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2020.7.16 06:57/ Jun

中途半端な360度フィードバックが「フィードバック嫌いさん」たちを量産してしまう理由!?

 他人からもらった「360度フィードバック(多面評価)」に対して心を閉ざしてしまい、「貝」のようになってしまう方、というのがいらっしゃいます。
   
 どんなフィードバックをもらっても、わたしには「関係ない」
 他人が何を言おうとも、「それは違う」
 他人がせっかく言いにくいことを指摘してくれているのに「知ったこと」ではない
  
  ・
  ・
  ・
  
 こういうものを専門用語では「自己防衛ルーチン(自己防衛)」といいます。
  
 要するに、
  
 自分は「受け入れたくない」「変わりたくない」「学び直したくない」
  
 ということですね。
   
 なかなか強固な「貝殻っぷり」です。
  
  ▼
  
 本来、360度評価には、他者と自己のズレに向き合い、オープンマインドをもって、自らを変えるチャンスだと思って望むのがよいのですが(Taylor and Bright 2011)・・・まぁ、魑魅魍魎のシャバワールドでは、そうはなかなかいきません。
  
 突きつけられた360度フィードバックの結果をまえに、パンパカパーンと「自己防衛ルーチン」が駆動して、
  
 「変わりたくないよー」
  
 と心を閉ざしてしまう。
  
 ちなみに、経験上、「こんな調査に信頼性や再現性はない」とか小難しいことを指摘して、フィードバック内容や手法そのものに「難癖」をつけてくるのは、理系のオジ●マに多いのは気のせいでしょうか。
  
 まことに「香ばしい言い訳」です。
 でも、要するに、自己防衛です。
  
 以上。
  
  ▼
  
 しかし、いったい「何」が、この強固な「貝殻」を生み出してしまったのか、というと、本人のキャラクターもありますが、実は、「360度フィードバック」そのものであったりするものです。
  
 つまり、過去に自分が経験した360度フィードバックの経験が、あまりに「惨かった」ために、すっかり「360度フィードバック」嫌いになってしまう。
  
 たとえば、
  
 フィードバック結果をメイルで箇条書きで送りつけられて、放置された・・・とか
  
 フィードバック内容について考えたり、ディスカッションする時間が用意されていなかった、とか
  
 フィードバック結果は査定には関係ないと言っていたのに、思いっきり、関係づけられていた、とか。
  
 そういう「過去の360度フィードバック」で受けた経験や心理的契約の不履行が、「フィードバック嫌い」を生んでしまうことがよく知られています。
  
 こうした過去の経験のなかで、もっとも頻繁に起こるのは「フィードバック放置」でしょうか。厳しい現実をつきつけたままで、サポートはなし、放置してしまうというのが、もっとも深刻になってしまうケースです。
    
 ですので、結局、「やるなら、最後までやりきる(最後までサポートする)」なのです。
 
 つまり、
  
 360度フィードバックを制度化するときには、立て直し(サポート)までやり切ること
  
 ないしは、
  
 360度フィードバックを中途半端にやらないこと
  
 が重要なのです。
  
 これ以上、フィードバック嫌いを生み出さないためにもね。
  
  ▼
  
 今日は、360度フィードバックについて書きました。
  
 先ほど文献(Taylor and Bright 2011)を読んでいたら、
  
 Multisource Feedback Assessment (MSF or 360-degree feedback) used for employee
development has become ubiquitous in many organizations.
  
 という文言にぶち当たりました。
  
 そうです、もう360度フィードバックは「ubiquitous(ユビキタス=広く実践されているの意味)」なんですよね。
  
 そして、360度フィードバックの利用が「ubiquitous」であるからこそ、「ubiquitous」な広範囲にさまざまな問題も生み出している。
  
 360度フィードバック嫌いをこれ以上、生み出さないためには「360度フィードバックにまつわる、いやな経験」を減らしていくことが重要なのかもしれません
  
 うちの会社のひとは、360度フィードバックをやっても「貝殻みたいに変わりたくないひと」ばかりで・・・・
  
 という嘆息をお持ちの皆さん・・・
  
 もしかすると、あなたの会社では「惨い360度フィードバック」が過去に行われていませんでしたか?
  
 そして人生はつづく
  
 ーーー
  
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