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2019.9.20 06:59/ Jun

効果の高い「人材開発・組織開発」をしたければ「ワークショップ」に飛びついてはいけない!

 効果の高い人材開発・組織開発をしたければ、ワークショップに飛びついてはいけない!
   
   ・
   ・
   ・
   
 ごめんなさい・・・冒頭のワンセンテンスは、明らかに「釣り」です。  
 いまいちど、我が本意を、正確に表現するならば、こうなります。
  
 効果の高い人材開発・組織開発をしたければ、「すぐに」ワークショップに飛びついてはいけない!
   
 そうですね前半と後半のあいだに「すぐに」というワードが入ります。
 つまり、「ワークショップをしてもいい」んだけど、「すぐにワークショップに飛びついてはいけない!」
   
 これは、いったい、どういうことでしょうか?
   
  ▼
  
 9月も後半にさしかかり、大学もだんだんと忙しくなってきました。
 僕も、最近、ひまを見つけては、秋学期の授業の準備をはじめています。
   
 今、準備をしているのは「人材開発・組織開発特論2」という大学院向けの授業です。この授業は通年の受講を前提に組み立てられている授業です。
   
 春学期の「人材開発・組織開発特論1」では、人材開発と組織開発の基礎理論を、学びました。
 後半の「人材開発・組織開発特論2」では、春学期に学んだ基礎理論を応用して、
    
 自分で支援対象となる「現場」や「クライアント」を探して
 自分で「コンサルティング」を行い
 自ら「人材開発・組織開発」を実践し
 自ら「評価」を行う
   
 ということに挑戦します。
(「人材開発・組織開発特論2」の受講は、「人材開発・組織開発特論1」の受講が前提です)
      
 人材開発・組織開発は、自らやってみて、振り返って、フィードバックをもらうことでしか熟達しません
   
「企業内人材育成入門」「組織開発の探究」とかいう巷にある本をいくら読んで座学しても、人材開発・組織開発ができるわけではない
   
 のです(自爆)。
  
  ▼
  
「人材開発・組織開発特論2」のシラバスや教材をつくっているなかで、何度も強調しているのが、
   
 効果の高い人材開発・組織開発をしたければ、「すぐに」ワークショップに飛びついてはいけない!
  
 という冒頭の言葉です。
  
 要するに、
  
 人材開発・組織開発だからといって、すぐに、やたらめったら、ワークショップ(打ち手)に飛びつくのではなく、しっかりと支援対象となるクライアントの声に耳を傾け、真因を探究し、その真因に合致した解決策を提案しなくてはいけないよ。
  
 つまり
 
 人材開発・組織開発は「課題解決」なんですよ
   
 ということを申し上げたいのです。
   
 クライアントの声に耳を傾け、真因を追究した結果、それがワークショップで解決可能ならば、はじめてそれをやることができる。
   
 しかし、巷にあふれる人材開発・組織開発は、そういう「課題解決のプロセス」をたどることなく、すぐに「打ち手」を手に取りやすいのではないでしょうか。「課題何か?(What)」をフカボリすることなく、「いかに解決するか?(How)」だけに関心が注がれる。
  
 先日も、ある人材ベンダーの方が、プンプンとお怒りになっておられたのを、まーまー、となだめておりました。その方が、クライアントに言われたひと言は、こちらです。
  
「あのさー、うちの会社、人材開発・組織開発部ってのを、新たに立ち上げたんだけど、なんか、他の会社もやっているやつで、みんなが元気になる、いい研修あったら、持ってきてよ。それ、検討するからさ」
 
  ▼
  
 対して「人材開発・組織開発特論2」で強調しているのは、
  
 人材開発・組織開発とは、「ひとと組織」の側面から、経営・現場にインパクトをもたらすことである
  
 という考え方です。
 そして、そうであるならば、わたしたちは課題解決プロセスを回さなくてはならない。
   
 つまり、
   
 効果の高い人材開発・組織開発をしたければ、「すぐに」ワークショップに飛びついてはいけない!
  
 のです。
  
 ちなみに、こういう基礎基本をしっかりと学べる書籍があったらよかったのですが・・・探してみたはいいものの、なかなかよいものがなく。いえ、ピタッと来るものがない。僕自身も「慶應丸の内シティキャンパス」の授業で、一部は教えているものの、完全に、そこにフォーカスした授業は行ったことがない。
  
 ないものは、自分でつくるしかない。
   
 よって、今、教材をシコシコつくっているのですが・・・。

(ちなみに、僕は教員になってから、同じ授業を翌年もそのまま繰り返したことはありません。だから永久に楽になりません。毎年シラバスを考え、教材をつくっております・・・)
  
  ▼
  
 今日は
  
 人材開発と組織開発とは「課題解決」である

 という、アタリマエダのクラッカー的なことを書きました。
  
 要するに、
  
 人材開発・組織開発も、その本質は、通常のビジネスと「さして変わらない」
  
 ということです。顧客の声を聞け、課題が何かを見定めて、何を提案するかを決めよ。
    
 それにもかかわらず・・・なかなか人材開発・組織開発の世界は、そうもいかないときもある。人材開発・組織開発というと、クライアントの声を聞かずに、ワークショップを押し売りしたり、打ち手の選択が最優先に考えられたりする。
  
 人材開発・組織開発だって、他の物事と、そんなに変わらないのになぁ・・・
   
 と思いを馳せるとき、僕は、この名言を思い出したりします。
  
「教えること」や「学ぶこと」は
「売ること」と「買うこと」に似ている。
  
「誰も学んでいない」のに「わたしは教えた!」と言うのなら
「誰も買っていない」のに「売った!」というのと同じだ。
  
(Dewey, J. 1910 How we think, p29)
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
日本の人事部「HRアワード」に拙著2冊「残業学」「組織開発の探究」がノミネートされたそうです。うれしいことです。
 
「残業学」(中原淳+パーソル総合研究所)
「組織開発の探究」(中原淳+中村和彦)
 
ここから最優秀を決める「投票」もあるようです!
「いいな」と思われた方は、どうぞ応援のほどお願い申し上げます!
  
【投票はこちら】
https://jinjibu.jp/gfrm/eventEnquete/award-19-0001/form/
  
【ノミネートリストはこちら】
https://hr-award.jp/nominate.php#shoseki
   
「残業学」は小林祐児さん、青山茜さん、渋谷和久さん、櫻井功さん、樋口健さん、井上佐保子さん、髙橋恒星さんらとのお仕事です。「組織開発の探究」は、中村和彦先生、間杉俊彦さん、井上佐保子さん、永田正樹さんらとのお仕事です。みなさま、お疲れ様でした!
 
 応援のほど、よろしくお願いいたします!
  
 ーーー
   
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