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2020.1.16 07:09/ Jun

「よいアイデア」は「背中に包丁を突きつけ」ても浮かばない!?

「面白いこと見つけなかったら、怒るからな」
   
  ・
  ・
  ・
  
 このワンセンテンスだけを聞いてしまうと、「そんな組織なんてあるかいな」と思ってしまいがちです。
  
「背中に包丁つきつけられて、面白いこと、思いつくわけないじゃん」
  
 と誰もが思うはずです。
  
 しかしながら、もし、こういうセンテンスを目にしたらどうでしょう。
  
「我が社にとって、イノベーションは急務である!!イノベーションが生み出さなければ、明日はない!!粉骨砕身、ひとりひとりが、イノベーションを生み出すべく努力しなければ、明日は生き残れない!!」
  
 まぁ、こんなに切羽詰まった会社で、イノベーションを連呼するは、実際にはないのかもしれませんが、これに似た事例は少なからずあります。
 
 こうした経営者の頭のなかには、どこかで
  
「背中に包丁つきつければ、いいアイデアが、生み出せるはずだ」
  
 と思っている節がある。
  
 リアル社会は、ほんとうは、
  
「背中に包丁つきつけられて、面白いこと、思いつくわけないじゃん」
  
 なんですけれども。脅せば、何かが生まれると思っている。
  
  ▼
  
 じゃあ、どうすればいいのか。
  
 かつて、ライフネット生命を経営なさり、現在は立命館APUの学長をなさっている出口治明さんと、かつて、中原・浜屋裕子さん(育児は仕事の役に立つの共著者:中原研OG)で対談をさせていただいたとき、出口さんが、こんなヒントをくださいました(光文社の樋口さん、高橋さん、ライター井上さん、とのお仕事です)。
  
 
  
会社に閉じこもる大人は1ミリも成長しない:長時間労働の是正が育児との両立につながる
https://toyokeizai.net/articles/-/197023
   
 出口さん曰く、
  
新しいアイデアは人に会ったり、本を読んだり、現場へ行って脳に刺激を受けなければ出てこない。だから僕は、生産性を上げるためには「飯、風呂、寝る」の生活ではなく、早く帰って「人、本、旅」の生活をするべきだと思っています。
  
 すなわち、
 
 今日も残業疲れたー、「飯、風呂、寝るの生活」ではなく「人、本、旅」
  
 つまり、
  
 たくさんの「人」に会い
 たくさんの「本」を読み
 たくさんの「旅」をする
  
 ということになりますね。
  
 出口さんは、イノベーションが求められる現代というのは、長時間労働を是正して、「人、本、旅」の生活をすることが求められる、としています。
  
 それもひとつだよな、と僕はいたく感じ入ってしまいましたが、いかがでしょうか。
  
  ▼
  
 今日は「面白いこと」や「いいアイデア」をいかに思いつくか、というお話をさせていただきました。
  
 結局、
  
 よきアイデアや発想というのは、「よき人生」のなかにあるのではないか
   
 というのが僕の結論です。
  
 たくさんの「人」に会い
 たくさんの「本」を読み
 たくさんの「旅」をする
  
 基本的なことですが、大切にしていきたいものです。
  
 そして人生はつづく
  
 ーーー
 
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 ーーー
  
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