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2019.1.31 06:28/ Jun

22歳で「時」が止まっているビジネスパーソンが、武器も持たずに「大陸横断」!? : 転職で最も苦労する人はどういうひとか?

 これからおとずれるのは、大手(大企業)ほど「リスク」になる社会かもしれませんね
 なにせ、22歳で「時」が止まっているひとが、一定数、いらっしゃいますからねぇ・・・
       
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 昨日、新たな研究プロジェクトのチームメンバーの皆さんとキックオフ的な議論をしていて、話題になったのが、このトピックです。
  
 新たな研究の詳細はプレスリリース前なので省きますが、話題を端的に表現してしまえば、下記のようになります(プロジェクトメンバーの皆様、お疲れ様でした!メンバーご紹介などは、また公になったら、させていただきます!)。
    
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 話題は「転職で厳しい経験をするのは誰か」というお話。
     
1.転職などで一番厳しいのは、高学歴保持者で、「大手(大企業)」の入社し、エスカレータに乗っかってきて、特に自ら「やりたいこと」もなく、かつ、自らの「スキル」を蓄積してこず、かつ、大学卒業後20年間ほど、企業の外の世界を見てこなかったひとである
    
2.万が一、その大企業の経営が厳しくなってくると、やれ転職だ、やれ離職だ、ということになる。
    
3.しかし、大企業の中で生きていて「スキル」があまりなく、かつ、外の常識に疎いひとほど、「22歳の学生時代で時がとまっている」
    
4.自分が22歳だったころの「偏差値」で、社会をみようとする結果、転職のときにも、自分が就職した頃に内定をもらった他の企業の「社格」をもとめる。つまり、大学時代に内定をとれた「大企業」の「社格」を求め続ける
    
5.しかし、スキルのないひとを雇える余力のある「大企業」はない
  
6.そうなると、多少条件は変わっても、自分にはスキル(武器)がないのに、他の業種への横断・他の職種への横断「大陸横断」を試みようとする。
  
7.ここに大企業の「給与の高さ」がさらに追い打ちをかける。市場から考えて、相当高い給与をもらっていただけに、給与水準を下げることはできない。
  
8.万が一、自分では転職先の給与水準を下げようと思っても、家族がそれを許さない。転職先の給与があまりに低いと「嫁ブロック」が入る。なぜなら住宅ローン、教育費などは、現在の給与水準で組み立てられ、家族が現在の生活を「ルーティン」として記憶しているからである。学習棄却はできない
   
9.スキルがなくて横断しようとしているのに、さらに給与水準も下げられないので、仕事が見つからない。
  
 以上。
  
「厳しい転職ワールド」のなかには
  
「22歳で時が止まってる」
「やりたいこと」ではなく「社格」を求める
「スキル」がないのに「大陸横断」
「給与」が高すぎて「職が見つからない」
「嫁ブロック」で検閲が入る
    
 など、いままで僕が見たこともなかった「香ばしい現実」が散りばめられていました。すごい。
   
 市場に不確実性(いつどうなるかわからない)が増し、大企業であっても10年後の業態が読めない、と言われているなか、「こうならないため」にはどうすればいいのか。とても考えさせられる一日でした。
   
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 ちょめちょめ白書やら、論文の「枕詞」などには、よく「雇用の流動化」という言葉が踊ります。次の時代が本格的に「雇用が流動化」するかどうかは、僕にはわかりませんが、もし仮にそうならば、「22歳で時が止まっているひと」をいかにつくらないか、ということを本格的に考えていかなければならないのではないでしょうか。
  
 皆さんの会社には「22歳で時が止まっているひと」はいらっしゃいますか?
  
 そして人生はつづく
  
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