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2006.6.7 01:06/ Jun

日本教育工学会シンポジウム「社会人の学習環境をつくる」

 関西大学で開催される今年の日本教育工学会で、僕は、メディア教育開発センターの堀田先生とともに、シンポジウムのコーディネータを仰せつかりました。
 教育工学会は、11月3日から11月5日まで開催されますが、初日3日の午後1時30分 – 午後3時30分までシンポジウムが開催されます。
 学会ニュースレターなどで、すでにご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、下記のようなシンポジウムを企画致しました。
「社会人の学習環境を創る:
 e-Learning,OJT,知識創造をつなぐ教育工学」
 で、ここ数ヶ月、シンポジウムにご登壇いただける方を、いろいろ打診していたのですね。で、ようやく、先日、すべての方々に了承を得ることができましたので、ご報告致します。シンポジウムにご登壇いただける先生方は、下記の先生方です。
 —
1.eラーニングを通した人材育成
  北村士朗先生(熊本大学)
2.コーポレートユニバーシティによる人材育成
  蒋麗華先生(リクルートマネジメントソリューションズ)
3.ナレッジマネジメントによる人材育成
  妹尾大先生(東京工業大学)
 —
 嗚呼・・・横文字ですね。
「eラーニング」だの、「コーポレートユニバーシティ」だの、「ナレッジマネジメント」だの「横文字」が並んでいます。が、別に、難しい内容を扱うわけではありません。
 このシンポジウムの目的ですが、「社会人の学習環境を構築するために,教育工学研究に何ができるのかをさぐること」にあります。
 周知のとおり、昨今、企業に勤務する成人,いわゆる「社会人」の学習や教育に注目が集まっていますね。「社会人の学習や教育」については,これまで経営学,認知科学等の関連領域において、部分的に研究がなされてきました。が、「どのように彼らの学びの場を再編成するのか」という視点からは、あまり多くの研究が存在したわけではありません。
 一方、これまで教育工学研究は,これまで初等教育から高等教育の教育現場の改善,学習環境の構築等に注力してきた経緯がありますが、企業や社会人の学習の場を研究の主対象にすることは、必ずしも多かったわけではありません。
 このギャップをうめ、「社会人の教育現場にどのような有益な知見をだすことができるのか」を考えること、そのことの糸口を、具体的な事例からつかむことが、このシンポジウムのめざすところです。
 —
 下記、あくまで現段階における内容です。
 まずトップバッターの北村先生には、僕も、これまで様々な研究プロジェクトでご一緒させていただいたことがあります。
 もともと、北村先生は東京海上の人材育成の現場に従事なさっていた方で、今は、熊本大学の方で「eラーニングをeラーニングで教える大学院」で教鞭をとっていらっしゃいます。
北村先生のWebページ
http://homepage2.nifty.com/KITAMURA/
熊本大学大学院 教授システム学専攻
http://www.gsis.kumamoto-u.ac.jp/
 当日、北村先生には、下記のようなテーマでお話をいただける予定です。
1.企業の人材育成現場で、どのようなeラーニング教材が用いられているのかを具体的にご紹介頂く
2.eラーニングの専門家をどのように大学院で育成するのか?について熊本大学のご経験をお話し頂く。
 おそらく、デモやスクリーンショットなどを用いて、企業で実施されているeラーニングの実態について、具体的にご紹介頂けるものと思われます。
 —
 次に、蒋麗華先生です。
 蒋先生は、リクルート社のHRM系研究所「ワークス研究所」で、長いあいだ、OJT、コーポレートユニバーシティ等の研究をなさってきた方です。
ワークス研究所
http://www.works-i.com/index.html
OJTの再創造
http://www.works-i.com/flow/works/contents71.html
ワークプレイス・ラーニング 創造的OJT
http://www.works-i.com/flow/works/contents56.html
グローバルCU現象――学習と経営の融合
http://www.works-i.com/flow/works/contents53.html
 当日は、コーポレートユニバーシティに焦点をしぼり、企業が人材育成を行うためのプラットフォームとして、どのような組織体制を整備する必要があるかについて、海外の動向をふまえながら、お話し頂けるものと思われます。
 海外では、企業が大学院と連携して、自分の会社の「コーポレートユニバーシティ」を設立する事例などがあるのですね。
 それらの「コーポレートユニバーシティ」では、実際に学位も発行されます。将来の日本の大学と企業の関係を考える上で、非常に刺激的なお話になることと思います。
 —
 最後に、妹尾大先生です。
 妹尾先生は、ナレッジマネジメント、知識創造理論の研究を長年にわたってなさってきた方です。日本企業の知識創造経営の事例をまとめた本、知識創造実践論を上梓なさっています(とても分厚い本です)。
妹尾大先生
http://www.is.me.titech.ac.jp/senoo/index.html

 当日は、ナレッジマネジメント等の具体的な事例について、先生のご経験等をふまえて、お話頂けるそうです。
 知識を生み出す場をつくりだすのは、かんたんなことではないのですね。そこには、「空間」や「ネットワーク」の一貫したデザインが必要なのですね。そのあたりのサプライサイドの行うデザインの諸相について、お話し頂けるものと思われます。
 —
 このように今回のシンポジウムでは、これまであまり取り上げられられなかった角度から「社会人の学習の場」について迫っていきたいと思います。
 思うに、本来、この3つの視点は、いずれも「人間の学習」に関係しているものですよね。ところが、学問の枠というものに阻まれ、これまで、あまり同じ土俵で語られることはなかったと思います。ここに「学習」という1本の糸をもちこみ、これまで別々に語られていたものを、幅広く取り扱ってみたい、と思っています。
 まだ検討中ですが、できれば一方向的な講演にならぬよう、運営も工夫をしようと思っています。会場とのインタラクションをなるべく多く設けられるよう、現在、検討しておりますが・・・どうなりますことやら。
 
 もしよろしければ是非、おこしいただければ幸いです。
 新しい研究のアイデアが、浮かぶかも知れませんよ!?

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