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2017.5.15 05:41/ Jun

「叱ることができない管理職」が増えている「本当の理由」とは何か?

※明日5月16日のブログは所用のため、お休みいたします。See you !

 なぜ叱れないのか? それは「期待」していないからですよ。
 相手に「期待」をしていないと、「叱れない」のです。
  
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「慶應丸の内シティキャンパス」での僕の授業「ラーニングイノベーション論」は、本年、第9期をスタートさせていただくことができました。
 ラーニングイノベーション論は、「人材開発の基礎」を13回のセッションで学ぶことができるコースで、今年は満員御礼(超過)の31名でのスタートです。
  
 ご参加いただきました受講生の皆様には、この場を借りて御礼を申し上げます。本当にありがとうございます。そして、これから、半年間、ともに学んでいきましょう。ラーニングファシリテータの保谷さんともども、MCCの皆さんと、最大限、皆さんの学びを高めることにサポートをお約束いたします。
 
  ▼
 
 ラーニングイノベーション論の初回を飾るのは、北海道大学の松尾睦先生をお招きしての、経験学習のセッションです。
 松尾先生は、今年も初回を飾るにふさわしく、素晴らしい授業を展開していただきました。この場を借りて深く感謝いたします。本当にありがとうございました。
  
 冒頭のお言葉、
  
 なぜ叱れないのか? それは「期待」していないからですよ。
 相手に「期待」をしていないと、「叱れない」のです。
  
 は、せんだって、松尾先生が授業のなかでおっしゃっていたお言葉です。
 ICレコーダをもっていたわけではないので、一字一句忠実とはいえませんが、先生は、そのような趣旨のことをおっしゃっておりました。非常に含蓄のあるお言葉だな、と思いました。
  
  ▼
 
 といいますのは、昨今「部下を叱ることができない管理職」が増えている、といいます。真偽のほどは明確な統計データがあるわけではないので、なんともいえませんが、実務の世界では、頻繁に指摘されることのひとつです。

 一般には、この理由は「ハラスメントと言われるのが怖いから」とか「時間がないから」とか「昭和世代から平成世代へ代替わりが進み、よりマイルドになったから」と片付けられてしまうことが多いのですが、松尾先生は、この理由を「期待」にも求めておられました。もしかると、より本質に近いのかな、と妙に感じ入ってしまいました。
    
 よく知られているように、1990年代後半から2000年代にかけて「業績を求める傾向」が、職場に強くなり、
  
職場の中で、 「できる人に仕事を振り、できない人には仕事を振らない」傾向が強まった
  
 ということが言われます。
  
 成果を手っ取り早くあげるためには「できる人」に仕事をさせ、なるべく早くそれをこなしてもらうことを管理職は選択する。
 その一方、「できない人」には仕事を振らず、オペレーションに従事させる、ということをおこないがちになってきた、ということです。
    
 「業務経験」とは「人材育成」にとって「貴重な資源」です。
 よって、こうした傾向の場合、「できる人は、さらに仕事ができる」ようになり、「できない人」はいつまでたっても、業務能力があがらないということになりがちです。
  
 要するに、「できる人」にのみ人材育成がなされ、「できない人」には育成がなされない、ということがおこっているのです。
   
 ここで出てくのが、冒頭のお言葉です。
  
 なぜ叱れないのか? それは「期待」していないからですよ。
 相手に「期待」をしていないと、「叱れない」のです。
  
 先ほどのように「できる人 / できない人」で業務経験(人材育成)に偏りが生じている場合、期待をかけられている「できる人」には、管理職は「期待」をかけているので「叱ること」ができるのかもしれません。
 むろん、彼 / 彼女は、そもそも「仕事ができる」ので「叱る必要」があまりないともいえます。だから「叱ることが減ります」。
  
 もう一方の「できない人」には、そもそも「期待」をしていません。
 期待のないところには「叱ること」ができない、という仮説が本当だとすると、こちらには「叱ること」が減ります。なぜなら、期待をしていないからです。
  
 かくして両者において「叱ること」が減っていきます。
  
 叱る必要がないから、叱らない。
 期待していないから、叱らない。
  
 かくして「叱らない管理職」が増えていく、という仮説です。
  
 こうした頭の体操で導き出された仮説は、いかがでしょうか?
 皆さんの職場では、どのように思われますか?
  
  ▼
  
 今日は「叱るということ」について考えてみました。 
「叱ること」は、そもそも「目的」ではないので、そのことが増えた、減った、というのは、あまり本質的なことではないかもしれません。誰だって「叱られる」のはイヤなものです。ですので、これが増えても、あまり「うれしくありません」(笑)
  
 しかし「叱る」という手段を通して、「実現されるその先」には、「期待」があり「育成」があり「能力の向上」があります。そう考えるならば、自然なかたちで「叱ること」や「叱られること」があってもよいのかな、とも思います。

 人は、期待しないものは「叱れません」。
 皆さんは知らずしらずのうちに「期待」を放棄してしまってはいませんか?
 そして「叱れない人」になっていませんか?
  
 そして人生はつづく
   
 ーーー
   
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