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2021.7.13 08:21/ Jun

よい研究とは「6 : 3: 1」で生まれる!? :創造を支える3つの要素!?

 よい研究とは「6:3:1」によって生まれる!?
     
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 研究系の大学院・博士課程では、学生(研究者の卵)が、指導教員の指導を受けながら、自分の研究を達成します。一連の知的達成を通じて、学位を取得し、彼らは大学院を巣立っていきます。
     
 及ばずながらですが、不肖・中原も、過去15年ほどにわたり、大学院での研究指導を行ってきました。
 あくまで、わたしの分野、わたしの事例ということで、以下の話を聞いていただきたいのですが(ご興味があるならば・・・ですが)、その経験から、わたしには「確信めいたもの(持論)」があります。
   
 それは「よい研究とは、何によって生まれるか」ということにまつわる確信です。
  
 端的に申し上げますと、個人的には、
   
 6:3:1
 
 かなと思っています。
  
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 ここで「6:3:1」とは
  
 よい研究とは
  
 本人の執念:6
 ヘルシーなゼミ:3
 教員の力:1
  
 で生まれる
  
 という僕の持論です
  
 今日は、これを論じてみましょう。
  
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 まず「本人の執念:6」です。
  
 研究には「本人の執念」がどうしても必要です。ここで最大のポイントは「頭がよいこと」でもなければ「偏差値が高いこと」でもありません。
 ノーベル賞やフィールズ賞をとるような研究なら話は別かもしれませんが(分野にもよるでしょう)、(少なくともわたしの領域で)大学院の博士課程レベルの研究で、必要なのは「執念」です。
  
 執念とは、要するに
  
「本人が、どれだけ自分の研究に、時間をかけて、考えぬいたか?」
   
 です。
   
 くどいようですが、「アタマの良さ」は関係ありません(とわたしは思います)。偏差値も、それほど関係ありません。いわゆる、偏差値の高い大学の出身者が、よい研究ができる、というわけではありません。必要なのは「執念」です。
  
「執念」を発揮するためには「勤勉性」も必要です。また、既存の言説を「仮想敵」として論陣をはるような「攻撃性」も、一部は必要です。いずれにしても、「時間をかけて、どれだけ考えぬいたか」だと僕は思います。
  
  ▼
  
 つぎに「ヘルシーなゼミ:3」です。
   
 ゼミとは、指導教員を「ご縁」とする学生の集まりです。ゼミには、議論があり、情報は、そこに集まります。ゼミは「研究の中心」だと、わたしは思います。
    
 しかし、このゼミも、野放しで「放置」しておくと、あまり「ヘルシーではない常態=地獄絵図」になったりすることもあります。学生同士に相互信頼が欠如したり、競争意識が生まれたり、無用な葛藤などが生まれることもあります。そうなると、それこそ「議論」の生まれるような素地すら欠けていきます。
   
 一方「ヘルシーなゼミ」には、心理的安全性が確保されます。お互いがお互いの研究を高め合うような「相互貢献性」が生まれます。そこには議論や協働が生まれるのです。
 歴史がたてば、ゼミには、「上のひとが下を育て、下が、さらに下を育てる」といったような「屋根瓦式の人材育成」が生まれることもあります。
  
 研究が進展するのは、すこし先輩、同期の研究者たちから「よい問いかけ」や「フィードバック」などをもらえるときです。ゼミ内で「共通の関心」がうまれたら、勉強会などがひらかれます。
  
 学生は、ゼミで切磋琢磨し、育っていきます。
  
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 そして最後に「1:教員」です。
  
 大学院では、教員(わたし)は、学生の抱えている問題を、同じ目線で「ともに考えます」。なぜなら、学生がといている課題は、いまだ「学問の世界で、ケリがついていないこと」であり、教員ですらも「答えがわからない」からです。
  
 分野にもよるのかもしれませんが、わたしは「伴走」するイメージで、学生と一緒に考えているような気持ちで仕事をしています。「指導」というよりは、「伴走」ですね。
  
 教員の働きかけの影響力が「1」というのは少ないような気もします。考えてみれば「ゼミ3」を「ヘルシーにたもつこと」にも、教員は寄与しています。しかし、やはり「ゼミ3」を支えているのは、そこに集う学生のみなさんの切磋琢磨力です。
  
 僕の研究室は、幸い、この「ゼミ3」のパワーに恵まれてきました。もう各所で、さまざまに活躍している、元・学生(もう、みなさん、立派な先生です!)には、心より感謝しています。
  
  ▼
   
 今日は、大学院で「よい研究」が生まれるためには、何が必要かを考えてみました。この問題を考えるとき、わたしはいつも「ゼミ3」のパワーを考えてしまいます。
 
 といいますのは、大学院は研究の場です。本人が頑張るのは「所与」、そして教員が頑張るのも「所与」です。しかし、それを支えるのは、ちょうどその「中間」にある「ゼミ3」のパワーである気がするのです。
  
 この「ゼミ3」のパワーを思うとき、かつて、糸井重里さんがおっしゃっていた言葉を思い出します。
  
 糸井さんは、かつて「魚を飼うとは、直接、魚を愛でることではなく、魚の住む住環境(=水)をクリアにすることだ」という名言を残しておられます。
  
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「魚を飼うということは、水を飼うということである」。とにかく、健康な水をキープできていれば、魚は元気に生き続ける。魚を飼っている、なんて思わないほうがいい。水を飼っていると考えたほうがうまくいく。
  
 あなたのいる環境は、元気ですか?
  
(糸井重里「今日のダーリン」2004年4月23日より)
   
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 あなたの周囲には、よい研究が生まれる「6:3:1」がありますか?
  
 そして人生はつづく

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