NAKAHARA-LAB.net

2022.3.30 08:08/ Jun

わたしたち「ワークショップ部」みたいになっちゃってるんですよね!:実践が「先」か、知識は「あと」か!?

「わたしたち、ワークショップ部みたいになっちゃってるんですよね。バタバタ動いて、パワポ作ってばっかりで。ちゃんと知識とか、理論を学びたいです」
     
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 先だって、中原ゼミの学生が、わたしに漏らした印象深い一言です。
    
 中原ゼミは、「自分の学びは、自分たちで対話して、自分たちで決める」をモットーとして、それぞれの学年が、1)何を、2)どのように学び、3)どのような成果を得るかを、対話して決めていきます
     
 過去には、
      
 1)企業のなかで内製化で使ってもらえるようなワークショップを開発する
 2)企業のリーダーシッププログラムの改善点を提案する
     
 などの活動を行ってきました。
    
【ワークショップ資料・無償ダウンロードOK】オンラインOJT、オンラインミーティング、オンラインフィードバック、中途採用者のオンボーディングを支援せよ!:中原ゼミ・ワークショップの祭典「20’s展」が終わった!
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12714
  
【感謝】立教経営・中原ゼミが贈るオンラインワークショップの祭典「20’s展」を無事終えることができました!:DX時代の人材開発・組織開発に貢献できる人材輩出をめざして
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/11865
  
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 今年の学生は、ダイヤモンドグループの皆さんとコラボレーションさせていただき、内定者向けツール「フレッシャーズコース」に準拠したワークショップの開発を行わせていただいております(ダイヤモンド社の皆様、心より感謝いたします)。
   
立教大学・中原ゼミはダイヤモンド社グループのみなさんと「商品」の共同研究・開発にチャレンジしています!:新たな「内定者向けワークショップ」を開発せよ!
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/13536
   
 このように、中原ゼミの学生がふだん取り組んでいるのは、1)何らかのテーマに取り組む、2)ワークショップを開発し、3)お客様にデリバー(お届けすること)することです。
  
 しかし、このように「活動」ばかりやっていると「乾いてきます」
 やってる感覚はあります。成果を残している感もあるんです。
 ただ頭が「乾く」んです。
     
 それが典型的に現れた言葉が、冒頭の言葉でしょう。
      
「わたしたち、ワークショップ部みたいになっちゃってるんですよね。バタバタ動いて、パワポ作ってばっかりで。ちゃんと知識とか、理論を学びたいです」
   
 非常に興味深いですね。
 ゼミを主宰して数年たちますが、学生から、この言葉がでてきたのは、初めてでした。とてもうれしく思いました。
  
 ▼
   
 主に、医学教育などで語られることの多い言葉に、EEP(Early Exposure:アーリーエクスポージャー:早期露出)というものがあります。この言葉は、Late Specialization(レイトスペシャリゼーション:遅い専門)と対になる言葉です。EEPの意味は「学び始めには、しょっぱな、臨床場面・医療現場を体験させる」という意味です。だから「早期露出」
   
 これに対して、ふつーの教育は、たいてい、
    
 知識を積んだ「あと」で、実践を「あと」
  
 になっているはずです。
   
 しかし、「Early Exposure」と「Late Specialization」では、これを「逆転」させます。
     
 つまり、
   
 実践を「さき」にして、知識を「あと」
   
 にするのです。
  
 ・
 ・
 ・

 中原ゼミが「Early Exposure」と「Late Specialization」を目指していたか、と聞かれれば、そりゃ、まったくの「偶然」です。
 学生が自ら考え、自ら行動している、僕は、それを最大限サポートしている、だけですので、たまたまそうなっただけ。ワークショップ部みたいに、ワークショップを開発するのを、ただひたすらに実践してきたことになるでしょう。
     
 しかし、「Early Exposure」は、時に、「Early Exposure」だけに終わる危険性を常にはらんでいます。
    
 すなわち、
    
 専門知を学びたい! Late Specializationするんだ!
    
 という部分につながらないのです。
  
 そういう意味では、
   
「わたしたち、ワークショップ部みたいになっちゃってるんですよね。バタバタ動いて、パワポ作ってばっかりで。ちゃんと知識とか、理論を学びたいです」
  
 という言葉は、極めて健全。うれしいものでした。
 そろそろ理論とか、概念とか、学ぼうか?(笑) 次回のゼミでは、何するか話し合って?
  
