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2006.9.24 09:47/ Jun

マドンナ(Madonna) : 僕のゲレンデBGM

 先日、某所でマドンナのミュージックビデオを久しぶりに見た。鍛えられた肉体による激しいダンス。めまぐるしくダンサーが入れ替わるステージ。中央で踊る女性は、今年で48歳になるとは、とても思えなかった。
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 僕にとってのマドンナの思い出は、僕が、毎日のようにスキー場に通っていた頃にさかのぼる。僕は数ある滑降の中でも「回転」系の滑降 – ウェーデルン – が好きだった。
 ウェーデルンは、リズムが命である。リズムが狂えば、これ以上に醜い滑降はない。あたかもゲレンデをダンスするような感じで、小刻みに、軽快にストックワークと足の動きを連動させる必要がある。その際、決して、頭、上半身は動いてはならない。背中をピンと伸ばす。ソシアルダンスとあまり変わらない。
 ウェーデルンを練習する際に、インストラクターなどから、必ず言われることのひとつに、「頭の中で歌を歌え」というのがある。リズムを正しくとるためだ。
 そして、僕が好んで、自分の頭の中で歌っていたのが、マドンナの「ライク・ア・プレーヤー」「ヴォーグ」だった。その歌詞は、今も諳んじることができる。
 マドンナは、僕にしか聞こえない「ゲレンデのBGM」だった。
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 僕がマドンナをよく聞いていた頃は、ちょうどマドンナが「セックスシンボル」と言われていた頃だった。
「マテリアルガール」「ライク・ア・ヴァージン」「ラ・イスラ・ボニータ」・・・誰もが一度は聞いたことのある曲が、この時代に生まれた。
 プロモーションビデオは、過激で、挑発的で、かつ官能的であり、こちらも人々の話題をさらった。このあたりは、ミリオンセラーになった下記のベストアルバムに詳しい。
  
 しかし、「ヴォーグ」を出したあと、マドンナは受難のときを迎える。セックスシンボルとして売り出すには年齢の問題もあった。また米国の音楽が、R&BやRapに急速に変貌をとげる時期だったようにも思う。売り上げが急速に落ちた。
 そして10年・・・マドンナは復活する。僕がそれを知ったのは、米国出張中のMTVだった。「コンフェッションズ・オン・ア・ダンスフロア」という全曲ダンスチューンのアルバムをひっさげ、今度は「ダンスクィーン」としての存在を確立しようとしている。

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 数年ぶりに見たミュージックビデオで、彼女は「ヴォーグ」を踊っていた。
 かつての「ヴォーグ」は、貴族風の衣装に見にまとい、腕を頭に巻き付けるような、独特の、優雅な振り付けが印象的だった。
 が、今のヴォーグには、もうそのイメージはない。徹底的に鍛え上げられた肉体が衣装である。衣装は、もう、ない。
 マドンナは「変革」を遂げた。否、正しくいうと、今も「変革」の渦中にある、といえるのかもしれない。マドンナの身体は、今日も、人工的に構築されている。
 彼女のステージを見ていると、何だか、勇気づけられる。同時に、目に熱いものがこみあげる。人が「変わる」のは難しい。そして変革を維持することも、また難しい。成功体験がある人ほど、それは困難だ。つい、変革の背後にある苦労を想像してしまう。

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