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2018.2.26 06:02/ Jun

格差競争社会に是非とも必要な「セルフコンパッションー自分に対する思いやり」とは何か?

 あなたは自分自身に対して「思いやり」をもっていますか?
 よもや、自分を「否定」して生きていませんか?
  
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 Neff. K.(著)、石村郁夫・樫村正美 (訳)「セルフコンパッションーあるがままの自分を受け入れる」を読みました。
  

  
 セルフ・コンパッションとは「セルフ(自己)」に「コンパッション(慈悲)」のこと。「自己慈悲」ではあまりに直訳なので、ここではセルフコンパッションを「自分に対する思いやり・優しさ」と考えることにしましょう。

 セルフコンパッションは、自分を批判せず、むしろ肯定し、あるがままを受け入れ、自分を立て直す力(個人的資質)のことをいいます。
  
 本書は、著者のネフが、「セルフコンパッション」と負の感情、ないしは幸福(Well-being)などの関係を実証的に探究した本です。
 実証的探究がベースになっていつつも、エピソードが随所に盛り込まれており、いわゆる数字ゴリゴリの本はなっていません。ところどころにネフ自身の、セルフコンパッションに関する物語がちりばめられています。
  
 格差と競争に彩られる社会とは、あらゆるものが「ランキング」され、「序列化」される社会です。このような格差・競争社会において、最も失われがちなのは「セルフコンパッション」ーすなわち、「自分に対する思いやり」です。
  
 ついつい他人と自分を比べて、自己批判・自己否定を行ってしまったり、自分のあるがままを受け入れて自己肯定を行えなくなったりすることが頻発します。
  
 もちろん、「自分に対する思いやり」といっても、「自信過剰」でもなく「ナルシズム」でもありません。
 自信過剰なのではなく、自分のあるがままを直視するのです。ナルシズムにひたり思考停止するのではなく、そのうえで、自分の未来をみすえ、自分を立て直すのです。これが「セルフコンパッション」です。
  
 本書を読みながら、僕は、時折、学生の皆さんが、こんな言葉を口にすることを思い出していました。
  
 「わたしなんか、絶対できない、無理無理」
 「みんなと同じとこでやるなんて、わたしは、マジ無理」
  
 大丈夫。
 やってみよう、うまくいくかもしれない。
  
 試行錯誤しても、失敗しても、自分に「優しさ」をもとう。
 あるがままを受け入れて、挑戦した自分を肯定しよう。
  
  ▼
  
 今日は「セルフコンパッション」についてご紹介させていただきました。この概念は、東洋思想やマインドフルネスとも関係していて、なかなか「奥は深い」のですが、それについては、また今度。
  
 あなたは「自分への優しさ」をもっていますか?
   
 そして人生はつづく
  

  
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