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2021.3.24 08:05/ Jun

「サーベイやりっぱなし病」は「サーベイ無気力症候群」と「職場ブラックボックス病」を併発する!?:「サーベイのぞき見症候群」と「うちもとりあえずやっとくか病」にも要注意!

「変化を生み出さないサーベイフィードバック」なら、いっそ、やらない方がマシ
  
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 せんだっては、コーンフェリー株式会社さん主宰のセミナーで、「サーベイ(組織調査)をつかって、いかに組織開発をするか」というオンライン講演をさせていただきました。
  
 ありがたいことに、オンライン講演には、450名ほどの方々にご参加いただきました。ご参加いただいた皆様、コーンフェリー株式会社の特に岡部雅仁さんには大変お世話になりました。心より感謝いたします。
  
 わたしがオンライン講演をさせていただくときは、聴衆の皆様に、「チャットでの講演への参加」をお願いします。「頭に思いついたことを何でもいいのでチャットに入力してください」とお願いさせていただきます。
  
 チャットに寄せられた様々な意見を、ラジオのDJのようにピックアップしながら、インタラクティブに講演を進めていくことにしています。昨日も数百にのぼるチャットメッセージをいただきました。心より感謝いたします。
  
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 さて先日の講演で、僕が、くどいほど繰り返したのは、
  
「変化を生み出さないサーベイフィードバック」なら、いっそ、やらない方がいい
  
 ということであり
  
「変化を生み出すためには、経営者、マネジャー間、ないしは職場内にメンバーなど、様々な場所で「サーベイ結果に関する対話」を行うことだ」
  
 ということでした。
  
 まことに残念なことに、シャバでは、サーベイが「実施されるだけ」になっており、現場の変化、仕事の変化に結び付けられていない事例も、まま、あるようです。
  
 サーベイ結果が「経営者」だけに報告されて終わる
  
 サーベイ結果が「あとは勝手にみといてね」というかたちで、管理職だけが、やろうと思えば、閲覧可能な状態にしかならない
  
 サーベイ結果が人事部内で回覧可能にしかなっていない
  
 といったケースは、これに該当します。つまり、現場や仕事のもっとも遠いところでしか、結果が共有されていないので、現場に変化がもたらされない状況が生まれているということです。
  
 この状況は「サーベイやりっぱなし病」とでも形容できる状況です。いったん、サーベイやりっぱなし病に罹患してしまうと、サーベイ結果が現場にかえらず、関係者間での対話を促せないばかりか、かつ、現場の変化に結び付けられない状態が生まれます。
  
 さらに問題は、こうした状態、すなわち「サーベイやりっぱなし病」を放置しておくと、現場でさらに深刻な合併症を生み出してしまうということです。
   
 そのひとつが「サーベイ無気力症候群」です。
 どんなに時間をかけても、どんなに真面目にサーベイに答えても、現場や仕事に何の変化も生み出せていないとき、現場のメンバーは、やがて「無気力」を学習しはじめます。つまりは「学習性無気力」の状態に置かれてしまうのです。
  
「学習性無気力」の状態に陥った現場のメンバーは、もう二度と、サーベイには真面目には答えようとしません。だって、答えても、何をしても、自分の仕事も現場も変わらないんだから。
  
 そうなると、誰もサーベイに真面目に答えませんので、おそらくサーベイという手段で「現場で起こっていること」を経営が把握しようとしても、それが不可能になります。それが、さらに深刻な病である「職場ブラックボックス症候群」です。
  
 このように、サーベイやりっぱなし病は「サーベイ無気力症候群」や「職場ブラックボックス病」というさらに重篤な病と合併し、深刻な被害を組織にもたらします。
  
 このような現状を踏まえ、わたしは昨日の講演で
  
 現場の変化を生み出す気がないのなら、サーベイはしない方がいい
 
 対話を促す気が無いのなら、サーベイなんか辞めた方がいい
  
 と申し上げました。ちょっと強い物言いかもしれませんが、本当にそう思います。
 サーベイなんかやらずに、仕事に専念した方が、よっぽど儲かります。
  
 また、最近、にわかに流行している病気に、人事や経営者が「現場がわからない」ので「のぞき見趣味」で、サーベイを安易に行ってしまい、それをフィードバックしない病を、「サーベイのぞき見症候群」といったりもします。
 あるいは、こんな病気もあります。「最近、組織調査が流行だし、競合他社もやっている」から「うちもとりあえずやっとおくか」というかたちで、組織調査に手をだす安易な病を「うちもとりあえずやっとくか病」といいます。
  
 こうした症候群や病気に罹患することをまずは避け、必ず、やるのであればフィードバックを行うことが重要です。
 
 ちなみに・・・もしこれらの病気にかかっているかどうかを知りたければ、下記の質問項目1問をサーベイに入れてみて、現場の皆さんに答えてもらってください。
 
Q. 前回行った組織調査の結果は現場で活かされ、「変化」が生み出していた
 
 この項目に対して、ネガティブな回答が増えるようであれば、かなり要注意だとわたしは思います。
 
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あなたの会社の経営者・人事部は「サーベイのぞき見症候群」「うちもとりあえずやっとくか病」に罹患していませんか?
  
あなたの会社は「サーベイやりっぱなし病」にかかっていませんか?
  
あなたの会社は「サーベイ無気力病」と「職場ブラックボックス症候群」の合併症に苦しんでいませんか?
  
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 サーベイしたなら、フィードバックせよ!
 そして人生はつづく
 
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