NAKAHARA-LAB.net

2019.10.10 06:21/ Jun

ポスト企業合併の科学!? : いかに合併企業同士をカルチャーデューデリジェンスするのか?

 今年になって、志をともにする仲間とチャレンジしている研究が、「PMI(Post Merger Integration : ポスト企業合併)の科学」という研究です。斉藤光弘さん・東南裕美さん・柴井伶太さん・佐藤聖さんらと、今年の春あたりから取り組み、ようやく調査前までこぎつけました。
  
  ▼
  
 ここ数年、徐々に高まりをみせている企業合併。その件数は、1985年以降で過去最大だとも言われています。一口に企業合併といいますが、現在、増えているのは、非中核事業を本体から切り離していく事業売却型や、中小企業の世代継承をめざすものです。
 僕たちは、今後の企業経営においては、企業合併や事業売却が、さらに進展すると考えています。これは将来的な「社会課題」になりうるだろうな、と考えています(ちなみに、大学もね・・・)。
  
  ▼

 しかし、よく知られているように、日本企業が行う企業合併の成功率は、思いのほか少ない。何を「成功」というかにもよりますが、調査のなかには、それが「3割」程度であるという指摘もなされています。多くの失敗は、どこからくるというと、「ひとと組織の融合」です。
  
 戦略としては適合度は高いし、デューデリジェンスを行って財務的にはOKなのだけれども、なぜか「フィット」しない。たいがいは、ひとと組織が融合しないことがほとんどです。

 要するに

 カルチャー・デューデリジェンス
 
 が重要だと思われるのですが、それがなかなか行われていない、ということなのかなと思うのです。
   
 僕は、この事態を解決しうるのは、「ひとと組織」の観点からPMIを論じることであると考えています。
  
 かくして、僕らの研究では、企業合併プロセスのうち「PMI(Post Merger Integration)」に焦点をあて、その円滑な運営のために、人材マネジメントには何ができるのかを考えていきたいなと思っています。
  
 PMIに対して、人材開発・組織開発は何ができるか?
  
 この可能性を探究することが、この研究の目的です。
  
  ▼
  
 現在、研究はあまたあるPMI系の先行研究を読み込むところまで終わりました。まずは、これから大規模調査に向かいます。
  
 その後は、できれば実際にPMIプロセスにある企業でのPMIプロセス、ワークショップのお手伝いなどをさせていただきつつ、その効果検証などができればうれしいのですが。。。今、フィールドを見つけることに、すこし困っており、様々にお声をかけさせていただいているところです。
  
 まさか
  
「これから企業合併しますよー」
  
 といってくれる企業はないでしょうし、PMIのプロセスにある企業同士って微妙な関係であることが多いものです。そこに外部を入れてくれる、という事態がなかなかレアなのかもしれません。
  
 もう少し探求してみたいと思っています。
  
  ▼
  
 今日は今年からはじめた研究について書きました。
  
 とりわけ話題にさせていただいたのは「PMIの科学」。こちらはまだまだ調査がこれからはじまるプロセスですが、将来的には書籍・論文にしていきたいと考えています。
  
 このほかには、今年からはじめた研究で「アンコンシャスバイアスの科学」というのもございます。
 こちらは島田徳子さん・ダイヤモンド社永田正樹さん、広瀬一輝さん、小川敦行さんとの研究で、これから実験がはじまります。これは将来的には書籍などにまとめるつもりです。
  
 田中聡さんとの共同研究「チームアップの科学」も、これからまさに架橋にはいっています。こちらはJMAMさんの雑誌連載が基盤になっており、今後、書籍になる予定です。黒川剛さん、宮川敬子さん、竹内美香さん、井上佐保子さんとの仕事です。
  
 どの研究も、はやく皆さんに読んでいただけるよう、頑張っていきたいと思います。
  
 そして人生はつづく
  
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