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2021.3.8 07:57/ Jun

文章は「目で見て、耳で聴いて」校正する!?:誰ひとりとして「置き去り」にしない文章入門!?


    
 最近、いくつかの新刊の原稿が、僕の手を離れ(著者校正を終え)、旅立っていきました。原則として、著者は校正を終えてしまうと、もう原稿には触ることはできません。あとは、編集者の目をへて、印刷所に入り、製本されてくるのを待つだけになります。
  
 校正を行うとき、僕には、ひとつ心がけていることがあります。
  
 それは「黙読」に加え「音読」をすることです。僕は、校正を「目」だけで行いません。
  
 校正は「目」と「耳」で行う
  
 のが、僕の流儀です。
  
 一番大切にしていることは
  
 読者の誰ひとり人として「置き去り」にしない
 
 という思いです。
  
 今日は、そのことを書いてみましょう。
  
   ▼
    
 校正でまず用いられるのは「目」です。
  
 しっかりと黙読して、どんなひとでも、読んでくれたひとならば、一意に意味がとれるように、しっかりと、用いられている概念ごとに「定義」を行っているかをチェックします。これは「目」の役割です。
  
 よく人文社会科学の書籍では、
  
 それはフーコーが示したパノプティコンに見るように・・・
  
 とか
  
 それは言うまでもなく、ロラン・バルトのエクリチュールに相似する・・・
    
 とかいう風に、「読者がわかっていること」「読者が踏まえていること」を前提にして「高尚な文章」が綴られることがあります。
      
 よほどの専門書であるならばそれでもいいかもしれませんが、僕個人は、専門書であろうと、一般書であろうと、こういう表現を極力「ゼロ」にする、と心に決めています。
   
 なぜなら、僕自身が学生だったとき、こういう表現が「嫌だったから」です。そういう表現を目にするたびに僕は「ドン引き」していました。突然、「それは言うまでもなく・・・」って言われても「コチトラ、知らねーよ」と思っていました。「言うまでもなくじゃないんです、ふつーの読者は」(笑)。
     
 「誰もが知っていること」を前提にしてつづられる文章の奥底に、「研究者」と「一般人」を「線引き」して、上からマウンティングするような「スノッブ・フレーバー」を感じていました。自分が嫌だったことは、したくありません。だから、僕はやりません。
    
  ▼
  
 次に重要なのは「耳の役割」です。
    
 今度は、文章を静かに音読します。
 目を使わず、音読したとして、すっと耳に入ってくるような流れで、文章を組み替えます。
   
 気持ちよく音読できる文章は、読みやすいのだと思います。たとえ論理的には正しくても、音読してすっと入ってこない文章の流れは、気持ちよくありません。
   
 リズムや韻も、めちゃくちゃ大事です。
 言語化するのは難しいのですが、「すとん」と気持ちよく腹に落ちる、言葉の配列、というものがあります。キーフレーズは、なんどか口ずさんでみて、気持ちよいものをさぐります。 
        
  ▼
      
 近日発売になる書籍は、田中聡さんとの共著「チームワーキング」と、小林祐司さん・パーソル総合研究所との共著「転職学」です。
   
 
   
 それぞれの書籍の詳細については、また別の機会でご紹介したいと思います。
 これらの書籍、十分、校正をしたつもりですが、どうなっていることやら。評価は、読者の方々に委ねたいと思います。
  
 いずれにしても、これらの書籍をとおして、人と組織の面白い知見を、多くの方々に「お届けできること」を願っています。
  
 そして人生はつづく
  

  
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拙著「経営学習論」の増補改訂版が、東京大学出版会より刊行されました。新たに「リーダーシップ開発」の章を追加し、カバーの装いも変わっています。人材開発の基礎的な理論を体系的に学べる一冊です。どうぞご高覧くださいませ!
      

    

      
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【新刊予約発売中】
新刊「学校がとまった日」の特設サイト完成!&予約販売開始中! 緊急事態宣言・全国一斉休校で「学びを継続できた子どもの特徴」は?学びをとめないために学校にできることは?:書籍の内容が概観できます!どうぞご覧くださいませ!
  

新刊「学校がとまった日」の特設サイト
http://toyokan-publishing.jp/stop/index.html
  
新刊「学校がとまった日」予約販売開始中(AMAZON)

   
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上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
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ラーニングエージェンシーさんと中原研究室の共同研究により開発した「女性の視点で見直す人材育成:トランジションサポートプログラム」のご提供がはじまっています。ライフステージに応じて、役割移行を支援する、きめ細かい研修となっています。共同研究の成果は書籍「女性の視点で見直す人材育成」としても刊行されています。
  
女性の視点で見直す研修 トランジション サポート プログラム
https://www.learningagency.co.jp/service/transition/
 

 
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。AMAZONの各カテゴリーで1位記録!(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。
長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
    

対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
   
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「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
    
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://jinzai.diamond.ne.jp/seminar/SEMINAR0495/
  
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「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

    
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中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
      
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。利用人数20名までは「無料」だそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
    
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
   
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