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2020.3.31 08:24/ Jun

新型コロナウィルス感染拡大下での「年度はじめ」は「目標を握ること」が当社比100倍くらい重要になるのではないか!? : 従業員の「社会的距離」が「心理的距離」することを防ぐ!?

 明日の新年度のはじまりは、「目標を握ること」が、ふだんの年より、100倍くらい重要になるのではないか?
  
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 新型コロナウィルスの感染拡大が進行していくなか、多くの職場では、今日で2019年度が終わり、明日から新年度2020年度がはじまります。
  
 新年度のはじまりには、おそらく、多くの職場で、キックオフがなされたり、新年度の目標設定などがなされたり、経営層・管理職による挨拶などがなされるでしょう。
  
 本来「今日」と「明日」のあいだは時間的には「連続」しているものですけれども、ここに「節目(不連続)」を見いだし、気持ちを新たに仕事に向かうことも、また重要なことなのかもしれません。
  
 4月1日というのは、そういう「節目」の時期です。
  
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 しかし、新型コロナウィルスの感染拡大がつづくなか、一部の会社では、リモートワークが進展していっています。つまり、今年の「節目」は、去年とはすこし違う。「働き方」が変わっている会社が少なくない。
  
 ウィルスの感染拡大がございますので、おそらく、この「大切な節目」に際しても、これまでと同様に、大人数で集まるといったことはできない。
 いつものように「目標の共有」ができない。キックオフは、今年は文章やビデオで通達、といった会社も増えていくのではないか、と推察します。
  
 しかし、リモートワークで多くの人々のあいだに「社会的距離(Social Distance)」が広がっている今だからこそ、わたしの目から見ると、明日のキックオフ、目標共有は、これまで以上に大切になる気がいたします。
  
 離れて仕事をして、個別個別に、下を向いてオペレーションをこなしている人が多くなっている今だからこそ、明日の節目くらいは「大きな目標」をもう一度「握り返さなくてはならない」。
  
 リモートワークは、毎日朝起きて、夕方に終わるまで、シコシコと仕事をすることには、向いています。おそらく、その効率はさして落ちない。首都圏のフルタイム労働者の平均通勤時間は70分程度ですから、その分がないだけ、効率があがる、という方もいらっしゃるような気がします。
  
 しかし、一方で、わたし自身も最近、リモートで仕事をしていて、すこし「危機感」らしきものも感じてしまいます。
  
 それは何か?
   
 わたしの感じる危機感とは、「ビジョンの共有」とか「戦略の共有」とか「思いの共有」といったもの・・・より俯瞰的な視点にたって「目標を握ったり」「目標に共感したりする機会」が、ついつい「後回し」になってしまうのではないか、という予感です。
  
 緊急時なので、個別個別にわかれて、リモートワークで仕事をしよう
 これはできる。
 たしかにVPNとZOOMとTeamsを用いれば、緊急時のリモートワークは可能。
  
 しかし、一方で、自室に籠もって、下を向いて仕事をしているうちに、
  
 1)自分たちが何をめざしているのか?(Why do?)
  
 2)なぜ、今、この活動をしなくてはならないのか(Why now?)
  
 3)なぜ他ならぬ、自分たちが、これをするべきなのか?(Why us?)
  
 が見えにくくなってしまうのではないか、という予感です。すなわち「目標」が見えなくなり、少しずつ距離を感じ始めてしまうのではないか、ということです。
  
 まして、新型コロナウィルス感染拡大は、ひとびとの心に、知らず知らずのうちに、ポッカリとした不安や闇をつくりだしている。「組織がめざすもの」に、「明るいストーリー」が感じられなくなったり、そこに「不安のストーリー」や「疑心暗鬼」を感じ始める。 まして業績が芳しくない、厳しい組織もあります。そういうときだからこそ、もう一度、何を目指すのかが再定義されなければならない。
  
 今は、万が一、メンバーのなかに不安や疑心暗鬼について、リモートワークなので語り合えるひともいない。そもそも人々同士は、社会的距離をとり、あまりコミュニケーションをするな、と言われている。組織のなかには急速に「対話」が失われています。
  
 かくして「目標からの距離」が少しずつ離れていってしまいかねない、と思うのです。
  
 結果、どうなるか?
  
 それはひとびとの「社会的距離」が、心のなかにも広がりはじめることを意味します。
 すなわち、「組織と自分との距離」、「組織の目標と自分の仕事の距離」といったものが広がりはじめ、「心理的距離(Psychological Distance)」が遠くなる。
 かくして目標にコミットできず、組織にも貢献できない。知り合いにも会えないし、自分がなぜこの会社で働いているのか、わからなくなる。
  
 こうした事態が生まれないことを願っています。
 だからこそ、今年の年度初めに、どのように「目標を握るか」は極めて重要な気がするのですが、いかがでしょうか? リモートワークだからこそ、なおさらにね。
  
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 今日は、来年度のはじまりである、明日は、リモートワークが進行する今だからこそ大切な節目になるのではないか、というお話をしました。
  
 明日から新年度。
 春です。
  
 まだまだ余談を許さない日々がつづきますが、明日の節目くらいは、大きな目標を実感していきたいものですね。
  
 そして人生はつづく
  
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