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2021.5.31 07:47/ Jun

あなたの組織では「誰も活用しないパルスサーベイ」が生まれていませんか?:組織調査活用のための5つのポイント!?

 パルスサーベイ(Pulse Survey:心拍のように、定期的・高頻度で行われる職場調査)というものがあります。
    
 ここでパルスサーベイとは、
  
1. 自分のチーム・職場の状態を
2. 月1回・隔月1回など比較的高い頻度で
3. 質問紙調査を行い、見える化して
4. チーム・職場にフィードバックして
5. その結果を話し合う営み
      
 をさすものとします。
   
 5年ほど前からでしょうか・・・クラウド技術の進展とともに、パルスサーベイは普及をしはじめました。
     
 また、コロナ禍においては、リモートワーク、テレワークが普及している企業もあります。リモートワークは、お互いの働いている様子や、職場の状況が「見えない化」しがちです。
 
 かくして、コロナ禍を背景に、パルスサーベイがさらなる普及を見せている気がします。
    
 しかし、パルスサーベイは様々な可能性を開いてくれている一方で、問題も引き起こしていることも、また事実です。
    
 この数ヶ月、パルスサーベイを導入している、5つ以上の企業(従来からご縁のあった企業)で講演をさせていただきましたが、その可能性も感じる一方で、「結果をどのように活用していいかわからない」状況が生まれがちであることも感じました。要は、パルスサーベイには乗り越えなければならない「挑戦的な壁」があるということです。
     
 最大の課題は、
    
 ・高頻度でサーベイをやっただけで「やりっぱなし」
    
 ・結果は公開されない。
  
 ・誰も利用しない、誰も見ない、誰も話し合わない
  
 といった状況が生まれかねないことです。サーベイを導入する前に、こうした状況が生まれかねないことを鑑みたうえで、対策を行うことが必要です。

 せんだって、ある企業のセミナーで行った簡単なアンケートでは、
  
 日本企業の35%ほどは、サーベイの結果を「活用」できていない
    
 という結果がでました。
    
 僕の感覚では「活用しない」のであれば、わざわざ「組織調査」なんて辞めてしまえばいいのに、と思います。ごめん、はっきり言います。「時間の無駄」。その分、客先を回ったり、営業した方がよっぽどいいでしょう。たかが10分の調査でも、100名でやれば、1000分(16時間)の工数になってしまうのです。
     
 僕のハダカンでは、多くの企業では、パルスサーベイの機能は職場に提供するものの、それを利用するかどうか、さらに結果を活用するかどうかは、すべて「職場任せ」「管理職任せ」になっている状況ではないか、と思います。
   
 ▼
   
 それでは、パルスサーベイを活用するためには、何が必要なのでしょうか?
 この問いに対しては、僕は、いつも5つのコメントをさせていただいております。こうしたことをしっかり、管理職+メンバーにもご理解をいただいたうえで、サーベイを始めることが重要でしょう。
   
1.自分たちに最も「フィット」した活用方法を自分でたちで決める
(調査をやってから、どう活用するかを決めるのではなく、やる前から、その準備をしておく。その際には、自分たちにフィットしたやり方を決める。どうせ、フィットしたやり方しか、やらない)
     
2.業務に埋め込み「習慣」にする
(会議の最後10分とか、業務のなかに、サーベイの活用を埋め込む)
     
3.ハードルをさげてやる
(無理はつづかない:会議の最後10分をサーベイ結果の共有・話し合いにあてるなど、なるべくハードルを下げる)
   
4.はじめたら、なるべく早くに「お得感」を感じるようにする
(Early win!:成果実感を持てないと続かない。よって、タイムリーに結果を見て、なるべくQuickに対策を話し合うことが重要!)
  
5.時折、スポットライトをあてる
(全体会議・社内報でとりあげる、経営者に話題にしてもらうなど、頑張っているところにスポットライトをあてる)
  
 いかがでしょうか?
  
 逆に、パルスサーベイの普及を阻害する、決して「やってはいけないパターン」というのは、この「逆」かと思います。
  
1.企業・人事が勝手に「やり方」を押しつけ、やらせる
  
2.業務に埋め込まないで、お祭りイベントにしてしまう
  
3.ハードルを「鬼高く」してしまう
  
4.いつまでたっても「お得感」が感じられない
  
5.誰も注目しない。頑張っても、褒めてくれない
   
  ・
  ・
  ・
   
 皆さんの会社ではいかがでしょうか?
   
  ▼ 
  
 今日はパルスサーベイの活用について書いてみました。パルスサーベイは単価も低く、導入するのは簡単です。しかし、組織調査というものは「導入は簡単」、「活用は工夫がいる」ものなのです。しかし、それを継続して活用していくためには、それなりの覚悟が必要です。
    
 あなたの組織では「誰も活用しないパルスサーベイ」が生まれていませんか?
  
 そして人生はつづく
    
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相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。利用人数20名までは「無料」だそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
    
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
   
ピアトラストお問い合わせ
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ピアトラストの効果まとめページ
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