする
2.「期待利益」ではなく「許容可能な損失」を決める
3.「最初の顧客」がパートナーになる
4.「競争」を無視してパートナーを強調する
5.「市場」は「見つけるもの」ではなく「つむぎだす」
6.「未来」は「予測不可能」であると考え、未来を「自ら動かす」
7.「自殺の第四章限(新規の製品を新規の市場に売ること)」を好む
  
 他にも多々ありますが、ここでは、これだけ述べておきます。
  
 上記のような特徴の描写を通して、サラスバシーは、
    
 「ありあわせの食材で料理をつくるのが起業家」
  
 という喩えを持ち出します。この起業家の行動の特徴は、レヴィ・ストロース風にいえば、さしずめ「ブリコラージュ(器用仕事)」ということになるのでしょうか。
  
 起業家の思考形式というのは「野生の思考」なのです。
     
 それに対して、様々な調査を通して、ターゲットを決め、それに応じたコンセプトを決めて、準備して、パーティをひらくのが、さしずめ「ビジネスパーソンの思考形式」ということになります。
 例えば大きな企業につとめるときに、セオリー通りのマーケティングをやることは、こうした「コンセプト料理」をつくることに似ている、と考えられますが、いかがでしょうか。
    
「ありあわせ料理」か、はたまた「コンセプト料理」か?
  
 起業家とビジネスパーソンの「違い」は、大変興味深い対比です。
  
  ▼
  
 今回の授業には、一般の学生にまじって、たまたま研究室を訪れていたプレジデント社の九法さんや、研究室OGの我妻さん、また創業者による一世一代の起業で有名なY社の社員のNさんなどもゲスト参加くださいました。
  
 九法さんは、田原総一郎さんらとともに、若手起業家たちのインタビューをなさった経験を語ってくださいました。そのプロセスは「起業のリアル」という書籍にまとめられています。
  

  
 またY社のNさんは、Y社における起業のプロセスがいかなるものであったかをお話しして頂きました。心より感謝です。
  
 授業は、サラスバシーのような研究知見と、皆さんの経験や事例がまじるよい学びの場になったような気がします。僕自身も、大変勉強になりました。
  
 起業家研究は、一般的なビジネスパーソンの熟達、学習研究に比べると、圧倒的に量が少ないと思います。今後、この研究分野に知見の蓄積が生まれることを期待しています。
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
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