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2007.6.3 17:49/ Jun

ASTD2007 1日目:ワークプレイスラーニングが増えた?

 ワシントンまで13時間、さらにアトランタまで3時間かけて、ようやく先ほどホテルに着きました。疲れ果てたぞ、オレは。
 純粋なフライト時間は16時間程度ですが、成田エキスプレスにのっている時間、乗換の時間もありますよね。家を出たのが、一日前の朝6時半だったので、ちょうど一日弱かかったことになりますね。
 思えば遠くに来たもんだ
 はぁ・・・マジで、ほんと遠かったなぁ、、、また帰りに、同じ時間かかんのかよ(泣)。
 —
 ホテルについてシャワーをあび、ジムで運動してきました。うーん、時差ぼけ解消には、やはり「適度な運動」です。運動したらコバラが透きますね。その後、近くにあるハードロックカフェで、簡単なディナーを・・・。
 と思ったら、ここからが大変でした
 ハードロックカフェって、こんなに激しかったですか?
 運が悪かったのか、僕の座ったバーカウンターは、両隣の客、さらにはバーのおにいちゃん、みんながハードロッカーでした。座った途端、「あっ、ヤベ、ここに座って大丈夫かな」と思ったのですが、もう後の祭り。
「はい、のってるかい、元気? 今日は、なに飲む、なんでもあるぜ、ヒャッホー」
 とか言っています。いきなり「ヒャッホー」かよ。
 隣の一見大人しそうに見えるオヤジは、酒がはいった途端に、エレキギターをかきならすパフォーマンスをやらかすし、隣のにいちゃんはドラマー気分です。二人とも新しい曲がかかるたび、「この曲、知ってるか、この曲はなぁ・・・」と僕に話しかけてくる。
「いや、わかんないんですけど」と何回か答えていたら、「日本にはロックがあんのか?」と聞かれる始末・・・。ごめんね、演歌好きで。サブロー・キタジマとか、ジョージ・ヤマモトなら、あなたたちと同じくらいにノリノリになれるんだけどね。
 店内は非常に騒然としており、そんな中、バーのおにいちゃんは、スラングだらけで、何を言っているのか、全くわかりません。
 サラダを注文したら、
 「●×○△■X▽・・・・サリッド?」
 って聞かれる。いやー、「英語できない子ちゃん」になってしまいました・・・トホホ。コバラがすいたので、単にサラダが食べたかっただけなのに・・・。なんか、サラダ食うだけで疲れたよ、オレは。
 —
 カンファレンスは明日からはじまります。
 トホホなハードロックディナーから帰ってきて、気を取り直して明日の予習をはじめました。
 「さて、どのセッションに参加しようか」
 赤ペンをにぎって、ASTDのプログラムをパラパラとやっている様子は、府中の競馬場付近で「赤ペンを握って、競馬新聞とにらめっこしているオッサン」とあまり変わらないノリかもしれません(僕もオッサン?)。
 それにしても、改めてプログラムを見て、発表には、前回来たときとは違った傾向が見受けられるな、と思いました。
 最大の違いは、「職場での経験学習」「インフォーマルラーニング」のセッションが前よりもずいぶん増えているな、ということです。
 ASTDでは、研修やeラーニングなどの「フォーマルラーニング」のセッションが多いのは例年通りなのです。が、それらに加えて、いわゆる「インフォーマルラーニング」や「職場での経験学習」「コミュニティオブプラクティス」といったようなセッションが非常に増えていることに気づきました。おそらく、「仕事を通じていかに人を育てるか」といったことが中心的な課題になっているのでしょうか。
 拙著で紹介している「ワークプレイスラーニング:Workplace Learning」の考え方が、少しずつ広まっているのかな、と邪推してしまいます。
 —
 ワークプレイスラーニングとは、一言でいってしまえば、
 「職場での学び」と「研修」の融合
 です。
 ワークプレイスラーニングは、もともと緩いコンセプトなので、いろいろな定義がありますが、僕自身はこれが自分的には一番しっくりくるのですよね。
「実際の仕事場でなされる業務を通じたインフォーマルな学び」と「仕事場を離れてなされるフォーマルな学び」をいかに融合させ、シナジーを生み出すか、という視点が、ユニークなところだと思います。
「ハイフライヤー」「The lesson of experience」で著名なマッコールなどのセオリーでは、「人間の能力開発は、その70%が職場での学びによって説明がつく」そうです。「研修」などのフォーマルラーニングは、人間の能力開発の残りの30%を支えるということになりますね。
 こう聞くと人によっては、「能力開発の3割」しか機能しないのだったら、研修なんてやめちゃえ、という人もいるかもしれません。でも、僕を含めて「教育畑」の人だったら、絶対にこう思うと思うんですよ。
 うひょー、教育にできることが3割もあるんですか。それは「丸儲け」ですね。じゃあ、その部分で何をしましょうか?
 あなたならどう思いますか?
 3割ならやめちゃえ、と思いますか?
 それとも3割をいかそうと思いますか?
 —
 まぁ、上記の問いは皆さんのご意見を気長に待つとして、もし7割、3割ということを認めるとすると、次に問題になるのは、下記の3つですね
1.「職場での経験学習=7割」にいかに介入するべきか?
2.「研修=3割」の効果をいかに最大化するか?
3.それら2つをいかにシナジーさせるか?
 1は、従来、事業部におまかせの部分になっていて、人材育成担当者がなかなか関与できない部分でした。実際は「OJT」という名の「おまかせジョブトレーニング」が横行していたり、近年は機能不全になっていたりする部分が多かったのではないか、と思います。ここをどうするか、何とか7割の効果に近づけられないか、というのが最大の課題でしょう。
 2は従来からインストラクショナルデザインで取り組まれていることですね。3は1と2の上にでてくる、さらにメタな課題、ということになりますね。
 もし今回の一連の発表で、上記の3つの課題をすべて含むものがあるとオモシロイんですけどね、どうでしょうかね。
 —
 さて、話が長くなりました。
 ワークプレイスラーニングについては、実は、この特徴だけでなく、様々な特徴があります。が、ここではそれはまたの機会にしましょう。
 このあいだ、産業能率大学の長岡先生と話していたときには、「ワークプレイスラーニングはハイブリットなコンセプトですよね」という話になりました。「実務 vs 研究」「経営 vs 教育」など、人材育成に付随するいくつかのダイコトミーを超えようとする概念なのですが、これはちょっと複雑なのでまたお時間があるときにでも。
 いよいよ明日からです。
 どうか、今夜、時差ぼけに苦しみませんように。
 —
追伸.
 タクがベビースイミングに行き始めるようです。カミサンが水着を買ってきたのですが・・・。つーか、派手すぎないか(笑)? マリンといって流行らしい。みんな狙ってて、最後の一枚だった、と言っていました・・・ホンマかいな。みんなって誰よ? 
 プールサイドでひときわ目立て、0歳児。
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