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2021.8.6 07:42/ Jun

「あっそ、へー、ほー、はー、ふーん」で1ミリも活用されないサーベイフィードバックとならないための、たったひとつのコツとは何か?

※本日、8月10日から8月22日まで夏期休暇となります。ブログの更新は停止させていただきます。TwitterなどのSNSでは、たまーにつぶやきます。そちらをご覧くださいませ! 
   
みなさん、よき夏休みを!
  
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「あっそ、へー、ほー、はー、ふーん」で1ミリも活用されないサーベイフィードバックとならないための、たったひとつのコツとは何か?
   
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 定期的に、自分の組織・職場・チームに対して、サーベイ(組織調査)を行い、その職場の課題を「見える化」し、対話しつつ、組織の課題解決を行っていくことを「サーベイフィードバック」といいます。多くのサーベイでは、質問紙調査が行われることが一般的です。
  
 HRテックの台頭、コロナ禍によるリモートワークの普及によって、組織調査は、多くの企業・組織で広がりを見せています。
  
 この手法自体は、1960年代ー1970年代から行われている古典的手法ですが、現在の日本では、第二の流行期に入っている、といっても過言ではないと思います。
  
 サーベイフィードバックは、従来は「紙」の質問紙調査をまき、それを集計し、分析するといった、莫大なコストがともなうものだったのでした。
  
 しかし、ITの普及は、それらのコストを格段に減らしました。
 その気になれば、週の頭に実施し、週末には結果をフィードバックすることが可能になっている、のだと思います。
  
 イメージできないものは、マネージできない
  
 とは、いにしえからある名言です。適切にマネジメントが行われるためには、自分の組織・職場・チームの「現状」や、時間的推移にまつわる変化が「見える化(イメージ)」されていなければならない。
  
 自分の組織の「見える化」を行う試みは、かくして、広がりを見せていると実感します。
  
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 しかし、この60年で、サーベイフィードバックにまつわるコストは、格段に減少しましたが、「サーベイフィードバックにつきまとう課題」はまったく解決されないまま残されているようにも感じます。
  
 最大の課題は「フィードバックの機能不全」です。
  
 要するに、サーベイを行ったはいいものの、その結果が、現場にめっこりとフィードバック(通知)されないケースがあとをたたないのです。
   
 具体的には、下記のような病が、日本全国8万9000カ所で生まれているのです。みなさんの会社・組織ではいかがでしょうか?
  
1.データをとったはいいものの放置病
 ・データは取得したが、人事・経営者がみて終わり
  当然、ノーアクション!
  
2.イントラ回覧・無風病
 ・調査結果は、イントラにあげられて終わり   
  見といてね、とは言われるものの、誰も見ない。
  当然、ノーアクション!
  
3.管理職の引き出しのなかにしまわれ病
 ・データはフィードバックされるものの
  めんどくさいので、管理職が机の奥底に
  しまって終わり。ノーアクション!
  
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 サーベイフィードバックの眼目は「サーベイを行うこと」ではなく、むしろ「現場に結果をフィードバック」を行うことです。
   
 だってそうですよね。
    
 サーベイ君が、テクテク歩き出して、現場を変えてくれるわけではないのです。サーベイ君の数字が、ヒョコヒョコ歩いて、現場を改善してくれるわけではありません。
   
 現場を改善し、変えることができるのは、「現場にいるひとびと」であり、彼らが、対話し、結果を意味づけ、アクションをとったときだけです。
    
 当然のことながら、フィードバックが機能不全に陥っている組織では、ねらっている効果は得られません。
   
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 それと、もうひとつ。
 わたしが、最近問題視しているのが、サーベイ結果をかえす「単位」が「鬼・でかすぎる」ケースが散見することです。
  
 つまり、サーベイ結果を現場にかえすのだけれども、その集計単位が「バカでかすぎる」のです。
  
 たとえば「N=500(回答者500名)くらいの組織サイズ」で集計し、かえすケースが散見されます。
 回答者が500名いる組織のなかには、当然、管理職は本部長1名の下に、部長が3名、課長が12名といったケースもあります。そこには職場が10以上含まれています。
  
 ここでおこる問題は明確です。
  
 要するに、
  
1.集計単位が「鬼・でかすぎる」ので、
  
2.現場で働くひとびと(回答者・管理職)の生活世界から「遠い」データを返してしまい、
  
3.しかも、いい職場も、ドサイアクな職場も、あるので、結局、データが「丸まって」しまっていて、
  
4.なんかピンとこない、やる気が鬼・おきない。「あっそ、へー、ほー、はー、ふーん」で終わる、サーベイフィードバックになってしまうのです
  
 しかも、そこには
  
5.管理職も複数含まれているので「責任所在があいまい」で
  
6.結局、誰も自分事だとは考えず、
  
7.結局、ノーリアクション!
  
 といったことになりがちなのです。
  
 もちろん、時には集計単位を大きくして、大きな組織単位の課題を明らかにしたい、というケースもあるでしょうから、一概に、これがNGというわけではありません。
  
 しかし、サーベイフィードバックで求められることは、
  
1.自分たちの生活世界に「近い」データを用いて
  
2.同じ生活世界で「ともに仕事をしているひとびと」が
  
3.結果を対話しつつ
  
4.自分たちの生活世界を自ら改善すること
   
 です。
  
 そのためには、集計単位を彼らが、ふだん生活している世界、すなわち「半径3メートル」から「半径5メートル」の、いわゆる「職場」にまでメッシュを細かくしてあげなければなりません。先ほどのケースでいえば、課長が12名いるのですが、その単位(職場単位)で、サーベイ結果をフィードバックするべきだと思います。
  
 もちろん、メッシュが細かすぎてもNGです。
  
 たとえば、回答者はN=3しかいないのに、回答結果が悪かったとします。そうなると、「誰だ1をつけたのは?コルァ」という会話が、すぐに起こります。
  
 経験的には、N=5以上で集計するのが安全かと思います。
 あくまで経験値ですが。
  
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 今日はサーベイフィードバックのお話をさせていただきました。せっかくコストをかけて、サーベイフィードバックを実践するのですから、現場・経営にインパクトを残せるサーベイにしたいものです。
  
 「あっそ、へー、ほー、はー、ふーん」で終わるサーベイフィードバックをさけるためには、サーベイフィードバックは「遠すぎても、近すぎても」いけない。適切な組織規模で集計しなければならない、ということです。
  
 そして人生はつづく
  
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