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2023.5.13 09:42/ Jun

わたしの仕事は「答えがないことを教えること」である!?

「先生、答えは、結局、何だったんですか?」
   
  ・
  ・
  ・
  
 4月・5月は教育機関にとって、一年でもっとも忙しい時期です。新入生を迎え、様々なイベントを行い、授業がはじまり、新たな学生を教え始める。5月も中旬になって、ようやく、
  
「どっこら、よっこいしょ」
  
 じゃなかった(笑)
  
「よっこら、どっこいしょ」
  
 とばかりに、1ミリだけ、椅子に腰を落ち着けることができました。
    
  ▼
  
 5月に入り、中原ゼミでは、各学年の活動が、いよいよ本格的にはじまっています。
     
 今年の2年生、3年生は、2つの学年合同で、
   
 最新の人事トピックについて、チームになって、自ら調べ、ワークショップに仕立てて、教えあう
  
 という活動をやっています(4年生は、自らコンサルタントになって、クライアント組織の組織課題を探求しています)。
  
 人事トピックとしては
  
  ・なぜ日本では給与は上がらないのか?
  ・リスキリングはなぜ進まないのか?
  ・増える中途採用者をどう迎えるか?
  
 などを取り上げています。
  
  ▼
  
 せんだって、ある発表を終えた学生(知的好奇心にあふれた学生のおひとり)と話していたとき、学生さんが、とても興味深いことをおっしゃっていました。
  
「先生、答えは、結局、何だったんですか?」
  
 聞けば、先日、グループの成果発表をしたのだけれども、「お題にだされた人事トピックの答えがわからなかった」ので、教えて欲しい、というのです。
  
 僕は、
   
「答えは、実は、わかんないんだよ。何人もの研究者が、その問いについて、たくさんの仮説を出しているけれど、答えはわからない。だって、答えがわかっていたら、社会課題は解決しているでしょう?」
   
 と答えました。
  
 非常にナイスな問いをくれた、この聡明な学生さんに感謝いたします。
  
  ▼
  
 家にかえって、ビールを飲んで、風呂に入りながら、半分溺れそうになりつつ、先ほどの問いをふと考えてみると、大それたようですが、教育機関においては、ともすれば、
   
「ひとつの問いには、正しい答えがひとつある」
  
 ということが前提されて、教育が為されていることも多いなと思いました。
   
 しかし、シャバの世界においては、この考え方は「イリュージョン(幻想)」であることが多いものです。
  
 むしろ
  
「ひとつの問いに対して、答えらしきものが皆目見当つかない」
  
 とか
  
「ひとつの問いに対して、答えらしきものが複数あって、よじれて、ねじれて、途中で枯れてる」
  
 とか
  
「ひとつの問いに対する答えを解いていたら、問いがさらに出てきた」
  
 とか
  
「ひとつの問いと答えが、循環している」
  
 といったようなことが「にちじょうちゃはんじ」、もとい日常茶飯事なのです(笑)
  
 つまり、日常のシャバの世界では、
  
「ひとつの問いには、正しい答えがひとつない」
   
 ことの方が多い。
  
  ▼
   
 だから、僕が学生とともに向き合っていかなければならないのは「答えがない」ということであり、その答えを「ともに探そう」ということなのだと思います。
   
 端的にいえば、
  
 一教師である、わたくしは「答えがないこと」を教えなくてはならない
  
 ということになるのかな、と思います。つまり、「答えがない問いに向き合う学生たちの探究が、よりよいかたちで進むよう、あの手この手をつかって、支援すること」なのだと思うのです。
  
  ▼
  
 5月も末になると、また教育機関にはピークが訪れます。大学では、中間成果発表会が目白押しになってくるのです。
  
「う○こと、どっこいしょ」
  
 じゃなかった
  
「うんとこ、どっこいしょ」
  
 と、ようやく椅子に下ろした腰をあげて、夏まで、学生たちの「答えなき問い」に伴走していきたいと思います。
  
 そして人生はつづく
      
 ーーー
  
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