  ▼
  
 4月新年度を控え、それぞれの学年が、来年度何をしていくかを話しあっているようです。
 話し合いで大切なことは、以前にもブログで書かせていただきましたが、下記の10のポイントです。
  
 ■話し合いにとって重要な10つのポイント■
            
1.自分たちの未来は、自分たちで決めること。
  そのことを信じること

 (これは、中原の口酸っぱくなるほど言ってます。
  ゼミでは3万回くらい、言い続けている)
   
2.なるべく多くのひとびとが、
  話しあいに参加すること

             
3.オープンに、透明に、議論がなされること。
 それが、ちゃんと記録されること。

    
4.少数派の意見にも耳を傾けること
     
5.そう簡単に「わかりあえないひと」
  がいることを知ること

   
・わかりあえないものが
  どこからわかりあえないか
  その「分岐点」をともに「さぐること」
      
6.相手の主張に「見るべきところ」
  はないかを常にさがしつづけること

    
7.わたしたちには「対立や葛藤」も
 ときには必要なことを知ること。
  腹をくくること。

    
8.それでも、わたしたちは、いつかは必ず
 「意思決定」しなければならないこと

   
 ・決めることや決断することは
  やむをえぬことを知ること
           
9. みんなで決めたことには
 「自発的にしたがうこと」

    
 ・「おれの意見は違うから、
   あとは知ったこっちゃねー」
   にならないこと
    
10.少数派の意見を組み入れた
 「運用」をなんとか探ること。

  時に見直しを行うこと
    
参考・引用文献
宇野重規(2020)「民主主義とは何か」講談社現代新書
平田オリザ(2015)「対話のレッスン 日本人のためのコミュニケーション術」講談社学術文庫
岡田 憲治(2019)なぜリベラルは敗け続けるのか. 集英社インターナショナル
   
この国では、話し合いが、きちんと「教えられていない」のではないか、という疑念!?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/13697
  
 ・
 ・
 ・
  
 ぜひ、着実な話し合いの果てに、豊かな学びをデザインしてください。迷ったら、連絡してください。わたしを最大限、うまく使ってください。
  
 そして人生はつづく
  

 (先日の合宿代替イベントのときの写真です。直前まで感染対策を行い、マスクを一瞬だけとって撮影しました) 
  
 ーーー
         
武蔵野大学・島田徳子先生、ダイヤモンド社の皆さん(広瀬一輝さん、永田正樹さん)との数年にわたる共同研究と、NPO法人日本ブラインドサッカー協会との連携で、スマホで手軽に受検できる「アンコンシャスバイアス測定テスト」と、内製化研修(プレゼンキット)を開発しました!。この問題は、学術的な背景などは、わたしどもが、テスト結果に基づき動画像(ビデオ)で解説させていただきます。ご利用くださいませ! ご自身の組織にもっともフィットしたアンコンシャスバイアス研修をつくることができます。どうぞご利用くださいませ!
    
ダイヤモンド社共同開発「アンコンシャスバイアス研修」内製化ツールキット    
https://jinzai.diamond.ne.jp/items/k00HD0028/
 
ダイヤモンド社が「アンコンシャスバイアス研修」を開発
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000045710.html
    

    
 ーーー
           
新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください! 
      
リリースしました!「チームワーキング研修版」
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/
     
 書籍「チームワーキング」おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。
     
    
 
https://amzn.to/3esCOrW
            
すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!           
       
 ーーー
    
 職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS(オーディ・アトラス)」が多くの職場で使われはじめています。サーベイはもとより、それをいかに「フィードバック」するかに焦点をあてたツールです。ワークショップも開発しております。どうぞご笑覧くださいませ!
   

職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発) 
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
   
  ーーー
       
【好評発売中】1on1のコツをまとめた映像教材を、中原とPHPさんで共同開発しました。上司用、部下用あります。1on1について「同じイメージ」をもつことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス(上司用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
  
経験を成長につなげる1on1(部下用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061   
  
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中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
  
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新刊「フィードバック入門:耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」絶賛発売中、13刷重版出来です!。AMAZON総合13位、1位(マネジメント・人材管理カテゴリー、リーダーシップカテゴリー)を記録!年上の部下、若手のトンガリボーイ、トンガリガール。職場には、多様な人々が集っています。難易度の高い部下育成に悩む管理職向けの新書です。どうぞご笑覧くださいませ。スピンアウト企画にDVD教材「フィードバック入門」、研修、通信教育もあります。こちらもどうぞご笑覧ください。
     

   
『フィードバック入門』スピンアウト企画
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/

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【泣くな!新米管理職!】
  
おかげさまで10刷重版出来。「駆け出しマネジャーの成長論」は、「実務担当者」から「新任管理職」への役割移行をいかに進めるかを論じた本です。「脱線」をふせぎ、成果をだすためには「7つの課題」への挑戦が必要であることを解説しています!全国の管理職研修で用いられています。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
パーソル総合研究所と中原は、このテキストをもとにした「マネジャーになる研修」を開発しました。種部吉泰さんとディスカッションは、非常に楽しいものでした。このコースについても、どうぞご覧くださいませ!
  
「マネジャーになる」 研修:プレイヤーからマネジャーへの移行期支援プログラム
https://rc.persol-group.co.jp/seminar/become-a-manager.html
   
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中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
       
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
     
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
   
仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
 
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
    
ピアトラストお問い合わせ
https://www.peer-trust.com/contact/
   
ピアトラストの効果まとめページ
https://www.peer-trust.com/research/2020/
    
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