NAKAHARA-LAB.net

2020.7.15 09:47/ Jun

僕が「オンライン講演」にどうもしっくりこない理由!? : ラジオで「講演」を死語にせよ!?

 オンラインでの「講演」というのが、どうも僕にはしっくりこない?
  
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 わたしのようなお仕事をしていると、講演の登壇のご依頼などをいただくことがあります。ここ最近、ご依頼を受ける講演は、99%が「Zoomなどを用いてのオンライン講演」です(ありがとうございます!)。
     
 ただ、僕は今年になって、猛烈な忙しさになっています(人生で一番働いている自信がある!)。コロナ禍への対応・各種準備などもあり、こうしたご依頼には、ほとんどお応えできておりません(すみません)。
  
 でも、本当のことをいうと「Zoomなどを用いてのオンライン講演」をお引き受けできない理由のひとつには、「僕が、まだ、それにしっくりきていない」ということが含まれるのだと思っています。
  
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 といいますのは、最近、よく考えることのひとつに、こんなことがあります。
  
 それは
  
 いわゆる「一方向の講演」は、Zoomなどには、相性がよくないのではないだろうか?
  
 ということです。
  
 少なくとも、僕個人は、
  
 Zoomを使って「一方向の講演」をやることに「しっくりこない」
    
 のです(すみません・・・)。
  
 他の方は存じ上げませんが、どうも、僕にはピンとこない。
  
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 ここで「一方向の講演」と申し上げているのは「講演者からオーディエンスの方々に対して行われる一方向の情報提供を主とした講演」のことを申し上げています。要するに、絵にすれば、こういうやつですね。
 
  
 
 なぜ、僕が「一方向の講演」をZoomでやることにしっくりこないか、というと、Zoomならば、チャットや投票などで、せっかくオーディエンスの方々から様々な情報を獲得できるチャンスがあるのに、それをまったく用いない場合があるからです。 どうも、講演というスタイルが、オンライン時代にあっていない気がする。
  
 それが実にもったいなく思えるし、僕はそれが封じられると「Zoomなどを用いてのオンライン講演」に、自分としてはクオリティ保証ができなく思ってしまうのです。勝手に、オーディエンスの方々も、興ざめに感じないのかな、と勘ぐってしまいます。
  
 主催者のなかには、セキュリティの問題への懸念からか、あまりこうした機能を用いて、会を運営することを忌避なさる方々もいらっしゃいます。それもやむをえない場合もあるのでしょうが、実際、「聴衆との回路を閉じてしまう(利用停止)」ということが、行われるようです。
  
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 むしろ

 僕個人としては、Zoomを用いての「講演」というのは、もっと「ラジオ的」に実践すると面白い
  
 とっています。
  
 講演者が「ラジオのディスクジョッキー」や「パーソナリティ」になったかのように、聴衆から寄せられた意見(お葉書)をよみ、それをコンテンツにしつつも、ときに自らのコンテンツをだし、それらをミックスして、ダイナミックなうねりをお届けするような感じです。絵にすると、こんな感じです。
 
 
  
 つまり、かつてオールドノーマル時代は、
  
 大人数に対するプレゼンテーション(一方向の情報提供)= 講演
 
 の図式が成立していました。
  
 しかし、オンライン時代には、この「講演」という概念自体をぶち壊したい。
  
 むしろ、大人数に対するプレゼンテーションに、リスナーからの意見をかけ算して行うような情報提供を行った方が、オンライン時代の情報提供にあっている気がするのです。そして、これは、もはやオールドノーマル時代の「講演」ではない。
 
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 つまり、これからの時代のために、僕は

 大人数に対するプレゼンテーション × リスナーからの意見(チャット)という新たな情報共有のスタイルに「新たな名前」を与えなくてはならない

 のではないか妄想してしまうのです。
  
 これまで行ってきた「講演」を、単に「オンライン」に置き換えるだけのことをやるよりは、情報提供の「新たな文法」を探すべきなのではないか、と思ってしまいます。
  
 つまり、我々は、
  
 Name the world!しなければならない
  
 しかし、残念ですが、まだ、この「Name」を僕はつかみ取れていません。そして、それが何か、まだつかみ取れていないので、あまりオンラインでの講演をお引き受けする気に、なかなかなれないのです。自分として、クオリティに自信がもてないので。
  
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 それにしても「講演」に「新たな名前」ってなんだろう?と考えます。
    
 インタラクティブ講演?(ダサイ)
 アクティブセミナー(ダサイ)
 ラジオ講演(ラジオというと、音だけのものが喚起されちゃう。映像もあっていい)
 中原漫談?(もう、やけくそ)
  
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 もう何がなんだかわかんなくなってきましたが、少なくとも、僕はこう思っているのだと思います
  
 1.「講演」という概念をぶち壊したい
 2.「講演」に変わる「名前」をさがしている
 3.「講演」に変わるものが、この世界の「ニューノーマル」になる
  
 そして、そのとき、
  
 4.「登壇者」というものも「一方向に情報提供をするひと」から
 「自分のコンテンツとリスナーのリアクションをミックスできるひと」に変わるでしょう。
   
 最終的には、講演にまつわる人々に必要なスキルセットが、変わる気がしています。
  
 ま、僕の「妄想」だけかもしれませんが。
 いいぢゃん、妄想するのは無料なんだから
  
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 ちなみに・・・僕は、志をともにする実務家の方々、研究者の方々と行っている経営学習研究所(Management Learning Laboratory : MALL:モールとよびます)では、この「実験」を行っています。
   
 せんだって、100名弱の方々にご参加いただき、ある「社会実験」を行わせていただきました。  
  
 実は、
  
 モールナイト・ニッポン
  
 というラジオ的講演番組(どこかで聞いた名前!)の配信を、Youtube Liveで試験的に行わせていただきました(リスナーの皆様、関係者の皆様、ありがとうございました)。
 モールナイトニッポンは、人事・人材開発の最新トピックを講演でもなく、ラジオでもなく、お届けする「得たいのしれない番組」です。
    
 次回は、いよいよ本番です。
    
 8月2日(日曜日)のおそらく午後8時からの配信になります。
 ぜひ、わたしどもの試行錯誤をご覧くださいませ。
 詳細は、またご連絡させていただきます。
    
 誰かの名付けた世界に安住するな!
 世界に名前をつけろ!(Name the world!)
    
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
新刊「サーベイフィードバック入門ーデータと対話で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」が好評発売中です。AMAZON人事・マネジメントカテゴリー1位を記録しました。組織調査を用いながら、いかに組織を改善・変革していくのかを論じた本です。従業員調査、HRテック、エンゲージメント調査、教学IRなど、組織調査にかかわる多くの人事担当者、現場の管理職の皆様にお読みいただきたい一冊です!
  

  
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「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
   

  
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