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2016.11.7 06:06/ Jun

前に出すぎるアメリカのリーダー、みんなの前で自分を出せない日本のリーダー!?

 長くリーダーシップ教育に取り組んでおられる立教大学の髙橋俊之先生と、先だって、お打ち合わせさせていただいた際、高橋先生が大変興味深いことをおっしゃっておられました。今日は、このお話をさせていただこうと思うのです。
   
 僕と高橋先生がお話していたのは「日米のリーダーシップ教育の違い」についてです。
 高橋先生、曰く
   
「日本とアメリカでは、リーダーシップ教育の意味や置かれている状況がまったく異なる。
   
アメリカのリーダーシップ教育は、生徒たちが、「わたしが、わたしが、と自分が前に出すぎて、言いたいことを言いたいままに言う現象」をどうするか、ということからはじまる。
   
日本のリーダーシップ教育は、生徒たちが、思っているのに言いたいことがみんなの前で言えない現象をどうするか、ということからはじまる」
    
 ICレコーダーを持っていたわけではないので、正確な記述ではありませんが、高橋先生がおっしゃっていたことは、このようなご趣旨のことでした。
  
 なるほど
 示唆のある仮説に感謝いたします。
 面白いですね。
   
  ▼
   
 アメリカのリーダーシップ教育は「前のめり過ぎる個」への対処が前提になっている
  
 対して
  
 日本のリーダーシップ教育は「自分を出せない個」への対処からはじまる
  
 というのは、非常に興味深い仮説のように思います。
  
 このことは、高橋先生ほどではないにせよ、これまで、僕も、日本の企業や組織、さまざまな場所で、管理職研修やリーダー研修をやらせてもらってきた経験があり、何となくわかるような気がします。
  
 それらの研修の振り返りや感想には、多かれ少なかれ、
  
「今日は、自分の言いたいことがいえなかった」
「自分の思っていることを出せてよかった」
  
 という感想が含まれていることが、ままあるのです。
 まぁ、素朴な感想なのでよいといえばよいのですが・・・。
  
 思っていることを出す
   
 そのような感想文を読む度に、僕は、正直に申し上げますと、深いため息をもらしてしまうことが、ままあります。
  
「そっから、やらなきゃだめなのか・・・」
   
 そう。
 まずは、ここからはじまるのです。
  
  ▼
  
 思っていることを、言う
 考えていることを、出す
  
 それでは、こうしたものごとを、人はいかに身につければ良いのでしょうか。
  
 ここで重要なのは、
  
 思っていることを、言うこと
 考えていることを、出すこと
  
 は「座学」では学べない、ということです。
  
 ややトートロジカルな物言いになることを承知して申し上げますが、
   
 思っていることを、言うことは、「思っていることを他者の前で表現すること」を通してしか学べない
 考えていることを、出すことも、「考えていることを他者の前で表現すること」を通してしか学べない
  
 のだと思います。

 そういう「外化」のための「ステージ」と、その振り返りの場を、いかにもつのか。
 これが決定的に重要であると僕は思います。
  
 こうしたことは、企業や組織に入ってからのさまざまな教育でも対応するのですが、やっぱり、僕は、こうしたことは、もっともっと「前倒し」て、教育機関のうちから、より一層取り組んでいって欲しい、と思います。
 これまでも、さまざまな取り組みがなされているのは承知していますが、さらに、より一層、こうした取り組みが増えることを願いたいのですが、いかがでしょうか?
  
  ▼
  
 今日は、日米のリーダーシップ教育がおかれている状況の違い・・・という仮説から
  
 思っていることを、言うこと
 考えていることを、出すこと
   
 の早期トレーニングについて、話が及びました。
 皆さんはどのようにお考えでしょうか?
  
 今日からまた一週間がはじまります。
 一週間、頑張りましょう。
  
 そして人生はつづく
  
ーーー
 
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