NAKAHARA-LAB.net

2021.2.25 07:33/ Jun

研究アウトプットの裏側は「超絶アナログ付箋紙作業」!?:並べて、動かし、眺めて見つかる「一筋のロジック」!?

 ここ数ヶ月、僕が著した、ないしは共著・監修した、いくつかの書籍が刊行されます(されています)。
  
  
   
  
  
 それぞれの作品の内容は、また機会を設けて個別にご紹介させていただきたいと思っています(なかには増補改訂版もございます)。
 そのすべてが、わたしひとりの独力で達成されたというよりは(たとえ単著であったとしても)、多くの人々の支えによって共同達成されたものです。
 共著者のみなさま、編集者のみなさま、関係者のみなさまには、この場を借りて、深く心より感謝いたします。
 
 上記のほかにも、現在、編集中・校正中の本もございます。
 たとえば「中小企業の人材開発」(東京大学出版会)などがそうでしょう。現在、最終の校正作業を行っているので、5月あたりには、書店にならぶものと思われます。
  
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 ところで、せんだって研究室の掃除を久方ぶりにした際に、書籍の企画書やら、関連書類が、わんさか、わんさかとでてきました。
 とりわけ目をひいたのは、ある書籍を書こうと思いたち、先行研究を読み込み、付箋で整理していたときの書類です。
  
 日付を見ると、今から6年前のことでした。6年前か・・・まだ、そのとき、僕は30代だったように思います。
  
 ああ、あのとき、こんなことを考えていたんだ・・・
  
 研究室で、書類を見ながら、僕はしばらく時間を過ごしました。それにしても、Dx時代に、我ながら「超絶アナログな文献研究」のプロセスです。 でも、この作業ばっかりは、僕の場合、どうしてもデジタル化できないんですよね。先行研究の知見を①つひとつの付箋紙に書き写し、それを眺め、整理して、秩序立てていき、ロジックをつくる。超絶アナログ作業は、数週間、続く場合もあります。そうして、一筋のロジックが見つかります。
   
 
  
 だいたいひとつの書籍を編むまでには、途方もない時間がかかります。長いものでは5年ー7年。短いものでも、2年くらいではないでしょうか。平均では3年あたりかなと思います。
  
 この記事の冒頭のように、パンパカパーンと書籍を並べて表示してしまいますと、わたしは、多くの作品を連続で「ドンドコドンドコ」と「ベルトコンベアー」のように生み出しているイメージが喚起されるかもしれません。しかし、実態は、まったく異なります。
   
 ひとつひとつの書籍において「アヒルが水面下で水をかくような地道な作業」を繰り返し、付箋紙をつかって、先行研究を、あーでもない、こーでもないと言って整理して、編集者・関係者と議論し、そこでも、あーだ、こーだーいいながら、ようやく「かたち」になります。
  
 現象を説明する「よい概念」が浮かばず、数ヶ月、探究が頓挫することもあります。なかには、もうダメかも、と思う瞬間もあります。
   
 あるものは数年単位で遅れ、あるものは順調に進み、ある書籍は暗礁に乗り上げます。結果として、その刊行時期は、たまたま同時期になる場合もあります。
  
 ひとつの作品が世に出るまでには、それくらいの時間がかかるのです。
 そして、そのプロセスは、猛烈に地味で、紆余曲折にあふれています。
     
  ▼
  
 興味深いのは、ひとつの書籍を書き終わったその日は、「もう本は書くまい」と思うことです。あんなシンドイ思いをするのは、そろそろやめたい。原稿を書き終えたその日だけは、そう思います。
  
 しかし、数日たつと、すぐに「喉元すぎれば」の状態になります。
  
 あっ、あの問題を積み残してしまった
 やばい、あのことを論じておくべきだった
 いやー、ここに新たな可能性がありそうだ
  
 そんな思いが頭をもたげ、また、付箋紙を取り出して、超絶アナログ作業がはじまります。我が人生は、この繰り返しです。
   
 この繰り返しがいつ終わるかは、わかりません。しかし、知力、気力、体力が続く限り、多くの知見を社会に「お届け」したいと願っています。 僕は、それしかできない人間ですので。
    
 書籍が、多くの人々の手に「届き」、実りある対話、力強い研究や実践を生み出す種を提供できたとしたら、望外の喜びです。
  
 そして人生はつづく
   
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女性の視点で見直す研修 トランジション サポート プログラム
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対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
   
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研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
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中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
      
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。利用人数20名までは「無料」だそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
    
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
   
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