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2021.3.25 08:14/ Jun

人材開発・組織開発の世界を襲った「ここ最近20年の変化」とは何か?

 人材開発・組織開発の世界は「変わり続けている」!?
  
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 ここ20年くらいのことを思い起こしますと、さして変化の感じられない人材開発・組織開発の世界にも、数年ごとに大きな変化が生まれているような気がします。
  
 20年ほど前、人材開発は、今よりも、もっともっと「わたしの教育論」が跳梁跋扈する世界でした。仕事の現場で業務経験を積んだひとびとが、人材開発の世界にきて、「わたしの教育論」で仕事を為す。
    
「わたしの教育論」も時に重要で、かつ、パワフルなのですが、時によっては論理性が失われたり、偏りが生じることがありました。
  
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 これが大きく変わりかけたのが、2000年代中盤から後半だと思います。「わたしの教育論」の跳梁跋扈する世界に「理論(セオリー)」というものが入ってきました。
  
 理論(セオリー)とは、数ある現象をまとめて説明できる、抽象化された一般原理です。こうした理論が導入されることで、人材開発の世界に「論理性」が導入され、かつ、大きな「偏り」が減ることになった気がいたします。人材開発の世界から、「派手ゴケ」や「大きな損失」をもたらすような極端な実践が、このあたりから減り始めました。
    
 さらに大きく変わり始めたのが2015年あたりからです。これまでの「理論」に加え、このあたりから「データ」というものが導入され始めました。このあたりから、研修やセミナーをご依頼されるときに、
    
「先生、うちの会社の、先日の従業員調査の結果が、これなんですけど・・・・ちょっと・・・・あたりに問題があるんですよね」
   
 といった語りが、すこしずつ聞かれるようになりはじめました。「データ」の導入は、「その会社にフィットした実践」と「実践の事前・事後の比較による、効果の実感」を可能にします。
  
「理論」に加えて「データ」が導入されることで、人材開発の世界は「その会社にもっともフィットした施策を、論理的に実施し、その事前・事後の比較を他者にもわかるかたちで、アカウントすること」ができるようになってきました。
  
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 こうして考えてみますと、さして「変化がない」ように感じられる人材開発の世界も、確実に変化が起きているような気がします。
   
 それ以外にも、2020年には「コロナ禍」によって人材開発・組織開発の世界には「デジタル化の波」が押し寄せました。
 研修や対話の機会は、オンラインに置き換えられ、様々な課題はありつつも、「そこそこイケちゃうこと」がわかってきました。
   
 このデジタル化の波は「猛烈」です。個人的には「ここ20年で起きた変化をすべて足した変化量」よりも「2020年単年の変化量」の方が大きかったような気がします。
     
 かくして、いまや人材開発も組織開発も、ITなしでは成立しない営みになってきました。
  
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 それでは、次に来るのは何か。
     
 この問いに対する答えは様々ですが、わたし個人としては、残されたもののひとつに、「人材開発・組織開発する主体」、すなわち「人材開発・組織開発のプロフェッショナルの育成」があると思っています。
  
 理論を手にして
 データも手にして
 ITという武器に手にした人材開発の世界
  
 しかし、それを取り扱う主体、プロフェッショナルの育成を、しっかり行っていくことが非常に重要だと思っています。
  
 人材開発や組織開発のプロフェッショナルの世界では「Use of Self(ユース・オブ・セルフ)」という概念があります。
  
「Use of Self」とは、現場に自己を投企し、自己をアンテナのようにしつつ、「今、ここ」で起きていることを察知すること。もうひとつは「自己の感情や解釈」を用いながら、対象者に働きかけることで、対象者に「学び」や「気づき」をもたらすこと。
  
 こうした働きかけを可能にする「人材開発や組織開発のプロフェッショナル」の育成の問題を理論的にしっかりと位置づけ、質の高いプログラムで育成する。これこそが、次に残された、しかしもっとも難易度の高い課題であると思っています。
  
 僕は、今、45歳になります。
 定年が仮に65歳だとして、残りは20年を切りました。
  
 25歳で大学の助手になってここまでの20年間は「あっという間」でした。それはたとえて見ると「1年1秒」のよう。すでに歩んできた「20秒」の「早さ」を思うとき、今から65歳までの20秒も「瞬きをする間もなく」終わってしまうのだと思います。
   
 必要だと思うものを見定めて
 やるべきことをやるだけです。
  
 そして人生はつづく
  
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