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2019.9.25 06:39/ Jun

26の質的研究法の「地図」をつくってみた!? : サトウタツヤ・春日秀朗・神崎真実(編)「質的研究法マッピング」書評

 この本の企画は「勇気」が必要だったろうな
 編者は、「腹をくくってる」方なんだろうな
     
  ・
  ・
  ・
    
 真っ先に脳裏にかけめぐったのは、この思いでした(邪推かもしれない)。
 サトウタツヤ・春日秀朗・神崎真実(編)「質的研究法マッピング」を読みました。
  

  
 この本で編者らは、質的研究として代表的だとされている「26の質的研究法」を、なんと前代未聞!・・・2×2の四象限からなる「マトリクス」を用いて整理(マッピングアウト)し、それぞれに対して、第一線の研究者が解説することを試みています。
  
 つまり、
  
 世の中にたくさんあふれている質的研究法の「地図」をつくっている
  
 ここで2つの軸とは
  
「過程」を明らかにする手法か、「構造」を明らかにするのか、という軸
  
 と
  
「現象の背後の本質」を明らかにするのか(理念性)、と「実際に存在すること」を明らかにするのか(実存性)
  
 という二軸です。
この二軸からなる4つの論理空間に、26の方法が整理されています。
  
 ネタバレになるので、そのマップがどんなものかは、実際に手をとって読んでみてください。本書では、この二軸を便宜的に用いて、26個ある質的研究法を分類しています。ロックンロールな一冊です。
  
  ▼
  
 一見、地図をつくることや、マップアウトすることは、たいしたことのないようにも感じられるかもしれない。
  
 しかし、それぞれの方法の主導者の立場にたてば、
 
 自分の信奉する手法を、第三者から「位置づけられること」や「マップアウトされること」は、「自己のアイデンティティ」に触れられる行為
  
 であるはずです。
  
 たとえば、すでに編者らが述べるように、GTAやM-GTAは、本書では「構造」を明らかにする手法として位置づけられています(正確にいえば、過程の構造を明らかにする手法)。
  
 しかしながら、GTAやM-GTAの一般的理解は、それらは「プロセス」を明らかにする手法である、と考えられています。
  
 さぁ、どっちなんだろう。
   
  ▼
  
 編者らが「勇気」をもって提示した(と考えられる)、この2軸が相互に排他的かどうかは、また別の議論があるとして(実際に編者らは、とりわけ二軸目を定めるのに苦労したと述懐している)、個人的には、これらの諸整理は、非常に有益だと感じました。
    
 理由、それは「学生に教えやすい」ないしは「学生のあいだに対話が生まれる」
      
 一般に、教える側からすると、量的研究に比べて、質的研究法というのは、教えにくい側面をもっているものです。
 その理由のひとつは、手続きがかなり定式化している量的研究とは異なり、質的研究の手続きが、かなり状況に依存しているように感じられることです。
    
 また、何よりも、質的研究法の「内部」に、様々な手法的差異があることや、それらの手続き的違いに加えて、その背後にある「思想的背景」を伝えるのが困難だからであるように感じるのです。
   
 学生には、このマップを伝えようと思います。
 学生には、このマップを鵜呑みにするのではなく、自分の頭で、いくつかの興味ある手法の本を読み進め、自分の頭で考え、方法論的妥当性を議論したり、対話して欲しい、と思います。
  
 知的に面白い一冊でした。
  
 秋学期、中原ゼミでは、3年生のミニ卒業論文(4年生になる前に、ミニチュア版の卒業論文を書きます)がはじまります。ぜひ、学生に紹介したい、と思える一冊でした。
  

  
 そして人生はつづく
  
(ちなみに・・・僕の記憶違いかもしれませんが、編者のおひとりには、23年くらい前、箕浦康子先生のマイクロエスノグラフィーのゼミで、一度だけ顔をお見かけした記憶がございます・・・先方はまったく覚えておられないと思います。記憶違いかもしれません。当時、僕は、学部生。結局マイクロエスノグラフィーは書かなかったものの、質的研究に興味をもっていたひとりでした。はや23年。あっという間だった。1年1秒なので、23年は23秒、笑)
    
  ーーー
  
ハーバードビジネスレビューEIシリーズの新刊「セルフ・アウェアネス」に「なぜいま、セルフ・アウェアネスが求められているのか」を寄稿させていただきました。その記念講演会(基調ワークショップ?)の模様です。セルフアウェアネスを高めるグループワークに取り組んでいただきました。参加者の皆様、機会をくださったダイヤモンド社の前澤さん、ライターの井上さん、ありがとうございました。
  
ちなみに、井上さんのご主人に、こちらの企画でご一緒させていただきました。はじめてお会いした気がしませんでした(笑)。あとお会いしていないのは、おぼっちゃまですな。楽しみにしております。
    

    
一人ひとりの自己認識がチームを動かす
https://www.dhbr.net/articles/-/6153
  

        
  ーーー
  
9月1日・日本経済新聞の中原の記事「長時間労働の構造にメス」のなかで拙著「残業学」が紹介されました。おかげさまで重版出来6刷、さらに多くの皆様にお読みいただいております。AMAZONの各カテゴリーで1位記録!(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。
長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
    

   
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新刊「組織開発の探究」発売中、重版4刷決定しました!AMAZONカテゴリー1位「マネジメント・人事管理」を獲得しています。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
  

   
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