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2021.7.19 08:35/ Jun

あなたの会社の階層別研修は「通過儀礼」になっていませんか?:もし今、仮に「階層別研修」がなくなったとしたら、現場にどんな悪影響が起こりますか?

 あなたの会社の階層別研修は「通過儀礼」になっていませんか?
  
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 最近、気になっていることのひとつに「階層別研修って、なぜ、存在するのか? その果たしている効果は何か?」ということについてです。
  
 一般に、階層別研修とは「年次・職位などの基準により同階層の社員を集めて行われる教育」のことをさします。
  
 イメージとしてわかりやすいものをあえて取り上げますが、民間企業でいえば、3年次研修といった年次をきった研修や、主任(リーダー)・課長・部長昇進時研修といった職位ごとの研修がそれに当たります。教員の世界でいえば10年次研修などが、それにあてられます。
   
 そもそも、研修とは「研修で学ばれたことが、現場で実践され、インパクトをもたらすこと」を目的に実施されるのですが(研修転移が達成されること)、階層別研修には、どのような目的と効果性が認められるのかが、わたしの気になっていることです。
  
 もちろん、多種多様な階層別研修を、十把一絡げにして、その効果を論じるのも、そもそも無理があります。
 しかし、こうした研修のなかには、「研修で学ばれることが、現場で実践されること」を期待する(専門用語でいえば、研修転移が達成される)というよりは、
  
・同じ村にいる、同じ年代のひとを集めて、再会を楽しむこと(同期の絆を深めること)
  
・会社が言わなければならないことを「あのとき、ちゃんと、言ったよね」とすること
  
 などを目的としているものが、少なくないな、と思ってしまったりします。
    
 つまり、階層別研修が「儀礼化」している、ということです。
 ここで「儀礼」とは、「あっても、なくても、さして実社会にインパクトをもたらさない習慣であり、さして意味の無い物事の連続性のなかに、区切りをつけるために存在するもの」と定義します。もちろん、それが、いいとか、悪いとか言っているわけではありません(世の中には、儀礼も必要な局面は多々存在します)。しかし、もし今、仮に「階層別研修」がなくなったとしたら、現場にどんな悪影響が起こりますか?
      
 あなたの会社の階層別研修は「通過儀礼」になっていませんか?
    
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 ここで、わたしが、考えてしまうのは、
  
 そもそも階層別研修の目的とは何で、そのために、適切な時間が確保されているのだろうか?
     
 ということであり、
   
 中途採用が増え、新卒も多様化し、出入りが激しくなっていくなかで、年次研修というものが本当に機能するのか?
  
 ということであり、また
  
 階層別研修では、何が学ばれ、それがどのように研修転移されるようにデザインされているのか?
  
 ということです。
  
 みなさんは、どう思われますでしょうか?
  
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 たとえば、階層別研修のうち、とりわけ、部課長の研修の内容も気になります。
 たいてい、昇進時に行われる部課長対象の階層研修は、2日ー3日。
    
 1.社長の訓話
 2.全社の方針
 3.コンプライアンス・ハラスメントの予防
 4.評価の付け方(目標管理制度の理解)
  
 などがメインコンテンツで、いわば「刺身のつま」ほどに、
  
 1.コーチング
 2.人材育成
  
 などの演習が、数時間入っていることが多いものです。前者が必要なのもわかるのですが、それは本当にひとびとを集めて伝える必要があることなのだろうか。一方向的にコンテンツを伝えるだけならば、オンデマンドやオンラインでも十分可能なようにも感じます。
  
 一方、後者のコーチングや人材育成も疑問です。
 ないよりあるにこしたことはないのですが、数時間の研修で、コーチングや人材育成が「職場で実践できるようになるか」というと、それは難しいのではないでしょうか?
  
 一般に、これまでリーダーをつとめてきたひとが、これまでのマネジメントスタイルを転換するとは、大変な労力(学習負荷)がかかることです。
 研修で学ばれることが実践されるようになるためには、一日こっきり・イベント型の研修では「不可能」だと言われています。
 
 複数の研修機会をつくり、何度かのインターバル(実践のための間隔)をつくりながら、受講生の変化に伴走していかなければ、おそらく、それは完遂しません。
  
 さすれば、いったい階層別の部課長研修とは何のために存在するのでしょうか。
  
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 今日は階層別研修のお話をしました。
  
 詳細は、図書館で歴史にあたれるわけではないので把握しかねていますが、おそらくは、階層別研修は、長期雇用・年功序列・新卒一括採用といった、いわゆる日本型雇用とともに発展してきたもののように思います。
   
 しかし、私たちの雇用システムは、今、少しずつ、そのあり方に反省を求めています。
   
 様々な採用が常態化しつつあり、年次といった概念で、ひとを束ねることが無理になってきている。
 同期という「器」で入社から退社までをくくることは難しくなってきている。 
 また社会の変化が激しく、10年に一度くらいの研修機会では、世の中で必要になる知識・スキルの獲得においつけない。
   
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 いずれにしても、階層別研修のあり方が、そろそろ「岐路」を迎えようとしているように感じているのは、わたしだけでしょうか。
     
 今日は、問題提起をふくむ、ゆるい話題でした。まぁ、引き続き考えていきたいと思います。
   
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 月曜日、一週間のはじまりですね。
 今週も頑張りましょう!
    
 そして人生はつづく
   
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追伸.
 ちなみに、教員免許更新制度に付随する講習も「階層別研修」のひとつに考えられるものかもしれません。教員免許更新制度に関しては、わたしは廃止を主張します。
  
 まず、人的資源管理の観点からは、この制度そのものが、人的資源の確保に悪影響を与えられています。歴史的には、「不適格教員の排除」を意図して仕掛けられた仕組みが、不用意に、意図せず「働ける可能性のあるひと」を少なくしてしまっている(免許を持っているけれど、教職についていないひとが失効してしまうなど)ということも問題です。

 しかし、それ以上に、学習の観点からは、10年に1度の研修という研修頻度が、時代の変化にあっていません。最新の知識技能を身に付けるのが10年に1度ですむわけがありません。
  
 基本的に、日々の業務能力の向上は、現場を離れた教室で行われるのではなく、仕事のなかで行われるべきだと思います。そのために管理職、リーダーなどによるマネジメントを機能させることが必要です。研修に可能なのは、そうした「現場の学び」を最大化する仕組み(たとえば、中間管理職対象、リーダー対象にして、現場の学びを最大化するための武器を渡す)をまわすことです。
  
 詳細は、町支先生・中原の連名で、文部科学省・中央教育審議会の特別部会で発表した問題定期的な資料をご覧ください
   
変化を生み出す教員集団
https://www.mext.go.jp/content/20210630-mxt_kyoikujinzai01-000016501-6.pdf
  
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http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
   
ピアトラストお問い合わせ
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ピアトラストの効果まとめページ
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