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2021.4.9 08:18/ Jun

ひきあう孤独の力のなかでの「詩人の闘い」とは何か?:尾崎真理子「詩人なんて呼ばれて」書評

 詩人・谷川俊太郎さんの人生をつづった書籍、「詩人なんて呼ばれて」(尾崎真理子著)を読み終えました。
  
 尾崎さんは、この本を編むにあたり、1)谷川さんに対して20回弱にわたる聞き取り調査を行い、かつ、2)谷川さんの人生を記す資料と作品を渉猟しました。
   
 谷川さんの人生と膨大な仕事を、ひとつのテクストとして編み上げるのは、困難を極める仕事であったと思います。著者の猛烈な知的作業に心からのリスペクトを贈りたいと思います。
   

  
 谷川俊太郎さんといえば、日本でもっとも有名な詩人のひとりです。

 しかし、谷川さんが、詩の業界において、日本の、伝統的な、守旧派と闘ってきたことは、あまり知られていないのではないでしょうか。
 本書を読んで印象に残ったことは多々ありますが、個人的には、このことが一番意外でした。
  
  ▼
  
 若い頃、谷川さんは、旧態依然としていた日本の詩壇に対して、下記のような挑戦状を叩きつけます。下記いくつかのセンテンスを同書より引用します。
  

「人生は日々のものである。そして人生が日々のものである限り、詩もまた、日々のものである。日々使い捨てられることによってのみ、詩は自らを完成しうる」
  
「詩人の怠惰を攻めたい。1956年の日本で、実際に詩を書いて食っている詩人はいない。 / 我々は、詩が売れるように努力するべきである」

  
 その舌鋒は鋭く、さらに続きます。
   

「詩人は積極的に闘わなければならないのだ。詩人はいかにあざ笑われうようとも、詩を主張しなければならない。 / 世間が無視するからおとなしくひっこんで、現代詩は貧困か、と議論している。みみっちい限りである。わたしは現代詩は貧困だと、声を大にしていいたい。
  
詩人はもっと貧困である。経済的にはもちろんのこと、精神的にも貧困なのだ。詩を売り込もういう工夫もしないで、あきもせず、詩人の社会性とは何かなどと空論に花を咲かせる始末である」

  
  ・
  ・
  ・
  
 嗚呼、似ている。

 この「詩」の字を、「他の業界」にかえてみても、そっくりそのまま、ここで言われている内容があてまってしまう領域は、たくさんあると思います。内容が貧困であるくせに、「空論」に花を咲かせている領域は・・・。

 当然のことですが、当時の詩壇から谷川さんは「宇宙人」というレッテルをはられることになりますが・・・。
  
 その一方、谷川さんは、日々の暮らしの中から、光るセンスで詩をつむいでいきます。
  

「詩の高さは、一瞬の閃光としてくる。それはあまりに速やかに消え去る。しかし、永遠は、常に閃光のなかにある。言葉が、その閃光を捉える。とらえたときに、その閃光はすでに消えている」

  
 この文章を読み、かつて作家であり東京工業大学教授の若松英輔さんが、NHKの番組で、おっしゃっていた2つのことを、思い出しました。
  
 若松さんによれば、
  
1)詩とはわたしたちの「生活のさまざまなところに潜んでいる」もの

 なのだそうです。

 そして
  
2)詩とは「言葉のちからを借りて、容易に言葉に収まらない何かを世に送り出そうとするもの」
  
 だと喝破します。

 そうです。
  
 詩とは「言葉にならないことを、言葉にすること」
  
 であり
    
 詩とは「一瞬の閃光」
    
 なのですね。
  
  ・
  ・
  ・
  
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
 /  
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした

  
(二十億光年の孤独)
  
  ・
  ・
  ・
  
ねたね
うたたね
ゆめみたね
ひだね
きえたね
しゃくのたね
  
またね
あしたね
つきよだね
なたね
まいたね
めがでたね

  
(ことばあそびうた)
  
 ・
 ・
 ・

 谷川さんのとらえた「一瞬の閃光」をもう一度読み直したくなる良著です。 

 そして人生はつづく
 ネリリ、キリリ、ハララに満ちた人生を! 

 

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