NAKAHARA-LAB.net

2006.9.23 10:31/ Jun

大のオトナが熱中するワークショップ

 昨夜、東京大学にて開催されたLearning barにて、大のオトナ60名が、「学び」に熱狂しました。会場は六本木のクラブを連想させる興奮に包まれました。こうしたイベントは、東京大学開学130年以来、はじめての試みです。
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 こんなニュースがテレビから聞こえてきそうなほど、昨日のLearning barは、すごい盛り上がりでした。DJ、VJ、フードスタイリストさんなどのプロが入って、空間を演出。バーテンは東大の大学院生がつとめ、カクテルをつくる。
 突如、本郷キャンパスに、六本木にあるような「ノリノリのクラブ」が生まれた瞬間でした。
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 昨日のLearning barは、「オトナの学び」をテーマとしたワークショップでした。ワークショップは、10年以上も前から、国内外で先進的なワークショップを開催してきた上田信行先生、佐藤優香先生らがプロデュース。森玲奈さん@東大が、全般的なディレクションを行いました。
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 まずは、受付です。開場は午後6時。
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 開場にはすでにスタッフがスタンバイしています。DJ、VJがノリのよい映像、音楽をchoiceしてくれています。
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 受付を終えた人たちは、自分の今日の服装をポラロイドカメラで撮影してもらいます。この日は、実はドレスコードがありました。ポラロイドを受け取ったら、「今日、なぜ自分が、その服装を選んだのか」をそえて、壁にポラロイドをはっていきます。
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 「今日の背伸びは、明日の定番になる」・・・オトナの成長は、そういう「ほんの少しの背伸び」を、日々繰り返すことによって、達成されるものなのではないでしょうか。あとから種明かしがなされるのですが、この写真のポスティングには、そういう裏のメッセージがありました。
 参加者たちは、ウェルカムドリンクを手に、中央のテーブルに集まってきます。もう既にネットワーキングも行われているようですね。
 早速、第一のワークショップがはじまります。レゴブロックを使った「Serious playワークショップです。Serious playとは「play with purpose」のこと。ある特定の目的に従って、オトナがレゴブロックを使って共同作業をします。もともとは、レゴ社の企業人材育成プログラムとして開発されたものですね。
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 この日のゲームは、「レゴブロックをどれだけ高く積み上げられるか」という非常にシンプルなゲームでした。4人1組になってゲームははじまります。最初のセッションでは、何の指示もなく、ブロックをつみあげます。
 しかし、なかなかうまくいかないですね。せっかく高くブロックを積み上げても、他の人が「不適当なブロック」をそこにおいたりするので、なかなか高くつみあがりません。
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 2回目のセッションでは、上田先生から、「オトナには、役割、共同作業、プラン」が必要だ、というインストラクションがなされます。今度は高くつみあげることができました。参加者たちは、シンプルなゲームから、オトナにとって重要なストラテジーを体験していきます。
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 お腹がすいたところで、料理です。この日は、森玲奈さんのお知り合いの「フードスタイリスト」の方が、「学ぶ大人=キラキラした大人」をテーマに、料理を創作してくれました。とても手のこった、そしておいしい料理でした。
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 しばらく歓談が続きます。次に登場してくれたのは、プロでパントマイムをなさっているカンジヤママイムさんです。「ロープを登る」パントマイムを参加者全員で行いました。
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 最初はなかなかできません。どうしても、ウソっぽい「ロープ登り」になってしまうのです。それはなぜか?
 私たちの体は、最小の努力と運動量で、モノをなしとげられるよう動くようになっているそうです。つまり、体とは「効率的」なものである。
 しかし、長いあいだ、そのような効率的な運動しか行っていないと、その他の使わない筋肉が硬直してしまう。パントマイムとは、いったん硬直した体を「deconstruct」して行う身体芸術だそうです。
 これは、もしかしたら、筋肉、運動だけの話ではなさそうですね。そう、我々の頭や精神だって、似たようなものなのかもしれません。
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 最後のワークショップは、「こだわりのモノ紹介」です。この日、Learning barの参加者には、「自分が普段使っているこだわりのモノ」を持ってくるよう、お願いをしていました。
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 二人ずつペアになって、こだわりのモノをお互いにインタビューして、そこにまつわるストーリーを聞いていきます。
 うちのカミサンは、「36センチの物差し」をもっていきました。台本作りは通常コンピュータを使って行われますが、最後に「物差し」で「しゃーっ、しゃーっ」と線をひき、カメラ割をするのが快感なのだそうです。
 大人の思考、大人の作業は、常に「Object to think with」です。何かモノを使って達成されるのですね。そして、大人が使うObjectは、ほとんどの場合、Multi purposeです。
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 最後に、ほんの少しだけ、僕もご挨拶がてら話させていただきました。
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 「Learning barの紹介」と「教育研究において、大人の学びがいかに注目されているか」という話です。山内さんの方からは、現在建設中の「FUKUTAKE HALL」の構想についてお話がありました。
 そうして、熱狂冷めぬ中、Learning barはclosingのときを迎えます。
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 それにしても、いやー、ホントウに面白かった。「ワークショップ中毒=ワー中」になってしまいそうです。そのくらい、久しぶりに知的興奮を覚えました。
 大学は最先端のリゴラスな研究を生み出す場であると同時に、人々のネットワーキングを支える場であるべきだと、僕は常日頃から思っています。「教育界の興行師」と言われようとも(笑)、僕は、これをやめたくない。
 最後になりますが、このワークショップを支えてくれたすべてのスタッフの皆さん、ホントウにありがとうございました。また、上田信行先生、佐藤優花さん、森玲奈さん、東大大学院の坂本君、平野くん、脇本君、キラキラ王子には重ねて感謝いたします。また、このような場を東大に創りましょう。
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 Learning barでは、今後もレクチャー、ワークショップを開催していきます。
 次回は12月22日「我がTOEIC人生のすべて」と題して、ライトハウスの坂井さんにレクチャーをいただきます。坂井さんは、TOEICのすべてを知る方です。黎明期から、爆発的普及期まで、その普及の背後にあるストーリーを語っていただく予定です。
※Learning barを含め、東京大学で開催される教育イベント情報は、下記のNAKAHARA-LABメルマガで不定期に流れます。また、Learning barは、NPO法人Educe Technologiesと東京大学の共同事業です。
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