NAKAHARA-LAB.net

2005.5.4 11:21/ Jun

焼き肉の思い出

 カミサンも僕も「仕事満載ゴールデンウィーク」を過ごしている。
 仕事をすれば腹が減る。しかし、そうかといって、忙しいので、毎日、キチンとした食事をとることができる、というわけでもない。
 このところ、質素な食事が続いていたカミサン。ついに耐えられなくなって、「油」を欲し始めた。「肉!、肉!、ガルルー」とうるさいので、週末、焼き肉にいくことにした。
 焼き肉屋には、若い人たちがたくさんいた。カウンターにすわり、カルビ、ハラミなど一通り食べる。僕はビールを注文した。カミサンは、しょっぱなから、決め打ち「焼酎お湯割り」である。
 —
 肉を一通りたいらげ、網の上で、野菜をこんがりと焼けていく様子を見ていたら、ふと、大学院の時代を思い出した。
 —
 僕が大阪大学の大学院生だった頃、研究室の人たちと、ほぼ毎日食事にいった(正確には僕は車をもっていないので、連れて行ってもらっていた! 特にほぼ毎日のように車をだしてくれていた「すぎはん」や「今井さん」「松河君」には、感謝している)。大阪大学の中にあるレストラン「くじら屋」はもちろんのこと、小野原、171沿い(国道171号線)、あたりの店は、ほとんど行き尽くしたと思う。
 そんな中でも、ひとつ思い出に残っている店がある。
 たしか、171を神戸方向にすすみ、ビックボーイの前の交差点あたりを少し曲がったあたりにあった思うのだが、「980円で焼き肉+カレー+ごはん+スープ+サラダ」食べ放題という店があった。
 店構えは普通の食べ放題である。しかし、肉を注文するときには、「いろいろな種類の肉がはいったプレート」ごとに注文をしなくてはならない。つまり、単品で、1種類の肉だけを注文できない。ここが癖モノである。
 プレートの中には、カルビとか、ハラミとか、僕らがよく知っている肉も「何片」か見える。しかし、それ以外の肉は、よく知らない肉たちである。白っぽい肉もあれば、赤いものもある。しかし、よーく見てみても、また、食べてみても、よくわからない肉もある。
「これさ、どの部分の肉かな?」
「そんなんしらんわ」
「ていうか、それ以上に、これは、誰の肉?」
 院生同士、ひそひそ話し合う。でも、お金がないから、まぁ、いいか、とりあえず食っちまえ、ということになる。
 なにせ、カルビやハラミとかの「おいしい部分」をもう一度食べるためには、プレートすべてを食い切らなくてはならない。「おいしい部分」0.5を食べるために、9.5の「わけわからない肉」を食う、という状態になる。
 僕らのアタマの中は、「おいしい肉」のことしかない。それ以外の肉を食っているときは、はっきり言って、「電源を切って」いるから、意識がもうろうとしている。
 この店、正直、僕は怖かった。
 なんかちょっと前のB級映画に、中国の肉まん屋が、「人肉」を使って肉まんをつくったっていう実話をモチーフにしたものがあったじゃん・・・。そういうのを思い出しちゃったんだよね・・・食べてるあいだに。
 —
 一般に、大学院生とは「貧乏な存在」である。もし、貧乏じゃない大学院生がいたとすれば、それは「大学院生道」に反したフトドキな学生である。
 だって、マトモに研究していたら、バイトなんか、そんなに多くはできないから、収入それほどない。それなのに、本やら学会費やらを自費で買わなければならないんだから(これほど大学院生が生活に追い込まれるのは、僕自身は問題だと思っている。1年前に頻繁に報告していたが、たとえば、MITのマスター学生は、研究室で働き続けながら学ぶことができる。そういう仕組みができているところも、近年、できてきているが、総体からみるとまだまだ少ない)。勉強していれば、貧乏にならざるをえないハズだ。
 —
 でも、まー、今から考えると、激しく貧乏だったし、よくわけのわからない肉は食っていたけど、それはそれで、大学院の頃は、楽しかったなぁ・・・。
 みんなで、「あっ、フツーの肉、もうないやん!」「わけわからん肉、まだあるで、じゃんけんで負けた奴が食べよう」などとギャーギャー言い合いながら、焼き肉食べたなぁ、と思い出してしまった。
 今もその店があるのかどうか、僕は知らない。そして、当時、その店に一緒に繰り出したメンバーの多くは、いまや、全国各地の大学で働いている。きっと、そのメンバーで、あのときの「980円食べ放題の店」には、行くことは2度とないとは思うけど、でも、そのときの思い出は僕のアタマに、今でも鮮烈によみがえってくる。
 明日には、僕らは、何をしてるだろう?
 みんなが不安と期待を、同時に胸に抱いていた。
 それはそれで、素敵な時間だった。

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