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2019.12.18 10:10/ Jun

卒論とは「自分に向き合うこと」でもある!? : 「学部生の論文指導」と「大学院生の論文指導」

 年末・・・多くの大学では、卒論の提出期限が迫っていると思います。
   
 立教大学経営学部・中原ゼミには、現在、4年生は在籍していないのですが、実は3年生が論文の執筆にチャレンジしています。
 中原ゼミでは、3年生のあいだに、1万字程度の「ミニ卒論」の執筆を課しているからです。
  
 中原ゼミでは、研究の方向性の決定、先行研究のレビュー、研究方法論を決めるところまでを3年生の半期を使ってやっておき、4年生の前半は就活に集中してもらう環境をつくりました(昨今の状況からすると、そうせざるを得ないですよね・・・)。就活が終わったあとの4年生の後半は、残りの1万字を書き切ることで、クオリティの高い論文をかいてもらおうとしています。
  
 というわけで明日木曜日が、論文の〆切日。
 僕は、過去20年近くにわたり大学教員を続ける中で、「1秒でも〆切を過ぎた論文は、絶対に、絶対に、死んでも、泣いても、吠えても、受け取らないこと」を固く誓っており、かつ、「自分の信条」にしております。その真意が彼等にも伝わったのでしょうか(笑)、昨日、彼等の論文タイトルのリストがあがってきました。
  
 下記がそのタイトルです。
  
熊野真子
「集団的ダンスムービー製作過程が集団凝集性と組織コミットメントの向上に与える影響についての考察」
  
久保田陸
「社内通貨のエスノグラフィー」
  
瀧本真優
「飲食業の店長交代が従業員の組織コミットメントに与える影響過程に関する研究」
  
柴井伶太・佐藤聖
「PMIの統合スピードが従業員の心理的プロセスに及ぼす影響」
  
我妻美佳
「大学生の就職活動時における多元的アイデンティティが就職不安に対して与える影響」
  
西岡茉優
「長期インターン直結型新卒採用者の組織社会化プロセスに関する定性研究」
  
鋤野優花
「お笑い芸人のキャリア研究」
  
秋山琳香
「働く女性のストレスコーピングに関する定性研究」
  
丹尾沙也花
「大学生の失敗回避欲求に関する研究:失敗回避欲求が就職活動に及ぼす影響」
  
島田有美
「フィギュアスケート選手のセカンドキャリア」
  
佐藤智文
「大学の部活マネージャーは選手のサポート経験を通じて何を学んでいるのか」
  
山川由斗
「テニスコーチの育成観の形成過程に関する研究」
  
浅野茉耶
「バラエティー番組の容姿いじりが女性の自己肯定感の低下に与える影響に関する研究」
  
佐藤都美
「新入社員のメンタリング経験がメンターに及ぼす影響に関する研究」
  
尾関巧
「ベンチャー企業における経営理念の浸透に関する研究」
  
鴻野加奈
「ミスコンテスト出場が自己肯定感に与える影響」
  
大沼ひかり
「大学におけるリーダーシップ教育の受講経験が、大学生の非認知能力の変化に与える影響に関する考察」
  
  ▼
  
 今回、学部生の論文指導をするにあたって、僕は、「大学院生と異なる指導(レベルを落とした指導)」を「あえて行わないこと」にしました。
 むしろ、彼らを「大人扱い」し、それ相応のクオリティを求める。もちろん、大学院生ではないので、100%それを満たせるわけじゃない。でも、彼等を「学部生扱い」しない。背伸びをした結果は、ともあれ、できるだけ「背伸び」をさせる。僕は、こう考えました。
  
 それが成功するか、どうかはわかりません。
 でも、ざっと見たところ、立教経営の学部生は、僕の予想以上に「文章が書ける」と思いました。
(1万字じゃなくて2万字くらい書いてもらった方がよかったと思っています・・・笑)
  
 もちろん、まだまだこなれていない文章や論理の飛躍はある。でも、それは〆切まで、あと1日ある。十分睡眠をとったうえで、できるところまで推敲して提出してもらえることを願っています。たぶん、ここから素晴らしい「差分」が生まれることでしょう。その「差分」を心より楽しみにしている次第です。
   
  ▼
  
 ただし、今回、学部生の指導をするにあたり、1点だけ、大学院生の指導とは異なったことをやっています。
 それは「研究を通して、自分と向き合わせること」です。
  
 研究のテーマ決めにあたっては・・・
  
 過去の経験で、今の自分をつくってきたもの
 今の自分に影響を与えた様々な出来事
  
 自分がしがみついてきたもの
 自分が囚われてきたもの
  
 今の自分を形作ってくれた、様々な人々との出会い
  
 そうしたものを「探究の課題」にしなさい、とお話をしました。
   
 そして、この研究を通して
  
 自分に、向き合うこと
 自分に、落とし前をつけること
 過去の自分のとらわれを、成仏させること
   
 と僕は伝えました。
 もちろん、これは、研究テーマによりますが・・・。
    
 彼等の多くは、研究者になるわけではありません。
 ならば、卒論の意味づけは、研究者のトレーニングでなくても必ずしもよいのではないか、というのが僕の思いです。
  
「研究方法論の厳密さ」よりも「今の自分に関連があること」
「リゴラス」よりも「あなたにレリバント」であること
  
 学部生の指導にあたっては、こうしたことを重視したつもりです。
 さて、どうなることやら(笑)。
  
  ▼
  
 3年生は、こののち、2月19日の日に、ささやかな「ミニ学会」をひらくようです。
  
 ミニ学会は、3年生ひとりひとりが、自分の探究の成果をポスターにして、皆さんにご発表させていただく場です。どなたでもご参加いただけます。
  
 まだ実際の研究が走り出す前の企画を持ち寄ることになるので、荒削りオブ荒削りだし、結論もオチもないような話になるかもしれませんが、もしご興味がおありの方がいらしたら、ぜひ3年生の「ミニ学会」にご参加くださいませ。これが終われば、3年生は、就活に本格的に取り組むことになるのでしょう。ぜひ、愛あるスパイシーなフィードバックをいただけますと幸いです。
  
 ミニ学会・・・もちろん、僕も参加します。
   
 たぶん、娘や息子をもった父親のように
 ハラハラしてると思うけど(笑)。
      
 ちなみに、最後の最後までくどいけど、再掲載。
   
 〆切間近の中原ゼミ生へ
    
 論文執筆8か条
 これさえ守れば、大丈夫。
   
 1.こまめにセーブ
 2.バックアップは複数で
 3.印刷はお早めに
 4.手洗いうがいでインフル予防
 5.睡眠快眠よい論文
 6.今日も執筆、明日も執筆
 7.終わった論文が、よい論文!
 8.完璧めざすより、終わらせろ!
   
 そして人生はつづく
   
 ーーー
   

  
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
  

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