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2022.2.7 09:57/ Jun

リーダーシップの発揮は「ソーシャル」なのである!?

 思春期の女性は、どのようにリーダーシップ発達をとげるのか?
     
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 リーダーシップクォータリーのVol.32(1)に「Leader development for adolescent girls: State of the field and a framework for moving forward」(Eva et al 2021)と題された論文があります。
 この論文では「思春期の女性」にとってリーダーシップの発達がいかに遂げられるのか、ということを探究しています。かなり前のことになりますが、大学院生の加藤さんが、この論文を報告してくれました(感謝!)。今日はそのことを少しお話ししましょう(詳細な内容は全文をお読みください。下記は、わたしが気になったところだけの要約記事です)。
  
 論文に曰く、
   
 多くの人々にとって、はじめてのリーダーシップ発達の契機になるのは、学校、課外活動、青少年リーダー育成プログラムなどを通じて、思春期の頃だと思います。しかし、これらを「やっていれば」、必ずリーダーシップが発達するのではなく、ここに意図をもって「リーダーを育てる仕組み」をビルトインしていく必要があります。
  
 その中でも、とりわけ思春期の女性には、ケアが必要です。
   
 彼女たちは、すでに「社会からのまなざし」にさらされ、「自分を(潜在的な)リーダーの資質として見なすことが少なく」、場合によっては、「リーダーになることを期待されるシグナルを、社会から受け取ることも多くはない」のかもしれません。それは、社会に流布するリーダーシップの概念が「大人の、白人の、男性のリーダーシップ」を典型像ととらえるからだ、と論文は喝破します。性別がリーダーシップの発露にもたらされる確たる証拠はないのにもかかわらずね。
   
 このように思春期において、ひとが、いかにリーダーシップを発揮するかは、1)自己認識(リーダーアイデンティティやリーダーセルフエフィカシーなど)、2)外部からの認識(仲間、親、教師など)、3)リーダーシップの役割を正式に担っているかなどに依存すると言います。
  
 要するに、
  
 ある個人が、リーダーに向いている資質があるか、どうか?
  
 というよりも、
  
 ある個人が、社会のなかで、いかに期待され、いかに要請され、いかに支えられて、自らが「リーダーシップを担える存在」だと思えるかどうか
  
 が決定的に重要だということですね。
  
 つまり、ひとことでいえば、
  
 リーダーシップの発揮は「ソーシャル」に規定されている
  
 ということです。
  
  ▼
  
 今日は思春期のリーダーシップのことについて書きました。
  
 リーダーシップの発揮が「ソーシャル」に規定されているのなら、「社会のまなざし」がひずんでいるがゆえに生まれている「もったいない状態」をただすのは、ソーシャルに行わなければならない、ということになります。
  
 個人もつ潜在力が、いかんなく発揮される社会を願います。
   
 そして人生はつづく
    
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