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2020.8.5 09:04/ Jun

新型コロナウィルスは「優秀なひと」の「定義」を書き換えている!? : 己の「学習能力」を駆使せよ、そして「適応」せよ!

新型コロナウィルスは「優秀なひと」の定義を書き換えている!?
   
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 せんだって、朝日新聞さんの「今こそ聞きたいDX」という特集で、記者の真海喬生さんにインタビューをいただき、「テレワークで浮かぶ世代間ギャップ 生き抜く秘訣を聞く」ということについて、ゆるゆると対談させていただきました(真海さん、対話の機会に感謝します!)。
    
 記事の詳細は、ぜひ、下記のページをご覧いただくとして、僕が、もっとも印象的だった言葉は、冒頭部分にあります。真海さんが、ある経営者の方に行っていただいたインタビュー部分です。
  
 
 
若手に追い風、中高年は…テレワークで浮かぶ世代間ギャップ
https://news.yahoo.co.jp/articles/a7ec6a407fc492825c4bf24c6f93fb35ff4c4ade
  
 すこし長くなりますが、そのまま引用をしてみましょう。
  
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 記事に曰く
      

 先日取材した、通訳を企業などに派遣・仲介する会社経営者からこんな話を聞いた。
    
 「どんなに通訳としての能力が高くても、ITの運用面に不安がある人に仕事は依頼しにくい。コロナ問題は『優秀な通訳』の定義を変えた」
  
 新型コロナウイルスの感染拡大後、実際に人が集まって開かれる会議や記者会見は次々に中止・延期になり、代わりにテレビ会議システムを使って通訳する仕事が増加。自宅で1人で通訳するため、音質の調整や通信トラブルに自力で対処できることが、通訳に期待される重要な能力になったというのだ。


  
(同記事より引用)
  
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 いかがでしょうか。この部分に、何か、ビビビと感じるものはありませんか?
 個人的には、この御指摘、非常に含蓄の深いものだと思いました。
 今日は、このことについて考えてみましょう。
     
  ▼
 
 さきの記事の要点は、まず、
     
「かつての優秀な通訳」とは「通訳者としての言語能力が高いひと」だった。
   
 ということにあります。
 
 しかし、コロナ禍においては「テレビ会議システムを使って通訳する仕事が増加」した。
 その結果、「音質の調整や通信トラブルに自力で対処できることが、通訳に期待される重要な能力」としてハイライトされた。
  
 すなわち、
  
「これからの優秀な通訳」とは「通訳者としての言語能力が高いこと」+アルファで「ITを使いこなせる能力」をもつひと
  
 になった、ということですね。
  
 ものすごく極端なことをいえば、
   
「通訳者としての言語能力がピカイチ」であっても、ITを使いこなし、トラブルシューティングできないひとよりは、「通訳者としての言語能力がそこそこ」でも、安定的に、ITを使いこなせるひとの方が付加価値が高い、ということもありえそうです。
  
 なぜなら、どんなに能力が高くても、ITを使いこなし、お届け価値(デリバラブル)を創出できないところには、お金が発生しないからです。
  
 かくして、冒頭の
   
 コロナ問題は『優秀な通訳』の定義を変えた
    
 というワンセンテンスは、非常に印象的であると感じました。
  
 みなさんの領域には、こうした問題が起こっていませんか?
    
  ▼
   
 さて、ひるがえって、この問題は「通訳」だけにあてはまることでしょうか。
   
 否、わたしはそうは思いません。
 この問題は通訳のみならず、これらの「人材開発的な問題」は、日本の各所に起こっていると思います。
 たとえば、わたしどもの領域では、研修講師などは、その典型かと思います。
   
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 今、企業研修は、対面研修が縮約・中止・延期され、急速な勢いでオンライン研修に移行しています。
  
 この激変のなかで、やはり、
   
 新型コロナウィルスは、研修業界の「優秀なひと」の定義を変えている
   
 気がします。
   
 対面講義では価値を創出できていた研修講師にも、オンラインでしっかり価値提供できるひとと、できないひとが生まれてきています。
「かつての研修講師」は、対面研修で場をホールドし、学習者に考えさせ、行動をつくることができることが重要でした。
  
