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2020.9.10 06:55/ Jun

あなたの会社では「理念(バリュー)の乱用」が起きていませんか?

 せんだって、慶應丸の内シティキャンパスで講義をしていた際、「バリュー(理念)の乱用」という用語が受講生の方からあげられ、議論が盛り上がりました(Kさん、ありがとうございます!感謝です!)
    
 ここで「バリューの乱用」とは、
   
 1.会社が定めたバリュー(理念)が
 2.本来の意味を外れて
 3.勝手に解釈され
 4.現場での身勝手な行動を
 5.正当化するために用いられる
  
 のことをいいます。
  
 本来、大切にしなければならない「理念(バリュー)」が、全然、意図を外れて、現場で「あさって」の方向で用いられるから「バリューの乱用」ということですね。
  
  ▼
  
 たとえば、あなたの会社で「超速経営」というバリューがあったとします。本来「超速経営」は、意志決定を徹底的にはやくする、という理念だったとします。
 
 しかし、これが「乱用」されるときには、こうなります。
 下記は、ある課長とメンバーの会話
  

課長「おーい、中原君、今日の夜、残業いける?ごめん」
  
中原「いや、今日の夜は、無理です。家族との食事ありまして」
  
課長「そうかぁ。突然だしな。でも、うちの会社、超速経営じゃん。この資料、明日の朝までに、完成しなきゃならないんだよ。ごめん。今日の残業、お願いできない? 超速経営だしさ」
  
中原「は・・・はい」

   
  ・
  ・
  ・
  
「超速経営」の乱用、いっちょ、あがり。
「超速経営」は、単なる「残業の押しつけ」ロジックに成り果てました。
    
  ▼
  
 一般に、理念は「掲げておく」だけでは意味はありません。
 それは従業員に「使われなければならない」し、従業員のあいだで「流行らなければならない」
  
 しかし、一方で、「使われる」ということは、そこに「他人の恣意的な解釈」が入り込む余地が入る、ということです。
 その意味では、
  
 理念とは、「曲解」されるリスクを抱えるもの
 理念とは、乱用のリスクをはらむもの
  
 というのも、また事実です。
 理念が、使う側の意図によって、良くも、悪くも用いられてしまうこともあるのです。
  
 かつて「チャレンジ(挑戦)」という言葉で、「現場に不正を押しつけること」を行っていた組織もあったと聞いています。
 これは一見、誰の目にも美しい理念が、「悪行」を正当化するロジックとして用いられた瞬間です。
  
 あのさー、この数字、ちょろりんこと、ちょろまかしといてくれない?
 チャレンジしようよ。
  
 あのさー、この資料、朝までに何とかなんない?
 うちの会社、超速経営じゃん?
  
  ・
  ・
  ・
  
 大切な理念だからこそ、よき結果を生み出すよう、しっかり運用されなければなりませんね。そのためには、理念を繰り返し取り上げ、語り、その意味するところを確かめ合う場が、必要なのだと思います。
  
 理念経営は「パワフル」です。
 でも、理念経営の運用は、「手間暇」かかるものなのです。
  
 そして人生はつづく
  
   ーーー
       
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