NAKAHARA-LAB.net

2021.2.4 08:06/ Jun

テレワークで曖昧になる「時間の境界」!? : 喫緊の課題になりつつある「長時間労働問題への対応」

 テレワークになって、長時間労働に陥っているひとが、チラホラでてきている
 自ら「境界」を再編する力が必要だ・・・
   
  ・
  ・
  ・
  
「テレワークとは何か?」
  
 という問いに対して、一般的な答えは「インターネットなどを用いて、遠隔地で仕事をすること」ということになるのでしょう。
  
 それはそれで全く問題ないとも思うのですが、わたしの視点でいくと、そこにどうしても「境界(boundary)」という概念を導入したくなってしまいます。テレワークの定義に、その仕事形態を遂行するうえで必要になる能力、スキルを、ここに重ねてしまいたくなってしまいます。
   
 僕の定義でいえば、テレワークとは
  
「インターネットなどを用いて、遠隔地から仕事をすることであり、自ら「境界」を再編し続けながら業務を成し遂げる環境である」
  
 ということになります。
  
 今日は、このことを考えてみましょう。
  
  ▼
  
 まず、会社にテレワークが導入されることになりますと、お互いに離れたところで仕事をしますので、時間を管理してくれるひとや、毎日アタリマエのように顔をあわせて仕事をしているような環境が、なかなか得られなくなってしまいます。
  
 かつてなら、ひとびとの周囲にアタリマエのように存在していた「時間という境界」がなくなり、また、「ひとびとのあいだをつないでいた境界」も、失われがちです。
  
 かつてなら、こうした「境界」は、会社側・管理者側・お世話をする側が、設定をしていました。会社は時間に境界をつくり、「労働時間」を設定していました。また、組織は空間に境界をつくり、そこを「オフィス」として、人をそこに入れ込んできたのです。
    
 しかし、お互いに離れて自律的に仕事をしていくということは、これらの設定が、ある程度、働く側に委ねられることになります。
   
 要するに、ひとびとには、仕事を遂行するうえで
     
 自分で「働く時間」の境界をつくりだすこと
 自ら「ひとびとをつなぐ境界」を再編すること
    
 が求められるようになるのです。
     
 しかし、これまでそうした境界の設定を行ってこなかった個人には、このことに問題を抱える人も少なくありません。
    
 最近、企業の方とお話ししていて、よく伺うのは、
    
 テレワークになって、長時間労働が増えた職場が多い
   
 テレワークになって、他部門との連携がうまくいかず、仕事が進められない人がでてきている
    
 といった内容です。これは、抽象的に考えますと、「自ら境界を作り出すこと」の困難といっても、よいのかな、と思ってしまいます。
 畢竟、「自由」というものは「制約」がありません。しかし「制約がないところ」には、自らを律して「制約」をつくりだす意志、境界を区切る意志が必要になります。

 
 結局、
  
 自分の仕事の境界を、自分でつくること
  
 徹底したセルフモニタリングのスキルが、今、求められているような気がします。皆さんの会社では、いかがでしょうか?
  
  ▼
  
 今日は「境界」という概念を用いながら、テレワークについて考えてみました。一部の会社においては、とりわけ「テレワークで悪化する長時間労働の問題」は深刻になりつつあるようです。メンタルダウン、健康被害などが進む前に、早急な対応が必要になっているように思います。
  
 あなたの会社の社員は、自ら境界を再編しながら、仕事を遂行できますか?
 あなたは、自ら境界を再編しながら、仕事を遂行できていますか?
    
 そして人生はつづく
  
  ーーー
   
【新刊予約発売中】
新刊「学校がとまった日」の特設サイト完成!&予約販売開始中! 緊急事態宣言・全国一斉休校で「学びを継続できた子どもの特徴」は?学びをとめないために学校にできることは?:書籍の内容が概観できます!どうぞご覧くださいませ!
  

新刊「学校がとまった日」の特設サイト
http://toyokan-publishing.jp/stop/index.html
  
新刊「学校がとまった日」予約販売開始中(AMAZON)

   
  ーーー
     
【好評発売中】1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を中原とPHP研究所さんとで開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
   
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
   
  ーーー
  
ラーニングエージェンシーさんと中原研究室の共同研究により開発した「女性の視点で見直す人材育成:トランジションサポートプログラム」のご提供がはじまっています。ライフステージに応じて、役割移行を支援する、きめ細かい研修となっています。共同研究の成果は書籍「女性の視点で見直す人材育成」としても刊行されています。
  
女性の視点で見直す研修 トランジション サポート プログラム
https://www.learningagency.co.jp/service/transition/
 

 
 ーーー
    
。AMAZONの各カテゴリーで1位記録!(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。
長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
    

対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
   
  ーーー
   
「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
    
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://jinzai.diamond.ne.jp/seminar/SEMINAR0495/
  
 ーーー
   

     
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

    
 ーーー
  
中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
      
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。利用人数20名までは「無料」だそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
    
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
   
 ーーー 
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約31000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

褒め方ひとつ間違えると「怯える、いい子」を量産してしまうメカニズムとは何か?

2024.4.24 08:22/ Jun

褒め方ひとつ間違えると「怯える、いい子」を量産してしまうメカニズムとは何か?

2024.4.17 23:54/ Jun

給特法、および、それにまつわる中教審審議に対する私見(中原淳)

たかがタイトル、されどタイトル!?: 研究タイトルを「一字一句」正確に書いてきてね!

2024.4.17 08:17/ Jun

たかがタイトル、されどタイトル!?: 研究タイトルを「一字一句」正確に書いてきてね!

2024.4.15 08:05/ Jun

「タイパ重視の時代」だからこそ「時代遅れ!?のラーニング」を楽しむ!

2024.4.15 07:29/ Jun

【参加費無料】リーダー育英塾2024募集開始!:特色ある学校づくり+持続可能な学校づくりを進めたいあなたへ!