 しかし、これからの研修講師は、おそらく「教授能力」にプラスして「オンラインで価値をお届けできること」が重要視されます。
  
 おそらく、もっとも求められるのは、
    
 対面であろうと、オンラインであろうと、高品質な研修を行えること
  
 そして、さらに高度なものとしては、
  
 対面とオンラインを組み合わせ、高品質な研修を設計・創出できる能力
  
 が問われるようになるでしょう。
  
 もっと贅沢をいえば、さらにさらに高度な能力として、
  
 対面とオンラインを組み合わせ、高品質な研修を設計・創出することによって、研修転移を促し、データに基づき、それらの効果を検証できる能力
  
 が求められます。
  
 コロナ禍によって、企業業績は、現在、戦後最悪の状況です。おそらくしばらくのあいだは、人材開発投資、組織開発投資も厳しい時代を迎えるでしょう。ということは、もしそれを行っていくのならば、データにもとづき、本当に必要なものだけを選択的に行っていくのではないか、とわたしは思います。その際問われるのは、「効果が高く安全な研修+研修転移+データに基づくPDCAサイクル(評価)」だと、わたしは思います。
  
 かくして、
  
 新型コロナウィルスは「優秀なひと」の定義を変えている
  
 のです。 
  
※追伸※
だから、「ひとづくり・組織づくりの大学院」、立教大学大学院・経営学研究科 リーダーシップ開発コースでは、ブレンディッドラーニングの設計やデータ分析(効果検証)などの実習が、必修で豊富に組まれているのです。今日は、中原、集中講義ですな。
立教大学大学院・経営学研究科 リーダーシップ開発コースでは、「DX時代における人材開発・組織開発を牽引する人材」を養成しています。ちなみに、来年度の入学は、1月8日(金)~1月21日(木)が出願期間、2月20日・21日がオンライン試験の入試日程で行われます。よろしければ、ぜひ! 金曜日・土曜日のフルオンラインで楽しく、しっかり学べて、修士(経営学)が取得できます。秋に説明会がございます。
  
「ひとづくり・組織づくりの大学院」、授業の様子・最新のニュースは、こちらをご覧ください。
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/
  
大学院入試説明(経営学研究科のところをご覧ください)
https://www.rikkyo.ac.jp/admissions/graduate/qo9edr0000004yq2-att/mknpps0000010wx4.pdf?fbclid=IwAR0drZGUbv9eTWJKvrJgeZJzg9Azs4T2aKTPxrgcxMVVUDIvNqbG8K1ZSbY
  
授業の様子は「週刊ダイヤモンド」20年8月8日・15日合併特大号で、紙上ルポ・紹介されています。もしよろしければ、手に取ってみてください。
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/2020/0803-002/?fbclid=IwAR1zpI70qidt_-_3zdu3dO8OiqoBIaKAVpxpxInFfm8aUY5KsfXexFi8cUQ

  ▼
  
 今日は、新型コロナウィルスは、研修業界の「優秀なひと」の定義を変えている、というお話をいたしました。
 もちろん、新型コロナウィルスの影響は、一律にあまねくすべての職種に影響するわけではないので、一般化にはやや慎重になる必要はあります。
  
 ただし、中長期の視点でいけば、この問題は、大きくひとびとの能力開発・スキル開発に影響を与えうると思います。
  
 しかし、ここで、わたしたちは、何も恐れる必要はありません。
 たったひとつのことさえ、手放さなければ、わたしたちは、恐れる必要はないのです。
  
 敢えて、チャールズ・ダーウィンを持ち出すまでもなく、歴史的に見れば、生物は、これまで、大きな歴史上の変化に翻弄されてきました。そして、かつてダーウィンが喝破したように、
  
 最後まで生き残ったのは、「屈強なパワーをもつ者」でもなければ、「知的に優れた者」でもありません。
 変化に柔軟に「適応」できたものだけが、サバイブするのです。
  
 すなわち、どのような時代にあっても、
  
 己の「学習能力」を駆使せよ、そして「適応」せよ!

    
 大切なことは、たった、これだけです。
  
 そして人生はつづく
   
  ーーー
    
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