NAKAHARA-LAB.net

2019.11.29 07:23/ Jun

「むごい1on1」は「うんうんうんと相手の話を聞く会議」と「何を話していいかわからないので適当に雑談する時間」のあいだに生まれる!?

「ヒアリングの結果、1on1は、ひとによって、全く異なるものをイメージされていることがわかりました。とりわけ、部下側がそこで何を目指すかが、見えません。現在の1on1は、同じイメージを共有されていないままに、実施されているかもしれません」

   
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 せんだって、中原ゼミの学生(2期生)が、こんなことをいっていました。
  
 今年の中原ゼミ2年生は、
  
金融庁様・きらぼし銀行様(民間企業)2つの組織をフィールドとさせていただき、4つのテーマに関する「若手の人事課題、人材マネジメントの課題」を調べ、その課題解決のあり方を両社に・社会にも提案・共有する
  
 という産官学のプロジェクトにチャレンジしています。
  
金融庁 × きらぼし銀行 × 立教経営中原ゼミ2年生の「産官学共同研究プロジェクト」がはじまりました!:心ゆくまで知的に暴れろ!
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/10662
  
 このプロジェクトのうち、1つのチームが、1on1について研究を行っています。冒頭の発言は、そのチームが行ったヒアリング結果の内容です。
  
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「1on1とは何か?」ということに関する理解とイメージが、ひとによって大幅にズレている。このズレは上司にも、部下にも起こっている。こうした話は、ここ数年、よく聞くようになりました。
  
 あるメーカーの管理職は、1on1をこんな風に語っていました。
  
「うちは、1on1というものをやっているんですけどね。1on1っていうのは、上司が、部下の話を、目をつぶって、うんうんうんと聞けばいいそうです。15分たったら、終わりで、交代ですね。」
  
 ある会社におつとめのメンバークラスの方は、1on1をこんな風に語っていました。
  
「1on1とは、隔週一回、上司に呼ばれることですよね。でも、1on1って言われてもね、何をしていいか、わかんないんですよね。会議室のドアを開けるときに、今日は、何話そうかな、って考えて、適当に15分雑談してますね」
  
 おそらく、彼らの会社の人事・経営企画など、1on1を実施・促進する部局の担当者の方は、その意義や目的を、説明していると思うのです。しかし、その説明が、場合によっては「相手に届いていない」
  
 上司は1on1を「うんうんうんと聞けばいい会議」だと思い、部下の方は1on1を「何を話していいかわからないので、適当に雑談する会議」だと思っている。1on1に関するイメージは、かくのごとくズレている。
  
 そして、最も問題だと思われるのは、「うんうんうんと聞けばいい会議」と「何を話していいかわからないので、適当に雑談する会議」には
  
 1on1とは、上司が「部下の成長支援」を行う
  
 という「目的」が見えません。
  
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 今日は1on1に関して書きました。多くの職場では、おそらく、成果があがっているのだと思いますが、場合によっては、「むごい1on1」も生まれているようです。
  
 1on1について、もし「やりきるならば」、徹底的に「運用」にこだわる必要があるな、と思います。1on1を行う「目的」、その「イメージ」などを、しつこいくらいに伝えてこそ、ようやく、相手には「届くのかもしれない」と思いました。
  
 中原ゼミ2期生は、このほかにも
  
 ・見える育児・家事と、見えない育児・家事の研究(仮題)
 ・ワークライフバランスを徹底するハピボスの研究(仮題)
 ・ハラスメントになりかねない上司の部下指導に関する研究(仮題)
  
 などに取り組んでいます。こちらの方も、楽しみです。12月初旬に予定されているフィードバック会に向けて、全力で取り組んで欲しいと思っています。
  
 そして人生はつづく
  
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