NAKAHARA-LAB.net

2020.10.15 08:26/ Jun

人事施策をつくるとは「制度」をつくることでも「ルール」を徹底することでもない!

 人事施策とは、
   
1. ひとと組織の観点から、
  
2. 経営・現場に「よきインパクト」を与えるために
  
3. 課題解決を行うこと
  
 です。
  
 人事施策をつくるとは「制度を書面におこすこと」でもなければ、「ルールを徹底すること」でもありません。
  
 人事施策は、究極、経営・現場によきインパクトを与えるべく、今の組織が抱える課題を解決しなければなりません。制度とか、ルールは、そのための手段です。畢竟、人事施策とは「課題解決」なのです。
  
  ▼
  
 ここ最近、立教大学大学院新コース・慶応MCCの社会人コース・次世代リーダー塾の「HRリーダーズフォーラム」をはじめとして、これを教える機会が増えています。
  
 具体的には、次世代の人事リーダーの方々に「人事施策をたてること=ひとと組織の観点から、課題解決を行うこと」を「教える」のですが、「課題解決を教えること」の難しさに、教師として、直面しています。
  
  ▼
  
 よく言われるように、課題解決とは、
  
1. 解くべき課題が何かを自ら「決めること」
  
2. 解決策を考えること
  
 の2つのプロセスから成立しています。
  
 これもよく言われることですが、この2つのうち、もっとも難しいことは、1.「解くべき課題が何かを自ら決めること」です。
  
 解くべき課題が何かを決めることが難しい理由は、それを決めるためには、
  
1.現場のひとに聞き取りを行うなどして、情報収集をおこなうこと
  
2.集めた情報をいったん並べ、比較し、分析すること
  
3.自ら仮説を決めて、解くべき課題を決めること
  
 という、極めて高度な3つの思考プロセスを追う必要があります。
 しかし、これが言うのは簡単だけど、実に難しい。
   
 その難しさの根源は、実は、圧倒的に1にあります。
  
 それは「聞き取りを行うこと=聞くこと」を教えることの難しさです。
  
 一般に・・・
  
 ひとは、聴力さえあれば「聴けている」と感じやすいものです。
  
 しかし、実際は、
  
「聞くこと」とは、明確な意図をもって、対象に働きかける積極的行為であり、思考をともなう高度な知的技術
  
 です。
  
 聞くとは、耳をそばだてることではありません
   
 考えながら、聞き
 聞きながら、考える
  
 のです。
  
  ▼
  
 こうした「聞く」に関して、本来ならば、じっくり時間をかけて教えたい。今は、概念的知識としては、一部扱っていますが、それだけで十分であるとは思えません。
  
 僕個人としては、「聞く」を学んだのは、「見よう見まねで行っていたフィールドワーク」や「質的研究法の授業」の中です。そのなかで、対象に働きかけることをとおして、聞くことの要諦を学びました。
 できれば、こうした人文社会科学の知恵を、しっかりと授業にも導入していくべきだと考えていますが、時間的都合から、いまだ道半ば。
  
 さて、どうしたものか、と考えあぐねています。
  
 いっそ・・・
  
「課題解決人事の思考法」
  
 とか
  
「ひとと組織の課題解決」
  
 とか
  
「人事コンサルティング入門」
  
 とかいう本を書こうかな、とも一瞬思いましたが、今5冊も書籍を抱えている僕が、そんな大それたことを口にできるわけがございません。
   
 今は、すこし貯金をしておきながら、何らかのコンテンツを出していければと思っています。
  
 たかが課題解決、されど課題解決
 ああ、教えることが難しい!
 
 そして人生はつづく
  
  ーーー
        
新刊「サーベイフィードバック入門ーデータと対話で職場を変える技術 【これからの組織開発の教科書】」がこのたび、HRアワード2020書籍部門のリストに入賞したそうです。
   
ここから、みなさまによる投票で、最優秀賞、優秀賞が決まるとのご連絡を得ました。本書は、従業員調査、エンゲージメント調査などをもちいて、組織開発を行うときに、マネジャーの方々に留意いただきたいポイントをまとめたものです。どうぞ応援のほど、よろしくお願いいたします!
  
HRアワード2020(投票)
https://jinjibu.jp/gfrm/eventEnquete/award-20-0001/form/
    

   
  ーーー
   
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  ーーー
   
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